Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

nano.RIPE

2016年11月号掲載

nano.RIPE

Member:きみコ(Gt/Vo)

Interviewer:山口 智男

間にシングル・コレクションを挟み、前作『七色眼鏡のヒミツ』から1年半ぶりに5thアルバム『スペースエコー』をリリースするnano.RIPE。ファンを驚かせる挑戦の連続だった3枚のシングルの延長でさらなる前進をアピールするその新作は、いろいろな意味でこれまでの中で一番力強いアルバムに。10月1日に発表されたとおり、リズム隊が年内いっぱいで脱退することが決まりバンドは大きな転機を迎えたようだが、きみコの言葉からはその転機さえもさらなるステップアップのチャンスに転換しようという前向きな意思が感じられる。

-シングルでもリリースされた「こだまことだま」(Track.5)、「ライムツリー」(Track.3)、「スノードロップ」(Track.9)の3曲を聴いて、nano.RIPEってシングルでも、いい意味でファンを裏切る挑戦をすごく大胆にやってきたんだなと改めて思いました。

ははは(笑)。ここ最近、特にそうでしたね。

-nano.RIPEの本質は変わっていないと思うんですけど、その本質が入っている入れ物のタイプが3曲とも全然違うじゃないですか。そこに改めて驚いたんですけど、それだけ強力なシングルが3曲......カップリングも含め6曲入っていると、アルバムの他の曲は相当強力なものを作らないと負けてしまう。そういう意味でも、今回の『スペースエコー』はシングルに負けない強力な曲が揃いましたね。

今回、オリジナル・アルバムとしては1年半ぶりなので、その間に作りためた曲がいっぱいあったんですよ。このアルバムを作ることが決まってから作ったものだけではなくて、作りためた曲の中から精鋭たちを選びながら、他にどういうタイプの曲があったらアルバムとしてバランスがいいかを考えつつ残りの曲を作っていったので、曲は意外にすんなりと揃いましたね。今回、新録曲が冒頭のインスト(Track.1「SN1998A」)を除いて7曲になるんですけど、アルバムに入れるか入れないか悩んだ曲は、たぶん20曲ぐらいありました。だから、結構選べたんです。"入れたかったのに"という曲が落ちちゃったぐらい今回は精鋭揃いで、"また次のアルバムまでお預けか"という子が何人か残ってるんですよ(笑)。


前作で殻を破ったんだから、その先に向かって走っていってしまおうって


-20曲ぐらいある候補曲から選曲するにあたって、どんな全体像を描きながら、nano.RIPEのどんなところをアピールできたらいいと考えたんでしょうか?

さっきおっしゃったように、いい意味で裏切れるアルバムを作りたいと思っていました。ホントに裏切っちゃダメなんですけど(笑)、"こんなところまで手を出しちゃったよ、nano.RIPE。だけど、これもnano.RIPEだな"っていうところに着地したい気持ちがあったので、やりすぎなぐらいやっちゃおうっていう感じはありました。恐れずにいろいろな音を入れて、削ぎ落とす作業というよりは......もちろん、ただ増やせばいいというわけではなかったんですけど、曲に対してベストなアレンジを心掛けて、"nano.RIPEはこれをやってもいい。これをやっちゃいけない"というラインは自分たちが決めることではないと思ったので、曲に対してどうかということだけを考えて、その曲が一番映えるアレンジ、一番映える音にして、それを一番映えるアレンジャーさんにお願いしようという気持ちで作りました。

-前作の『七色眼鏡のヒミツ』(2015年リリースの4thフル・アルバム)でもかなりファンを驚かせるようなサウンドに挑戦していましたよね?

そうなんですよ。お客さんと話していると、"3枚目(2014年リリースの3rdフル・アルバム『涙の落ちる速度』)が一番好き"という人が多いんですよ。だから、前作に戸惑った人が多かったのかなと思って、"3枚目に戻した方がいい?"と最初は考えたんですけど、それをやってしまうと進化できないし、同じことをやっているだけでは停滞しているような気もしてしまうし、せっかく前作でひとつ殻を破ったんだから、その先に向かって走っていってしまおうと思いました。ついてきてもらえるかどうかはファンを信じるしかない。あとは自分たちが作ったメロディと歌詞という根本のところをすごく信じているので、そこに自信を持って、アレンジは思い切り振り切ってやってしまおうという感じでしたね。

-4人以外の音も鳴っている、いわゆるバンド・サウンドではないアレンジの曲もあるんですけど、そういう曲ももはや"nano.RIPEらしい"という印象でした。

そうですね。やっぱりメロディのクセもあるし、歌詞はもちろんあたしがずっと書いてきているし、何より声は変わらないので。声だけはどんなに頑張っても変わらない。例えばギターやベースは、楽器やエフェクターを変えればいくらでも音を変えられるけど、歌い方を変えても声は変わらないので、そこが変わらなければ、結局nano.RIPEになるんじゃないかってところに落ち着いたんです。

-今回、聴きながら感じたのは、きみコさんが自分の変化に直面して、その変化が良いことなのか良くないことなのかを自分に問い掛けながら、その壁を乗り越えていくという気持ちが歌詞に込められている曲が多いなということだったんですよ。

そうですね。もともとそういうところはあるんですけど、このアルバムではそれが一層、言葉が強かったり、そういった曲がいつもより多かったりする部分はあるかもしれないです。苦悩や葛藤、あとだいたい敵は自分なんですけど、そういうものと闘っている曲が新録では特に多いかもしれない。

-それはTVアニメ"食戟のソーマ 弐ノ皿"のエンディング・テーマだった「スノードロップ」からの延長なんでしょうか?

「システム」(Track.4)は"食戟のソーマ 弐ノ皿"に出会って書けた曲なんですけど、そのあたりでバンドがメジャー・デビュー5周年を迎えて、シングル・コレクション(2015年リリースの『シアワセのクツ』)をリリースしたことをきっかけに自分たちが今までどんなふうに歩いてきたかとか、自分たちが今いる位置......例えばどれぐらいの大きさのライヴハウスでライヴやツアーをしているかとかを振り返ってみたときに、"5年前に思い描いていたのは、もっと上じゃなかった? 本当はもっと上に行っているはずだった。行っていたかった"と思って。そしたら、"まだまだこんなことじゃダメだ"って。あたし自身、自分の中でも外でも変化があったんですけど、nano.RIPEでは歌詞を書いているし、こういうインタビューもあたしが受けさせていただいているし、基本的にnano.RIPEでは言葉を発するのがあたしなので、nano.RIPEの言葉として発するべき言葉をちゃんと発しているのかってことを考えながら歌詞を書いていったら、こういう曲が集まってしまったという(笑)。