Japanese
kobore
2020年08月号掲載
Member:佐藤 赳(Gt/Vo) 田中 そら(Ba)
Interviewer:岡部 瑞希
お金がない日も体調が悪い日も、とにかくライヴしまくって、少しも休憩しないで走った結果が、今だと思う
-いや、もうおっしゃるとおりではあるんですけど、改めてそう聞くと受け取る側としても気持ちいいです。曲の話に戻りますが、序盤はとてもkoboreらしく始まって、真ん中では新しい挑戦や粋なアイディアを盛り込み――11曲を通して、いろいろな取り組みが感じられますね。
佐藤:真ん中でいったん落ち着いて、最後はまた上がるっていうV字アルバムですね。
-たしかに終盤のエネルギーの再燃っぷりも魅力的です。特に10曲目「ボクタチノアシタ」はBPMが上がり、疾走感を伴いながらメッセージ性もすごく強い曲で。"明日はきっと大丈夫さ 音楽が照らしてくれる"というフレーズは、音楽を愛する人たちが今何より欲しい言葉だなと思いました。
佐藤:"希望って感じの曲ないよね"って話になって、最後にできた曲ですね。僕がSuperflyさんの「タマシイレボリューション」がテーマ曲のサッカーのハイライトをずっと見てて......それ見ると絶対泣いちゃうんですけど(笑)。なんか超かっこいい! と思って、そういうアガる応援ソング、爽やかなファイト・ソング1曲もないねって気づいて、できた曲なんですよね。
-"音楽が風景になる"という歌詞もあり、これはアルバム・タイトルに直結したフレーズなので、ラスト前ではありながらもアルバムを総括するような曲でもあるのかなと。
佐藤:ホントそうです。やっぱり最終的にアルバムをリピートして聴いてもらえるように、終盤にも繋がりというか、ヒントを残した曲があったらいいなって。
-そしてラスト・ナンバーに、2016年にバンドとして初めて出したデモ音源『ヨルノカタスミ』から「当たり前の日々に」を再録して締めると。『ヨルノカタスミ』は全4曲のうち「当たり前の日々に」以外の3曲がすでに再録されていますが、この"再録"ということにはみなさんのこだわりが?
佐藤:いつもインタビューで、再録や三部作(『ヨルノカタスミ』、『アケユク ヨル ニ』、『ヨル ヲ ムカエニ』)は"考えてやられてるんですか?"って聞かれるんですけど、今まではたまたまなんですよね。でも「当たり前の日々に」の再録だけは、メジャーに行った一発目のアルバムの最後にするって何年も前からずっと決めてて。メジャー初アルバムの最後に「当たり前の日々に」が入ることによって、やっと自分の中でインディーズが完結するというか。ようやくスッキリできたかなって感じですね。
-めちゃくちゃストーリーがある!
佐藤:"結局変わってないっしょ?"っていう意味でそこにそれを入れたかったんです。昔から知ってくれているお客さんも、収録曲を見たら"そういうことか!"って思ってくれるだろうし。
-再録というのは、やっぱり昔に作った曲ですから、今のバンドの音やスタンスと乖離しないかという面で難しさもあると思うんです。今になって再録を思いついたわけではなく、何年も前から決めていたならなおさら。そんななかで、メッセージ的にもばっちりアルバムを締めてくれる曲になっているというのは、みなさんが今までバンドとして大きくなりながらも芯の部分はなんら変わらず活動を続けてきたことをそのまま表していますよね。
佐藤:変わってない証拠ですよね。4年前に出した曲が、今メジャー(アルバム)の最後にあってもハマるんだぜって。ちょっと僕らの強がりというか。
-いや、全然強がりじゃないです。正真正銘の強みですよ!
佐藤:強がりだったのが、最終的に強みになったかな。それだけは考えていて良かったなと思うし、考えていたことが変わらなかった理由でもある。この曲は、ちょっと歌うの照れるっすね(笑)。
-とことん意見を交わし合い、数々の想いも詰め込んで作り切ったアルバムだと思いますが、改めて今作はどういう1枚になったか、今の率直な気持ちを教えてください。
田中:歌詞的なことでは、狙っていたわけじゃないんですけど、奇しくもこのコロナの時代にフィットしているというか、しちゃったというか。「当たり前の日々に」なんて作ったのは4年前なんですけど、"当たり前の日々もいつかはなくなってしまう"っていう意味の歌詞が全部今の時代背景にフィットする。フィットしちゃった。そういう意味では、確実に誰かの背中を押せるような曲ばっかりになったんじゃないかなと思います。
-こういう状況になってしまったのはもちろん大変なことも多いですが、「当たり前の日々に」を再録してメジャー・デビューというストーリー立ての中では、この曲が何より必要とされて、より響くときにもう一度世に送り出すことができ、素晴らしいと思います。佐藤さんは制作を振り返ってみていかがですか?
