挫・人間

INTERVIEW

Japanese

2020年03月号掲載

挫・人間下川リヲの“モノホンプレーヤーになれねえ”

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Member：下川リヲ（Vo/Gt）

Interviewer：沖さやこ

－「童貞トキメキ☆パラダイス」は夏目節が効いてますね。とはいえ、ここまで肩の力を抜いた楽しい夏目ソングは珍しい気がするので、夏目さんも"挫・人間らしさ"とかはそこまで考えずに、自然体で曲作りをしていたのかなって。

あ、そうかも。あんまり夏目と話しているわけではないんですけど、あいつはこういう曲を作るのは得意ですし、好きな曲が作れて良かったんじゃないかなと。夏目がメイン・ヴォーカルなので、ライヴでやったら楽しそうな曲ですよね。

－バンドの初期曲「足のない女の子」も「あてのない女の子」に変わり、満を持して音源化。この曲が入れられるのも普段通りの自分を曲にした結果かもしれません。

"ブラクラ"ということで、この5年くらい自分が出していなかった部分も出してみようと、好奇心的なものがはたらいて、ずいぶん昔に作った曲をこのタイミングで入れてみました。ただ今の僕らが"足のない女の子"というタイトルの曲を出すのはちょっと......ということで、1文字だけ変えてみて。そしたら奥行きが出て、いいものになったなと。

－今の下川さんの中にも「あてのない女の子」みたいな狂気性はあるんですよね。

そのあたりはずっと消えてないですね。そういう雰囲気の漫画も好きですし、みんなが"えっ！？"と思うものが好きだったり、自分では普通のつもりの発言にみんながぎょっとしちゃうことが多かったり。メンバーに歌詞を見せたときに"これはちょっとヤバいんじゃない......？"と言われたりして、"えぇっ！？"って。自分でそのヤバい／ヤバくないがわかんないんですよ。だから、本来そういうものはめちゃくちゃ持ってるんだろうなって思います。

－たしかに、曲にはそこまでダイレクトに出ていないけれど、ブログはなかなかディープですし。

ブログは"読んだやつが悪い"と思って、1時間かけて書いてます（笑）。

－（笑）『ブラクラ』を機に、よりバンドの制限がなくなりそうですね。

もともとNGのないバンドですけど、より肩の力が抜けた気がしますね。ある意味、自分の暗い部分を歌わなくてもいいかなという気持ちもあるんです。人の物語を曲にしてみようかなとか、もっと気楽に面白い曲を作ってみようかなとか、もっと音楽的なことをやってみようとも思ったりして......。いろんな好奇心が湧いております！

－実際、今作収録の「マジメと云う」も挫・人間にとってはチャレンジでは。

応援歌を作るにしても、挫・人間で"頑張れ"という言葉は使えないなと思って。まず、応援する人を具体的に立てて歌詞を書こうということで、ままならない恋愛をしている自分の友人に対してどう元気づけるか？と考えたんです。それで、"お前は真面目で、真面目に考えていることが素晴らしい。不真面目になればもっと人生うまくいくかもしれない。でも、その真面目さを守ってほしい。真面目さはかっこいい！それで突き進め！"という願いを込めて......。

－いい話です。そこに輪をかけて感動的な、夏目さんによる情熱のギター・ソロ！

あれびっくりしましたよ！何入れてんだこいつ！ふざけんなよ！ダセぇ～！って（笑）。弾いてる本人が自分のギター・ソロに一番感動して、その気持ちが乗っているだけなので、聴き手を泣かせようみたいなことは一切思ってないんですよね。

－そういうところも天然素材のロック・バンド感に繋がると思います。やっぱり挫・人間は常に自分たちの美学には忠実だと感じますし。

そうなんですよ。さっき"ダサい"という言葉を使いましたけど（笑）、音楽も、人間としても、やっぱりダサいことにはなりたくないし。そういうところは自分たちの真面目さなのかなと。楽な方向に進もうとしないのは、ある意味すごくいいことなのかなと思ってます。仲良くなれる友人に共通するのもそういうところなので。俺たちは俺たちの真面目さを誇っていこう、自分たちの美学を守っていこうという気持ちはありますね。

－ところで、下川さんは挫・人間以外の活動をやってみようと考えることはないんですか？

あー......たしかに多趣味なので、漫画を読んだら"自分ならこう書くな"、映画を観たら"自分ならこう撮るな"と思ったりするし、ちょっと考えたこともあるんですけど、どれも向いてないだろうなという結論に達しまして。

－小説も？

んー、すごくだらだら長文を書いちゃうので、向いてない気がします。Skream!さんのコラムや、ラジオに出ることもそうですけど、挫・人間を通していろいろやるのは好きですね。挫・人間と並行して他のバンドをやりたいとは思わないし、それは僕が挫・人間で好き勝手やれてるからそう感じるんだろうけど。まぁ、あえてひとつやりたいことを言うならば"改名したい"くらいですかね......（笑）。

－（笑）

"この名前さえなければ......！"と思うことが多々あるんですよ（笑）。すっごくいろんな人に言われますし。

－それは高校1年生の下川少年にクレームですね（笑）。

タイムマシンで当時に戻れたら大声で"やめろっ！"って言いますね（笑）。

－では、当時の下川少年にどんな名前にしろと命じます？

えー......"サチモス"ですかね（笑）。

－あはははは、そちらは来世で組んでいただいて（笑）。ひとまず、現世の下川さんと挫・人間の近未来に待ち構えるのはネクスト・ステージでしょうか。

ここからは上がっていく感じがしてますね。"ブラクラ"ということで自己犠牲して、強制終了して、精神的にも清算できて、改めてここからバンドをやっていけそうだなと。もやもやしながらも、うまくやっていけそうな気がしてます。自分の世界をバンドという場所で表現することで広がっていってる、受け入れてもらえていることも実感していて。他のバンドではまったくできない泳ぎ方とかもしてると思うので、この勢いのままガーンといきたいですね。