Japanese
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
Skream! マガジン 2021年09月号掲載
2021.07.15 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 秦 理絵 Photo by KEIJU
カオス対カオスが火花を散らし合う熱狂の一夜だった。2009年結成のSPARK!!SOUND!!SHOW!!(以下:スサシ)と、1999年結成のROTTENGRAFFTY(以下:ロットン)。バンド歴で言えば、10年の開きがある2組だが、過去にも対バンの経験があり、ロットンの自主企画"ポルノ超特急"にはスサシがゲストに招かれたこともあるという、深い繋がりがある2組だ。スサシが全4公演で開催する今回の対バン・ツアー[SPARK!!SOUND!!SHOW!! 2021 TOUR "HAPPY BIRTH DIE" EXTRA -あくまこうりんのぎしき-]。その初日となった恵比寿LIQUIDROOM公演は、満を持して、スサシの側からロットンを迎えた初めてのツーマンになる。
後輩相手だからと一切容赦することなく本気でぶつかったロットンに対して、スサシもまた、萎縮も、物怖じもなく、自分たちのやり方で唯一無二のロックを貫き通していた。
2組を繋ぐ共通項はラウド、ハードコア、ミクスチャー・ロックといったジャンルの点で語ることもできるが、同時に、生粋のミュージック・ラバー同士であるという点も大きいだろう。ロットンのN∀OKI(Vo)は、MCで"この場所を必ず守り抜こう"と語り掛け、スサシのタナカユーキ(Vo/Gt)は、音楽やアートは踏みにじられてはいけないと、フリースタイルのラップに想いを刻んだ。こんな時代だからこそ、音楽は、ライヴハウスは、絶対に必要だ。この日は、そう信じる2組の揺るぎない信念が相乗効果となって伝わってくる熱い共演だった。
"俺たちは日本一ライヴハウスが似合うバンド、京都からやってきたROTTENGRAFFTYだ!"(N∀OKI)。先攻でステージに登場したロットンは、まずは初期衝動あふれる「PLAYBACK」を皮切りに、会場の空気をビリビリと震わせた。"心の声、脳内麻薬出しまくんぜ! 飛ぼうぜー!"。そんなN∀OKIの叫び声に煽られると、コロナ禍のルールによって、フロアの立ち位置が決まっているお客さんは、その場で垂直にジャンプして答える。KAZUOMIの伸びやかなギターで突入した「相殺微量サイレンス」に続き、サイレンの音が響きわたり、HIROSHI(Dr)が裏打ちの高速ビートを叩きつけた「零戦SOUNDSYSTEM」では、ずっしりと腰を落とした侑威地(Ba)が激しく弦をはじいた。目まぐるしく入れ替わるN∀OKIとNOBUYAのヴォーカル。気がつけば、スサシ企画のツーマンにもかかわらず、会場全部がロットンのファンじゃないかと思わせるような空間になっていた。
"雨が降ろうが、槍が降ろうが生き延びろー!"と叫んで突入した「世界の終わり」では、開放感あふれるメロディを勢い良く駆け抜ける。すべてが終わった ifの日々を想像するこの歌は、あらゆる当たり前が終わってしまったこの状況下でさらに強く胸を打った。終盤のMCでは、KAZUOMIが"あ゛ー! 楽しいやんけ!"と、マイクを通さずに絶叫した。声を出せないお客さんの代わりに叫んでいるのだ。自身のツアーでは、恵比寿LIQUIDROOM公演が中止になったこともあり、再び恵比寿に戻ってこられた歓びを伝えたN∀OKIに続き、NOBUYAは"SPARK!!SOUND!!SHOW!!ほんまにありがとう。めちゃめちゃ生意気だけど、これだけは言わせて"と、ストレートに後輩への感謝を告げた。今年6月に発表したアコースティック作品(とはいえ、全然しっとりした作品ではないが)から、"大事な曲"と紹介した緻密で美しいナンバー「Goodbye to Romance」を届けると、ラストは、イントロだけで"待ってました"という反応が湧いた「金色グラフティー」で終演。"前向け、強くなれ、負けんな。俺らがいつでも助けるから!"と、まるでこれが最後のライヴかのような必死さで、N∀OKIは熱いメッセージを投げ続けた。
