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INTERVIEW

Japanese

神はサイコロを振らない

2021年03月号掲載

神はサイコロを振らない

Member:柳田 周作(Vo) 吉田 喜一(Gt) 桐木 岳貢(Ba) 黒川 亮介(Dr)

Interviewer:秦 理絵

「夜永唄」のバンドって言われるけど、そんなところじゃ収まらない。自分らの道をこじ開けていきたいって思ってます


-(笑)3曲目「プラトニック・ラブ」は、「夜永唄」のアフター・ストーリーだそうですね。

柳田:「夜永唄」から時間が経ったイメージです。「夜永唄」のときは悲しみに暮れていて、悲壮感が漂う曲になってるんですけど、「プラトニック・ラブ」は虚無というか。空っぽになってる状態。だから、ストーリーがないんです。途中でエモーショナルなギター・ソロで盛り上がりはあるんですけど、詞と歌の感情は一定なんですよね。

-サウンド・プロデュースが伊澤一葉さん。

柳田:編曲とピアノ演奏もしていただきました。

-どういう経緯で実現したんですか?

柳田:「プラトニック・ラブ」は、デモの段階からピアノと歌が印象的だったんですよ。それで、ピアニストの方に編曲してもらいたいと思ったんです。

-伊澤さんは、メンバーにとってどういう存在ですか?

桐木:高校のときに聴いてた人が目の前にいるっていう感じですよね。the HIATUSも東京事変も聴いていたので。

吉田:イヤフォンの向こうの人ですよね。

柳田:事変(東京事変)の「電波通信」って曲が好きで。ライヴ映像を何回も観てたから、その人がマジでいるっていう感じでした。

-ちゃんとコミュニケーションはとれました(笑)?

柳田:初日はとれませんでした......(笑)。

一同:(笑)

柳田:僕と伊澤さんで打ち合わせがあったんですけど、そこでは"よろしくお願いします"って言った記憶しかない。 黒川:"何もしゃべれなかった"って言ってたもんね。

柳田:そう(笑)。で、改めてスタジオに入ったときに音楽で繋がれたというか。レコーディングも楽しくできたし、ただただ夢中になれる曲作りでしたね。

-伊澤さんとタッグを組むことで引き出されたことってなんだったと思いますか?

柳田:それはあまりにも多かったですよ。

桐木:ドラムで言うと伊澤さんは、かっちり理論で固めるというよりも、適当じゃないですけど、"好きなようにフィルを入れていいよ"って言ってくれて。ミックスのときに、俺が、"もうちょっとバスを出してほしいです"みたいなことを言ったら、ベースの音が引っ込んだんですよ。そしたら、伊澤さんが"このベースとドラムの絡みはいいから変えないほうがいい"って言ってくれて。それはめっちゃ嬉しかったです。伊澤さんに認めてもらえた気がして、自分の糧になりましたね。

黒川:伊澤さんは、そのときにしか出ない音や、空気感を大事にする人なんですよ。ドラムもあんまり決めないで、伊澤さんやメンバーの音に対して自分がプレイして"あ、こういう表現できたんや"っていう発見もあったんです。あと、歌に対しても、伊澤さんのテイクの選び方がすごいなと思って。柳田の新しい表現をどんどん引き出してくれたんですね。最初、1番のAメロを柳田は悲しそうに歌ってたんですけど、伊澤さんが"無の感じで歌って"ってリクエストして。柳田が表現した無の感じを聴くと、最初に悲しい感じで歌ってたときよりも、もっと悲しい感じに聴こえたんです。

-伊澤さんのディレクションも的確だけど、応える柳田さんの表現力もさすがです。

黒川:そうなんですよ。柳田もすごい。新しい表現できるやん! って。

柳田:すごい上からやなぁ(笑)。

黒川:いやいや、毎回、歌録りのときに見てるから(笑)。

柳田:(黒川は)一番歌にうるさいんですよ。昔から、俺が曲を作るときもメロディのことを言ってくるぐらいなので。やっぱりJ-POPがルーツにあるから、歌心を一番よくわかってるんですよね。

-吉田さんは、伊澤さんとのレコーディングはどうでしたか?

吉田:伊澤さんと一緒にリハーサルに入ったんですけど、それがすげぇ楽しかったんです。楽器を始めたてのときの、開放弦を鳴らして楽しかった感じというか。今の僕たちには、インディーズ時代にはなかったような責任感とかもあるんですけど、純粋に音を出す楽しさを思い出させてもらったんです。

-伊澤さんと一緒に音を鳴らすと、どうしてそういう感情を思い出せるんですか?

吉田:いや、それがわからないんですよ。

-"楽しんで"とか言われたわけじゃないんですよね?

吉田:ないです。ただ音を鳴らすだけで初心を思い出せてくれたんですよ。

柳田:伊澤さんを中心に勝手にグルーヴが生まれるっていうかね。俺は俯瞰で見てたんですけど、気がついたら、全員が勝手に伊澤さんについていこうとしてるんです。

-メジャー・デビューをして、インディーズ時代とは音楽との関わり方が違っていくなかで、そういう経験ができたのは貴重ですよね。

吉田:本当に。ああいうミュージシャンの姿には憧れますね。

-最後に収録されている「1on1」は、ドラマ"ヒミツのアイちゃん"主題歌。エレクトロなダンス・トラックというバンドの新機軸ですね。

柳田:"ヒミツのアイちゃん"には、主人公とヒロインの対象的な女の子ふたりがいて、それを音でも表現できないかっていうところでしたね。ギターと歌を生に振り切って、リズムをデジタルに振り切ることで、対象的なふたりを表現した構成になってます。なので、レコーディングにベードラ(ベースとドラム)のふたりは参加してないんです。

-打ち込みで入れてますね。

柳田:そうです。ただ、ライヴではシンベ(シンセ・ベース)を弾いたり、SPDっていうパッドでドラムの音を出したり、やりようはあるかなと思ってます。

-歌詞は、女性目線と男性目線が切り替わっていくように感じました。

柳田:この手法は今までもやってきたんですけど、今回は神サイ史上一番甘々ですね。特に2番目の"私が私じゃないみたい"は、女性が歌ってるようにしたくて、何十テイクも録り直したんです。特に"みたい~"は、自分の中で完璧なビブラートが出せるまではダメだっていうのがあったから、何回もトライして。普段はクリックを聴きながら歌入れをするんですけど、1回クリックを外してもらったらハマったんです。必ずしもかっちりしたところでやるのが正解ではないなっていう発見でしたね。

-今回はまったく異なるアプローチの4曲が揃ったシングルになりましたが、神サイの音楽への姿勢として、"これはやらない"という制限みたいなものってないんですか?

柳田:ないですね。振り切って、ぶち壊しまくって、それの積み重ねでいいと思ってます。"神サイと言えば、これでしょ"って言われたくないんですよ。インディーズ時代にちょっとだけ伸びた曲があると、それが神サイらしさだって言われて、ふざけんなよって思ったんです。で、今回は「夜永唄」のバンドだって言われる。それで知ってくれるのは本当にありがたいんですよ。ただまぁ、そんなところじゃ収まらないですというスタンスで、自分らの道をこじ開けていきたいなって思ってますね。