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LIVE REPORT

Japanese

SPARK!!SOUND!!SHOW!!

Skream! マガジン 2022年05月号掲載

2022.04.01 @渋谷Spotify O-EAST

Writer 秦 理絵 Photo by Keiju Kawase

メンバーいわく、去年のツアー(ROTTENGRAFFTY、Age Factory、The BONEZ、FOMAREを迎えた[SPARK!!SOUND!!SHOW!! 2021 TOUR "HAPPY BIRTH DIE" EXTRA -あくまこうりんのぎしき-])はわずか4本だったため、"ツアー"にはカウントしないらしい。そういう意味で、コロナ禍に思うようなライヴ活動ができなかった時期を経て、SPARK!!SOUND!!SHOW!!が2ヶ月にわたり、全国10会場を細かくまわった今回のツーマン・ツアー"akuma tour 2022.02-04"は、バンドにとっては久々に"ツアー"と呼んでも差し支えない本格的なツアーになった。各地にハルカミライ、SHANK、ENTH、Hump Back、Maki、バックドロップシンデレラ、SHADOWSというライヴハウス・シーンの猛者たちを迎えた今回のツアー。そのファイナルは、メンバーが"ラスボス"と呼ぶCrossfaithを迎え、Spotify O-EASTで行われた。かつてタナカユーキ(Vo/Gt)とチヨ(Ba/Cho)は、いちファンとしてCrossfaithのミュージック・ビデオに出演したこともあるという。あこがれの存在から対バン相手へ。立場が変わり、積年の想いを全力でぶつけるスサシ(SPARK!!SOUND!!SHOW!!)に対して、Crossfaithもまたその心意気に応える、そんな熱い一夜になった。

先攻はCrossfaithだった。雷鳴が轟くホラー映画のようなSEが流れるなか、Koie(Vo)、Kazuki(Gt)、Hiro(Ba)、Teru(Prog/Vision)、Tatsuya(Dr)の5人がゆっくりとステージに現れた。登場ではなく、降臨。そう表現したくなる貫禄の佇まいだ。鋭利なエレクトロなサウンドと爆音のメタル・サウンドが暴力的に交錯する「Monolith」を皮切りに、冒頭からビリビリとフロアの空気を震わせる。"スサシしか聴いたことないやつ、今日は脳髄で味わって帰れ!"。Koieが不敵な言葉を言い放った「Jägerbomb」では、フロアのお客さんを一斉にジャンプさせた。2組のファンが混然一体に盛り上げる光景を目の前にして、"スサシのファン、最高やん!"と表情をほころばせたKoie。"いろいろあるけど、このメンバーでステージに立つことが活動の核です"とツアーに呼んでくれたスサシへの感謝を伝えつつ、"それとあいつらをぶっ殺すのは別の話なんで!"と、馴れ合う気などさらさらないという気概も示す。その言葉の通り、壮大なサウンドスケープのバックにKoieが力強く旗を掲げた「Xeno」から、その場を完全に掌握したライヴ・アンセム「Countdown To Hell」まで、全8曲。キャリアの差など関係なく、スサシを対等の対バン相手として本気でぶつかったステージは、それこそがCrossfaithがスサシに寄せるリスペクトの証だった。

おそろいのセットアップの衣装をそれぞれに着崩してステージに現れたスサシは、いきなりユーキが"6月に東名阪ワンマン・ツアーやります"とライヴの告知から始める型破りなスタートだった。このライヴが終わっても、また次がある。それを先に伝えることが、捻くれたユーキの優しさなのだろう。オープニングは2月9日にリリースされた最新曲「akuma」だ。出鱈目なスピードで突き進むハードコア・サウンドに激しくスパークするシンセ。そこにユーキの高速ラップとチヨ&タクマ(Syn/Gt/Cho)の獰猛なシャウトがめまぐるしく交錯した。ラウドロックをはじめ、エレクトロ、ダンス・ミュージック、ヒップホップ、パンクがぐちゃぐちゃに入り乱れたロック・ショーは他にはない圧倒的な中毒性がある。

