Japanese
ピロカルピン
Skream! マガジン 2017年07月号掲載
2017.06.03 @下北沢CLUB Que
Writer 石角 友香
努力すれば夢は叶うとかいうメッセージには嘘くささしか感じない。かといって、自分がまったく非力だと思うには人生は長い。ピロカルピンというか、このバンドのソングライターである松木智恵子(Vo/Gt)は、まず自分自身の態度で自分と自分の周囲の意識を変えていくような説得力を音楽に見いだしている人なのだと、この日のライヴで感じた。
開演前のBGMには松木憧れの人、Freddie Mercuryの歌声が響く。ファン層は10代から40代と見受けられる幅広さ。彼らの持つ90年代UKロック的なギター・サウンド、日本語詞の美しさと文学性などから、そのファン層の厚さに納得する。今回、クラウドファンディングを実施し制作した8thアルバム『ノームの世界』。フロアには実際、"応援"に参加した人も多いのだろう。この日のワンマンを待ちわび、静かにメンバーの登場を待つ人が多く見受けられた。森の木立にいるようなSEが流れ、松木、岡田慎二郎(Gt)と、新作『ノームの世界』を共に作り上げたサポート・メンバーのサカモトノボル(Ba)、冨田洋之進(Dr/Omoinotake)が登場すると、想像以上の大歓声。幾何学模様のシックでガーリーなワンピース姿の松木が正面を見据えることが開始の合図のように、彼女のコード・カッティングと岡田の透明なオブリ、リズム隊のタイトなビートが鳴る。1曲目は新作からの「朝」。なんとも松木の声のまっすぐなこと! そして4人の肉体と気持ちから発せられるアンサンブルの必要最低限で隙間の多い有機性。ロックだどうだとか関係なく、バンド・サウンドのダイナミズムを全身で受け止める清々しさ。決然とした始まりに似合うこの曲からギター・ロックの真髄と呼べそうな楽曲が続き、フロアも熱を帯びるが松木の表情はわずかににこやかになる程度であまり変わらない。彼女の歌と演奏を堂々と宇宙の彼方にまで届けるような姿勢がとにかく美しい。四つ打ちのダンス・ロックとも取れる「パルプフィクション」も、いわゆる踊るためのビートとは根本的に違う、曲が求めるかっこいいビートとしての四つ打ちってこうだったよな、と再認識させられた。
「流星群」でアップデートされたピロカルピンの美メロとポップネスを体感したあとは、グッと内面世界に潜り、岡田のシューゲイザー素養が過去曲「ワンダーワールド」や「京都」で前面に打ち出され、再び新作から歌メロが牽引する極上のポップ・ソング「グローイングローイン」を披露した。
メンバー紹介を挟んで、"未完成な世界の 出口を探して"いる、今はまだ闇の中にいる現在進行形の姿を描く「ピノキオ」が、ライヴでさらに、その闇の中を歩き続ける決意をリアルなものとして届ける。松木の歌は感情でブレることがないし、ライヴが進行するにつれて力強さを増すことはあっても、決してはしゃがない。曲が表現していることがライヴの熱気を伴っても"盛られる"ことがない。ピロカルピンの音楽への信頼の厚さは、松木のそうした資質によるところがとても大きいのだと感じた。
『ノームの世界』の中で、というか彼らの曲の中ではマイナー・チューンでハードな側面を見せる「赤色のダンサー」。ドライなファンクネスを生み出すリズム隊に絡む岡田のギターは、通り一遍の16ビートのカッティングではなく、ヒリヒリした感情を表現するようなフレージングと音色が印象的。続く「小人の世界」もハードなモダン・ロックで、この2曲で聴かせた寓話的ポスト・ロックとでも言えそうな音像は、松木の凛々しくも現実を見据える歌声で、安易な嘆きにも叫びにも傾かない。どこまでもあるがままの真実が目の前に差し出されるような感覚。ハードなマイナー・チューンになるほど、ピロカルピンならではの澄み切った世界観が堪能できることを知った。MCで松木はバンドを続けることの現実的なシビアさを語り、だからこそ新作が完成したことを喜び、"一生もののアルバムができた"と淡々と言う。簡単なことじゃないけど、闘いたいことがあるなら流されずやるだけ――そんな力強さを集約したように、本編ラストでは演奏の作り出す音像が吹きすさぶ風のような「風立ちぬ」が、力強く鳴らされた。