"楽園に行くために音楽をやってます。快楽主義です"(タナカユーキ/Vo/Gt)。ロットンの圧巻のライヴのあと、スサシはそう言って、ロットンが湧かせたフロアを自分たちの色に塗り変えていった。"あくまこうりん"というツアー・タイトルらしい、神聖な儀式を彷彿とさせるSEが流れると、インスト曲「MAD AGE」と「MAD HYMN」を皮切りに、電子音とヘヴィなバンド・サウンドが縦横無尽に駆け抜ける、スサシのカオティックな演奏が炸裂した。"あははっ!"と高笑いをするユーキの存在感が不敵だ。タクマ(Syn/Gt/Cho)とチヨ(Ba/Cho)が楽器を置き、フロント3人が並んでラップを刻んだ「感電!」のあと、バンドのムードメイカーでもあるイチロー(Dr/Cho/169)が"恵比寿のみなさーん! あくまこうりんしよーぜ!"と呼び掛けた「かいじゅうのうた」へ。鋭利な音像とラップとがザクザクと絡み合う変則的なダンス・ナンバーが、極彩色のライティングと相まって、フロアを異様な興奮状態へと導いていく。
MCでは、チヨが"ロットンの侑威地さん、ステージ涼しいって言ってたけど、全然涼しないっ(笑)!"と抗議をすると、"そうやって後輩を潰しにくる"と、ユーキも調子を合わせる。次回の"ポルノ超特急"は、まだ出演者は発表されていないが、タクマが勝手に"出まーす!"と宣言したりと言いたい放題。その表情は本当に嬉しそうだ。"めっちゃ昔の曲やります"という曲紹介で、声出し禁止のはずのフロアから思わず小さな歓声が漏れた「PS4」で、フロアにジュリアナ風のダンスを要求したあと、先日リリースされたばかりのダークでポップな新曲「HAPPY BIRTH DIE feat. 原田ちあき」が、ライヴで初めて披露された。原曲は全編打ち込みだが、ライヴでは楽器を入れて演奏する構成が新鮮だ。
メンバー全員がフロントに踊り出て、オケに乗せてラップをする「TOKYO MURDER」では、チヨがイチローの背中に覆いかぶさり、やんちゃに暴れまわった。続く「ヘビーローテンション」では、ロットンのN∀OKIが乱入。ユーキとのツイン・ヴォーカルによるスペシャルなかたちで届けると"今日、(ロットンが出演を)決めてくれたのは、俺らのことを好きやからしかないから。俺らは数字もってないんで(笑)"と、タイトなスケジュールの中で出演を決めてくれたという裏事情を明かしたユーキ。スサシにとってロットンは"音楽が繋いだ友達"ということで、バンドの音楽愛を目一杯に詰め込んだ「アワーミュージック」は、この日のハイライトのひとつだった。音楽を擬人化して語り掛けるようなロマンチックなこの歌を聴くと、彼らはミュージシャンである前に音楽に救われ、そこに居場所を見いだしてきた、ミュージック・ラバーであることを痛感させられる。
ツアー・タイトルの"HAPPY BIRTH DIE"にも通じる、"死"をテーマにした楽曲「優気」や「good die」から、ライヴの熱狂はラストスパートに向けて加速していった。解放と希望をダンス・ミュージックに求めることを、音源とは異なるリリックに変えて訴えた「MARS」から、客電をつけ、お客さんの顔が見える状態で届けた「スサシのマーチ」。さらに念仏のようなメロディが不穏に転がる「南無」では、タクマは服を脱ぎ捨てて上裸になっていた。ラストは、"俺たちのパーティーは絶対に終わらせないって曲をやります"と、「still dreamin'」を優しく歌い上げて終演。先日完走し終えたばかりのワンマン・ツアーは、工夫を凝らした内容で、バンドのエンターテイナーぶりを遺憾なく発揮していたが、今回のツアーは、バンドとして真っ向勝負でぶつかっていく潔いライヴだった。
ダーク・ヒーローへの憧れを語り、時に偽悪的な振る舞いを見せることもある彼らの本質には、深い音楽愛とロック・バンドとしての矜持がパンパンに詰まっている。この日、ROTTENGRAFFTYという最大級のリスペクトを寄せる先輩バンドと対峙したスサシからは、図らずも、そんな彼らの純なロック少年ぶりがステージいっぱいにあふれていた。
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