Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

nano.RIPE

2018年09月号掲載

nano.RIPE

Member:きみコ(Vo/Gt)

Interviewer:山口 智男

今年4月に結成20周年を迎えたnano.RIPEが、およそ2年ぶりのニュー・アルバム『ピッパラの樹の下で』をリリース。アルバムとしては6作目となるが、結成メンバーであるきみコとササキジュンのふたり体制になってからは初のアルバムだ。聴きどころはいろいろあるが、やはり一番はこれまで以上に気迫に満ちているところだろう。素晴らしい仕上がりとなった今作について、きみコからじっくりと話を訊いた。

-気迫に満ちたアルバムが完成しました。こういう言い方はあまり好きではないのですが、命を削りながら作ったんじゃないかって思えるぐらいきみコさんとササキ(ジュン/Gt)さんの想いが伝わってきました。

ほんとですか(笑)!?

-nano.RIPEってもともとそういうバンドだったと思うんですけど、今回はいつも以上にそんな感じがあって、ちょっとびっくりしました。

アルバムとしては6枚目なんですけど、ふたりになってからは1枚目なので、4人からふたりになったことでちょっとマイナスなイメージを持っている人たちに"ふたりになって作るアルバムがこんなにいいんだ"って思ってもらえるものに絶対したいねって、ジュンとずっと話してました。ふたりになって考えることがこれまで以上にたくさんあったので、ある意味寿命がちょっと縮んだかなっていう感じはあります(笑)。特にジュンはずっと追い込まれてましたね。

-今年の4月に結成20周年を迎えて、今特設サイトではスピッツの草野マサムネ(Vo/Gt)さんをはじめ、いろいろな方がお祝いのコメントを寄せていらっしゃるんですけど、このアルバムは20周年のお祝いムードにはちょっとそぐわないんじゃないかってくらい、なんて言うか"これからのし上がっていくぞ"っていう新人のデビュー・アルバムのような勢いがありますよね。

そうなんですよ。コメントの中には"20年やっているバンドには思えないね"っていうのもあって(笑)。それに、20周年と言っても結成からなので、その中にはぎゅっと活動できていた時期もあるし、できていなかった時期もあるから、20年という数字よりはまだ全然新人の気持ちでいるし、再スタートというイメージがこのアルバムにはあるので、たぶんそういうところが表れたのかな。

-気迫を感じたのは曲もさることながら、きみコさんの気持ちを、強さも弱さも含め、包み隠さずに歌詞に書いているからじゃないかと思うのですが、これまでの活動を踏まえたうえで、バンドに取り組む気持ちを改めて歌ったものが――

多いですね。ただ、そういう歌詞を書こう書こうと考えていたわけではないんですけど、ふたりになって1枚目とか、20周年とか、いろいろなことが重なって、改めてこの1年、nano.RIPEが今後どうありたいか、自分たちがどんなふうに歩いてきたかを振り返ることが多かったので、それが自然に歌詞に表れたんだと思います。

-歌詞の中には、引っ掛かるフレーズも結構あって。例えば「ポラリス」の"足元にも世界を作ってくれた/前を向いているだけじゃ見えないものを"という部分なんですけど、普通は前だけを向いて進んでいくわけじゃないですか。

バンドのこれまで歩いてきた道をテーマに書いたんですけど、ずっと前を向いてきたわけではないし、ライヴをやっていてずっと幸せだったかというと、そうじゃなかった日も今までたくさんあったし。そういうことをちゃんと書きたいと思ったんです。特に「ポラリス」はリード曲で、今回のアルバムの代表曲になるものなので、きれいごとばかりではなく、nano.RIPEが歩いてきた道のりから目を背けずに、だけど前向きに書きたいという想いがすごくありました。

-きれいごとに終始していないところがいいなと思ったところでした。6曲目の「月兎時」の歌詞も"追い風も時には敵になるその中"とか"味方も時には敵になるそれでも"とか結構――

そうですね(笑)。裏切る/裏切られるということではなくて、自分の気持ち次第で、すごく熱心に応援してくれてる気持ちが逆につらくなってしまうことが、この20年の中ではあったので。"応援してるよ。頑張って"という気持ちが"今はもう、そんなに頑張れない"ってときにはすごく重たくなってしまったりするっていう。それはこちらの気の持ちようなんですけど、ほんとだったら追い風や味方になるものが、そうじゃなく感じられてしまうことが、あたしは結構あって。卑屈になったり、自分以外がみんな敵に見えてしまったり。今思えば全然そんなことはなかったんですけどね。

-13曲目の「ステム」では"カラダの一部を失って ココロを何度も失って"と歌っていますが、そういう感覚になることもあったんですか?

これはストレートにメンバー・チェンジのことを歌ったんです。2016年12月にリズム隊(アベノブユキ/Ba、青山友樹/Dr)が抜けて、ふたりになったというイメージが強いかもしれないんですけど、その前にもメンバー・チェンジは何度もあって。アマチュアのころからたくさんの人と出会って、別れてを繰り返してきたんです。短い期間でも、一緒に音を出して、その人と作ったグルーヴがゼロになると、ほんとにどこかが欠けてしまった気持ちになることがすごく多くて。特に「ステム」は何かに例えるのではなく、バンドのことだけを歌おうと思って書いたので、"ここまで歌って大丈夫かな?"ってことまで書いた気がします。