ギター・ロック・バンドというのは表現者によって、かくも可能性に満ちたものなのだということ。そして少年以上に何者にも迎合しない意思を感じる女性ヴォーカルが存在するということ。その組み合わせが生み出す化学反応は痛快なほどだった。
[Setlist]
1. 朝
2. 未知への憧憬
3. 時の抜け殻
4. パルプフィクション
5. 流星群
6. ワンダーワールド
7. 京都
8. グローイングローイン
9. ピノキオ
10. 飛行少女
11. 赤色のダンサー
12. 小人の世界
13. 箱庭の世界
14. 南十字星
15. 青い月
16. 風立ちぬ
en1. 3分間
en2. 虹の彼方
- 1
LIVE INFO
- 2025.06.25
-
オレンジスパイニクラブ
ザ・シスターズハイ
SHE'S
星野源
TenTwenty
Czecho No Republic
PEDRO×詩羽
People In The Box
斉藤和義
岡崎体育
- 2025.06.26
-
Creepy Nuts
ザ・シスターズハイ
ヤングスキニー
怒髪天
ドミコ
TENDOUJI
the dadadadys
斉藤和義
WANIMA
岡崎体育
にしな
プルスタンス / Navy HERETIC / cherie / ライティライト
- 2025.06.27
-
四星球
Creepy Nuts
GOOD ON THE REEL
Subway Daydream
東京スカパラダイスオーケストラ
ビッケブランカ
the shes gone
The Slumbers
GLIM SPANKY
オレンジスパイニクラブ
女王蜂
ポルカドットスティングレイ
ドミコ
フリージアン
サイダーガール
TENDOUJI
Nothing's Carved In Stone
荒谷翔大
yama × 群馬交響楽団
chilldspot
WHISPER OUT LOUD / Good Grief / CrowsAlive / UNMASK aLIVE
Amber's × シズクノメ
空白ごっこ
WANIMA
岡崎体育
"LIVEHOLIC 10th Anniversary series~ナニカシラ presents sunriseeee!!!!〜"
- 2025.06.28
-
眉村ちあき
女王蜂
鶴
LOCAL CONNECT
竹内アンナ
GRAPEVINE
怒髪天
[Alexandros]
Lucky Kilimanjaro
Organic Call
浅井健一
"CRAFTLAND"
チリヌルヲワカ
the shes gone
CYNHN × タイトル未定 × fishbowl
OKAMOTO'S / w.o.d. / MONO NO AWARE / Laura day romance ほか
いゔどっと
いきものがかり
ASP
コレサワ
ドレスコーズ
神はサイコロを振らない
Laughing Hick
荒谷翔大
福永浩平(雨のパレード)
FINLANDS
the dadadadys
私立恵比寿中学
スカート
ゴキゲン帝国
礼賛
ORCALAND
"World DJ Festival Japan 2025"
ネクライトーキー
FIVE NEW OLD
斉藤和義
sumika
"TAKASAKI CITY ROCK FES.2025"
忘れらんねえよ / BLUE ENCOUNT / ヒトリエ / 打首獄門同好会 ほか
Halo at 四畳半
TGMX(FRONTIER BACKYARD etc.)