「ヘビーローテンション」には原曲でもゲストで参加しているPaleduskのKaito(Vo)が乱入した。同時にギターをKaitoに預けたタクマはフロアに靴を投げ入れて遊びだす。"ダサいステップも、エモいステップも、全部革命に変えていきます"。そんなユーキの言葉で突入した「HAPPY BIRTH DIE」は、音源は打ち込みだったが、ライヴではバンド編成になり一気に躍動感が増した。これぞロック・バンド! と膝を打つのも束の間、続く「ドカーン」ではイチロー(Dr/Cho/169)以外は楽器を演奏せず、3MCのスタイルでマイク・パフォーマンスを展開。あまりに自由奔放なステージに、スサシはこのメンバーの誰かひとりでも欠けたら、成立しないバンドだなと強く思う。同じことをやれるプレイヤーは絶対に探せないからだ。

もうひとりのゲストとして、PaleduskのDaisuke(Gt)を迎えた「感電!」のあと、ロマンチックなメロディを紡ぐ「アワーミュージック」からは、歌をじっくり聴かせる楽曲が続いた。"このツアーの正体を暴きます"と届けた「ソウルナンバー」では、両手で強くマイクを握りしめたユーキが、文字通り魂を込めて"俺は俺自身のメロディで生きていたい"とまっすぐに歌い上げた。悪ぶって自分たちはダーク・ヒーローなんだとうそぶくが、SPARK!!SOUND!!SHOW!!は、とてもピュアに音楽の衝動に突き動かされているバンドだと思う。

フリースタイルのラップに、緊迫が続くロシアとウクライナ情勢への辛辣なメッセージを吐露したシーンは、この日のハイライトだった。"怒りを光に変えよう"、"今日、SPARK!!SOUND!!SHOW!!のメッセージはこれしかないです。戦争反対"。そう言って、重厚なバンド・サウンドに飽くなき夢を託した「MARS」も、"愚かな人間に祈りを"と言い添えた「南無」も、普段は等身大の葛藤を綴った歌として受け止められる楽曲だが、この日ばかりはラヴ&ピースを願う歌としての意味を強く帯びて、フロアに響きわたっていた。ポリティカルなメッセージを放つロック・バンドと言えば、Dragon AshやBRAHMAN、あるいはG-FREAK FACTORYといった、あの世代の気骨のあるバンドを思い浮かべるが、スサシにも、そういったバンドに似た社会への高い意識を感じずにはいられない瞬間だった。

クライマックスには、5月下旬にリリースされる新曲「しあわせになる」が披露された。荒ぶるバンド・サウンドの上で、メロディはなく、滔々と紡がれる言葉。そのラストに辿り着く"この夜は幸せになるための革命なんだ"というフレーズは、スサシがライヴをやる意味そのものだった。本編の締めくくりは"この曲を歌うためのツアーでした。天使の歌を歌います"と、最新EP『akuma』に収録されているスサシ初のスロー・バラード「MO」。ピアノが寄り添うホーリーな音像の中で、やがては終わる命のこと、それとは対照的に永遠に歌い継がれる音楽への想いを、強く優しく歌い上げて本編を締めくくった。

珍しくアンコールがあった。もともとはやらない予定だったが、Crossfaithが"イチローの歌うところを見たい"とリクエストして、実現したものだという。まずはひとりでステージに現れたイチローがスカ風にアレンジしたTHE BEATLESの「Hey Jude」でフロアを踊らせると、再びメンバー全員が集合。最後は会場全体が明るい光に包まれるなか、底抜けにポップな「still dreamin'」で全30曲のライヴの幕を閉じた。去り際に"今日も生きられました"と感謝を伝えたユーキ。思えば、CrossfaithのKoieも、この日のステージで"ライヴをやっているから生きる意味がある"と言っていた。そこにこの2組が共鳴する理由があるような気がした。ステージに立つことやロック・バンドであることが"生きること"と同列の価値を持つ。その切実さにきっと私たちは胸を打たれるのだ。

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