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INTERVIEW

Japanese

ピロカルピン

2019年09月号掲載

ピロカルピン

Member:松木 智恵子(Vo/Gt) 岡田 慎二郎(Gt) サカモトノボル(Support Ba) 池田 英昭(Support Dr)

Interviewer:石角 友香

-ピロカルピンはキャリアが長いバンドですが、一緒にやるにあたって何が魅力でしたか?

サカモト:僕がティーンのときに聴いてた日本のロック・バンドみたいな、ああいう空気感はやっぱり好きなので、最初は音楽性に惹かれて、でしたね。

岡田:ノボル君は、サポートを募集してない時期に"弾かせてもらえませんか"って言ってきてくれて、それが良かったですね。やっぱりやりたいと思ってくれる人とやりたいので。ドラムの池田君は一番若くて、まだ20代中盤ぐらいなんです。なので音楽性に乖離があるのかな? と思ったら、90年代のロックはもちろん、さらに前の60年代のレコードも聴いてるんですよ。"90年代に青春過ごしたのが羨ましい"とか言われてて(笑)。それぐらい世代の違いを感じない4人で、いいグルーヴになっている感じですね。

池田:世代が違っても好きな音楽は同じものが多いので、そこまでギャップを感じたことはないです。むしろ、同世代の仲間とは音楽の趣味自体が合致することは少ないので、歳上の人とのほうが好きな音楽の話はしやすいですね。あとは歳上の人と音楽をやるうえで生まれるようなやりづらさ、例えば高圧的とか、そういうのはまったくないです。みんな優しいし、すごくいい環境でやらせてもらってるなと感じています。

-ピロカルピンは岡田さんのギター・サウンドが軸になって、アンサンブルが魅力だと思うので、4人のセンスが通底してるのは大事ですね。

岡田:そうですね。ギター・サウンドが中心なのは、鍵盤が弾けないっていうのもあるんですが(笑)。でも最初に買ったのはシンセサイザーなんです。小室哲哉に憧れていたんで(笑)。

松木:憧れてたんだ?

-松木さんの歌メロにもちょっと小室さんの影響を感じますけど。

松木:あー、そうですか? 初めて言われました。でも小室哲哉さんの曲は好きです。

-渡辺美里さんも思い出させる部分があって。

松木:はい。渡辺美里さん、すごく好きです。楽曲提供者が岡村靖幸さんとか小林武史さんとか、いい曲が多くて、たくさん聴いてるので影響受けていると思います。

-いわゆるJ-POPが確立した時代と、90年代のUKの音楽が並走してるのがピロカルピンの面白さですね。

岡田:2000年代に入って日本のギター・ロックが盛り上がったじゃないですか。その下地って90年代のオルタナだったり、UKロックだったりしますよね。ピロカルピンも、まさに同じルートを辿っていて、バンドとしては2000年代のギター・ロックに分類されると思うんですけど、僕らの下地は90年代にあったりするので。当然、2000年代のギター・ロック、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)ですとかバンプ(BUMP OF CHICKEN)とか、もうちょっと前だとスピッツとかからも、みんな影響受けてますし。

松木:あの時代の輝きは特別だったって話を、つい最近みんなでしたばっかりなんです。あのときの魔法を見て、バンドを始めてしまったみたいな部分はあります。

岡田:まだそれにとらわれているから、このスタイルを抜け出せないんだと(笑)。

-(笑)でも、時代ごとに新しいものを取り入れるというより、あるがままで新鮮なメロディが書けるの? って驚きがあります。

岡田:メロディへのこだわりはすごくある?

松木:具体的にどうっていうのは難しいんですけど、自分が歌いたいメロディははっきりしてて。自分の声に合ってるメロディが限定されてると思うので、そこは意識しています。

-松木さんの声は最大の武器というか、多少エグいことを歌っても透明感があるので、まっすぐ届くと思うんですよ。

松木:ありがとうございます。

岡田:声質もそうなんですが、歌唱法がノン・ビブラートなんですよね。それはバンド・サウンドにすごく影響していて、基本的に僕もあまりギターでビブラートかけないんですよ。松木のヴォーカルがノン・ビブラートでストレートなところで、ギターがウネウネ絡むのも違うかなと。バンド全体としてはストレートな音像でいきたいので、そういう感じになってますね。

-では少し曲のお話を。「雨の日の衝動」を聴いていると、たしかに雨の日ならではの感情があるなと思いました。この曲はどういうところからできたんですか?

松木:まず歌詞を作るときは楽曲のアレンジが上がって、最終的な段階で書くのですが、この曲のアレンジを聴いたときに、なんとなく雨の日のイライラする感じとか、退廃的な感じとか、そういうイメージがあったので、それを書きました。

-松木さんは触媒体質というか、ご自分の感覚をそのまま受け止めて、あまり理屈を加えずにそのままアウトプットできる人なんですね。

松木:そうです。直感型なので、頭を使って歌詞を書いていないですね。楽をしているのかもしれないですけど。

岡田:そういう意味で言うと、僕らはひとりひとりでは欠陥があるというか、ふたりでひとりのクリエイターみたいな役割分担はできているかもしれないですね。昔は、僕が歌詞について"これはこういうこと?"って聞いて、松木さんが"それは考えてなかった"みたいなやりとりが頻繁にあって。そのやりとりの中で、松木さんも自分の裏にあった、本当の気持ちとか、出したいことに気づくっていうのはありましたね。最近はそこまで言わなくてもできるんですけど。

松木:あとはメロディで限定されて、このメロディだったらこういう言葉だろうとか、パズルみたいな感じでわりと決まっているというか。このメロディにこの響きの言葉は嫌だっていうことが多いので、そうすると制約が生まれて自ずとできていくって感じです。

-"こういうこと言えば響くだろう"っていうのがないのがいいんでしょうね。

松木:そうですね。今回はよりいっそう、そういうことは考えていないです。どうしたらリスナーの人に伝わるかなとか、こう言ったら響くかなということは、まったく考えてなくて。今までも考えていないほうだと思うんですけど。