佐藤:koboreはこれから先もずっと変わらず音楽を作っていくという表明の1枚で、本当に幅広くいろんな人に聴いてほしい。それから今まで聴いてくれていたリスナーの人たちも全員連れて行きたいなって想いで作った1枚でもあるので、まぁ! 自信作です!
-結成からこの5年間、はたから見た印象としてはスピード感を落とすことなく進んできたように感じます。みなさん自身は振り返ってみて、この約5年の体感時間はいかがでしょう?
佐藤:あっという間と言えばあっという間でしたけど、その間におそらく10年分くらいの経験をしたような気がしますね。たぶんギター・ロックというジャンルでは信じられない本数のライヴをして、心折れるような毎日を1~2年間過ごしたので。普通だったら10年かけて経験するようなことを、ライヴ本数ですべてカバーしていったみたいな。1ツアー50本以上は絶対回る。で、4連チャン、1日空いて、次また5連チャンとかあってもめげない。時には九州まで自分たちで運転するとか、ライヴ以外のところも4人で全部カバーして4人で超えてきたからこそ、ここまで登り詰めたのはすごく誇りだし、その経験は今に生きて、自分らのブレないスタンスを作るひとつになってるかなと思います。
-この5年間の成果は、それだけのことをやってきたからだと胸を張って言えるんですね。
佐藤:それだけの密度で動いてきたんで、僕は早いとも遅いとも思ってないし、早いか遅いかと言うよりは、濃いか濃くないかだと思っています。
-田中さんはどうですか?
田中:あえて他のバンドと比べるなら、周りの身近なバンドには"koboreは順調に進んでる"って言われてたんです。でも、例えば今の時代ならではの家に籠って作ったDTMをSNSにアップしたら一発でドンってスターになる、いわゆる"バズる"みたいなことは、koboreは絶対にしてなくて。僕たちはとにかくライヴをたくさんして、お金がない日も体調が悪い日も、とにかくライヴしまくった結果が今だと思うんですよ。絶対に急な角度で上がったわけじゃないんです。
-みなさん自身の足で、とにかく走った歩数と距離が今なんですよね。
田中:そうなんです。少しも休憩しないで走った結果が、今だと思う。あんまり苦労自慢みたいなのはしたくないですけど、でも他のバンドがやった5年と僕たちがやってきた5年は密度が相当違うなって、言えちゃうんですよ。その経験があるから、今のところ怖いことはないですよね。この4人だったら。相当喧嘩もしたし、言いたいことも全部言っているんで。
佐藤:比べるのはかっこ良くないんで、比べるのは俺らじゃない人がやればいい。俺らは俺らで今までどおり、ひたすらライヴ活動を続けていくだけ。いつまでも47都道府県ツアーとかやっちゃうバンドでいたいし、変わらないために常に曲を作っていくっていうことをずっと芯にしてやっていくんじゃないかと思いますね。
-頼もしいことこの上ないですね。そして、今おふたりとも言ったようにやっぱりkoboreは圧倒的ライヴ・バンドで、今作を引っ提げた"kobore HEBEREKE TOUR 2020"の開催が9月から予定されています。ライヴ自体が久しぶりだとか、いつも以上にいろんなシチュエーションが相まって、ファンの方々はいっそう心待ちにされているのではと思うのですが。
佐藤:まず、予定どおりできるかどうかと思ってライヴをしたことがないんですけど、とにかくその日を無事迎えられて良かったと思える1日にしたいと思ってます。このご時世もしかしたら、来年にはもうないライヴハウスがあるかもしれない。そういうことが今は絶対ないって言い切れない状況になってしまっているので、たとえ制限によってお客さんがキャパの何分の1になろうと、僕はいつもどおり一本一本のライヴを噛み締めてやれたらいいなと思います。
田中:ツアーをするときの(世の中の)感じがどうなっているかまだわからないですけど、行きたくても行けない人や、行こうか迷ってる人もいると思うんです。でも、もし来れるってなったなら、あとは僕たちに任せてくれれば、いつもどおりの僕たちがいつも以上の演奏をするんで。ぜひ、良かったら来てくださいという気持ちです。
-ライヴ・スケジュールがびっしりの日常が、1日も早く戻ってきてほしいですね。最後に改めて、新生koboreの決意表明で締めていただけたら!
佐藤:僕ら偉そうにリスナーとかお客さんとか言ってますけど、いざライヴがなくなっちゃえば、僕も家でひたすら漬物を作っているような平凡な人間なので(笑)。同じように接していけたらいいし、別にこの状況だからどうとか関係なしにフェアに俺らを見てくれたらいいなと思います。めちゃくちゃつらいこともあるだろうけど、そういうのも全部引き受けて、"koboreってやっぱライヴ・バンドだな"って感じてもらえるようなライヴを今後もしていけたらいいし、そう見えるバンドになっていきたいです!
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