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INTERVIEW

Japanese

それでも世界が続くなら

2018年07月号掲載

それでも世界が続くなら

Member:篠塚 将行(Vo/Gt)

Interviewer:吉羽 さおり

ベスト・アルバムを出させてもらうくらいの曲数をやってきたバンドが思ってるんですよね、"始まってもいない"って


-今回、最後に「僕がバンドを辞めない理由」(2017年リリースの7thアルバム『消える世界と十日間』収録曲)が、「Re:僕がバンドを辞めない理由」と新しくなって収録されていますね。オリジナルのアルバムのときとは、歌詞の内容もちょっと変えてますよね?

そうですね。でも、そもそも変えている感覚がないんですよね。作ったときに弾き語りで作って、参考にしている歌詞はあるんですけど、歌っているうちにまたちょっと変わってくるんです。そうやって少しずつライヴをしながら、曲が言いたいことにだんだんと近づいてくるという。商業作家さんのように、一発目から言いたいことを書いてポンと曲にできる人ならいいと思うんですけど、僕の場合、一生同じ曲を歌っていって、しかも消費されないようにしていう気持ちなので、1回作っても、僕の場合変えられちゃうんです。

-意識的に変えたものではないんですね。

もともと弾き語りで作ったもので、1個前のアルバム『消える世界と十日間』の最後の曲で、要は発表している一番新しい曲なんですよね。あのアルバム自体が、作った順に曲を並べる作品で、最後の曲だけ弾き語りなんです。"十日間"というアルバムだけど、11曲目なんですよね。間に合わなかった11日目というか。その新曲を、ライヴではバンドでやっていたんです。歌っているうちに、ちょっと変わってもいたし、ディレクターもそれを聴いてくれていて。"ベスト・アルバムで、1曲新しい曲を録らないか"ってなったんですよね。それだったら、今が一番ベストだと思いたいじゃないですか。あのころは良かったというのにはしたくないので。なので、ベスト・アルバムに対する抵抗でもあるんですよね。ある意味ぶち壊しでもありますからね。

-最後に収録された一番新しい曲でありながら"まだ始まってもいないだろ"って終わりますからね。

ベスト・アルバムを出させてもらう、それくらいの曲数をやってきたバンドが、思ってるんですよね、"始まってもいない"って。やってきたなと思ってないんですよ。マスタリングに行っても、"この曲懐かしいな"とかないんですよ。全然途中だわって思ったというか。それこそ、どれだけ売れたかという対決ではなく、自分がどれだけ出し切ったかという対決をしているバンドなので。全然出し切れていないなと。これが俺だと思われたなら、ちょっと待ってくれと。それで、最後の曲の手前がその曲なんです。

-「成長痛」ですね。

全然まだだっていう。ちょっと待てと。

-曲順も、どこにも嘘がない曲だからこそ、自然といい流れになっています。

1曲目が「参加賞」なんですけど。この曲を好きだと言ってくれる人がいるのはもちろん知っているんですけど、そういうので選んだんじゃなくて、単純にこの曲があったからバンドを始めようと思った曲なんですよね。これは、前のバンド名だったとき、それでも世界が続くならが始まる前から作ってあった曲で。この曲を作ってやりたいなと思っていたころに、前のバンドがダメになって。前のバンドではもともと僕はヴォーカリストじゃなく、ギタリストだったんですよね。ヴォーカルが抜けてしまったので、変わりにやっている感じで、下手だし。作った俺が歌った方がリアルな感じもするけど、でも自分の声嫌いなんだよなって思っていたんです。それで「参加賞」を作りました。前のバンドがダメになったのもあったので、あの曲、もうちょっとだけ聴いてもらいたかったな、歌いたかったなっていう気持ちもあって。あぁ、俺でも歌いたいと思うんだっていう。自分で家でギター弾きながら歌っているのも珍しいなと思ったし、これは歌いたいんだなと。じゃあバンドやるか、っていう気持ちになるきっかけになったんですよね。音的に雰囲気もいいですしね。そこらへんは悩まずに1曲目になって。そうすると、嬉しいことにベストっぽくなっていったんです。

-8月の新作についても、さわりだけでもおうかがいしたいのですが、今どんな感じで進んでいますか?

もうできているくらいですね。「Re:僕がバンドを辞めない理由」を録っていても思ったんですけど、今、このバンドやりたいなっていうか。......やれそうなのかって訊かれたら、わからないですけどね。自分も人に言わないだけで、定期的にやめたくなるし。精神的なダメージを受けたりとか、人に嫌われたりするくらいなら、好かれたくないとか。誰にも好かれない代わりに、誰にも嫌われないことができるなら、その技使いたい奴って死ぬほどいると思うんです。いじめられてる奴ってそうだと思うし、俺もそうだったから。"頼む、もう誰も俺のこと好きじゃなくていいから、誰も俺のこと嫌わないでくれ、攻撃しないでくれ"っていう。それだけでいいって思えるんですよね。その精神が解消されないまま生きてきちゃって。

-そうなんですか。

有名になるというのは、きっとたくさんの人に好かれるけど、たくさんの敵も作るというか、アンチも生まれてきて然るべきだと思うんです。僕ら自身も、あのバンドいいな、あのバンドは嫌いだなとか言ってきたはずだし。僕らもCDを出してライヴをして、そういうことを言われて然るべきなのはわかってるし、耐えた方がいいんです。でも容認はしてるけど、個人的にはやっぱり嫌われるってつらいんですよね。でも、こんなふうに思ってる俺でも、バンドやりたい、バンドやりたいかもって思えるようなアルバムっていうか。やっと思えたのになっていう感じなんですよねぇ、うまくいかないもんだなとも思いますけどね。