岡崎体育
Novelbright
- 2025.06.29
-
眉村ちあき
アルコサイト
ヤングスキニー
ブランデー戦記
鶴
竹内アンナ
GRAPEVINE
[Alexandros]
HEP BURN
GLIM SPANKY
怒髪天
FINLANDS
Lucky Kilimanjaro
ネクライトーキー
東京スカパラダイスオーケストラ
浅井健一
Chimothy→
SVEN(fox capture plan)
いゔどっと
大原櫻子
荒谷翔大
reGretGirl
ドレスコーズ
VOI SQUARE CAT
終活クラブ
サイダーガール
ポルカドットスティングレイ
いきものがかり
ASP
コレサワ
清 竜人25
私立恵比寿中学
"World DJ Festival Japan 2025"
おいしくるメロンパン
斉藤和義
sumika
"TAKASAKI CITY ROCK FES.2025"
yutori
岡崎体育
Nothing's Carved In Stone
Novelbright
- 2025.06.30
-
Dear Chambers
清 竜人TOWN
浜崎容子(アーバンギャルド)
Hump Back
岡崎体育
- 2025.07.01
-
ビレッジマンズストア
Mirror,Mirror
岡崎体育
- 2025.07.02
-
ヤングスキニー
キュウソネコカミ
SHE'S
Saucy Dog
Hump Back
Laura day romance × Billyrrom
Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)/ 寺中友将(KEYTALK)/ 谷口 鮪(KANA-BOON)/ アユニ・D(PEDRO)
ドミコ
岡崎体育
- 2025.07.03
-
ヤングスキニー
キュウソネコカミ
斉藤和義
go!go!vanillas
蒼山幸子
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
PK shampoo
TenTwenty
Saucy Dog
ビレッジマンズストア
クジラ夜の街
KALMA
the dadadadys
神聖かまってちゃん
サカナクション
フィロソフィーのダンス×清 竜人25
岡崎体育
- 2025.07.04
-
Nothing's Carved In Stone
MAN WITH A MISSION
斉藤和義
ExWHYZ
GRAPEVINE
SAKANAMON
LOCAL CONNECT
the shes gone
ビレッジマンズストア
蒼山幸子
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
女王蜂
ザ・シスターズハイ
DOLL PARTS
カナタタケヒロ(LEGO BIG MORL)
GANG PARADE
佐々木亮介(a flood of circle)
大原櫻子
緑黄色社会
ポルカドットスティングレイ
リーガルリリー
浅井健一
サカナクション
Mom
- 2025.07.05
-
Nothing's Carved In Stone
SAKANAMON
鶴
THE ORAL CIGARETTES / ヤングスキニー / 水曜日のカンパネラ ほか
reGretGirl
GLIM SPANKY
チリヌルヲワカ
キュウソネコカミ
ART-SCHOOL
コレサワ
[Alexandros]
フラワーカンパニーズ
shallm
go!go!vanillas
アーバンギャルド
ExWHYZ
FINLANDS
"見放題大阪2025"
GRAPEVINE
片平里菜
HY
SCOOBIE DO
the shes gone
怒髪天
荒谷翔大
the dadadadys
envy
サイダーガール
緑黄色社会
め組
Helsinki Lambda Club
androp
WtB
ASP
Conton Candy
The Slumbers
有村竜太朗
- 2025.07.06
-
PEDRO
Creepy Nuts
UVERworld
鶴
ビッケブランカ
sumika / Novelbright / Omoinotake ほか
荒谷翔大
reGretGirl
[Alexandros]
竹内アンナ
go!go!vanillas
ネクライトーキー
FIVE NEW OLD
DYGL × Newspeak × ANORAK!
片平里菜
PK shampoo
GLIM SPANKY
"見放題名古屋2025"
女王蜂
SCOOBIE DO
怒髪天
チリヌルヲワカ
ART-SCHOOL
Bimi
jizue
クレナズム
halca
HY
SIX LOUNGE
ドレスコーズ
LEGO BIG MORL
有村竜太朗
フラワーカンパニーズ
- 2025.07.07
-
ビレッジマンズストア
NakamuraEmi
浅井健一
- 2025.07.08
-
TENDOUJI
Hump Back
go!go!vanillas
ビレッジマンズストア
the dadadadys
kobore × プッシュプルポット × Brown Basket
銀杏BOYZ
- 2025.07.09
-
SHE'S
いきものがかり
Maki
山内総一郎(フジファブリック)
RELEASE INFO
- 2025.06.25
- 2025.06.27
- 2025.06.28
- 2025.07.02
- 2025.07.03
- 2025.07.04
- 2025.07.05
- 2025.07.06
- 2025.07.07
- 2025.07.08
- 2025.07.09
- 2025.07.11
- 2025.07.13
- 2025.07.15
- 2025.07.16
- 2025.07.20
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
音ノ乃のの
Skream! 2025年06月号