Japanese
セックスマシーン×ガガガSP
2018年03月号掲載
セックスマシーン:森田 剛史(Vo/Key)
ガガガSP:コザック前田(唄い手)
インタビュアー:フジジュン Photo by 上溝恭香
-めちゃくちゃ面白いエピソードじゃないですか(笑)!
森田:そのあと、その生徒はワンマンとかも遊びに来てくれるようになりましたからね(笑)。そう考えるとこのバンド名もええなと思うし、みなさんお気づきやと思いますけど、"バンド名変えたい"というタイトルも決して本気ではなくて。それをユーモアに変えたいんですよ! 本気でバンド名を変えたかったら、アルバム・タイトルにせんと、しれっと変えてますから。
前田:さすがにそれはわかるやろ。「バンド名変えたい」って曲作った時点でオモロいもん(笑)。この曲のタイトルをベスト盤のタイトルにしたのって、どういう理由やったの?
森田:セックスマシーンを20年やってきて、いままでの積もり積もった想いをタイトルにするのが王道やなと思ったんです。そこで我々の場合って、バンドのスタイル自体はわりと真面目なんやけど、どこかユーモアを持っときたいと思うところがあって。その相反する想いをぶつけたいと思ったとき、"「バンド名変えたい」でしょう!"と思って、これにしたんです。このタイトルに対するリアクションとしては、"ほな、勝手に変えろやー!"とスパッと言われるのが一番ありがたいです(笑)。
前田:インタビューとかで、"そうですか。で、内容の話ですけど......"ってスカされたら、一番嫌やな(笑)。
森田:そしたら、"まぁ、いろんな曲がバリエーション豊かに入ってて......"って、めっちゃ普通の話になりますよね(笑)。でも、こういうタイトルを付けたことで、バンドの立ち位置を明確に示せたかな? と思っていて。僕らもガガガもですけど、登場して普通に曲をやって、"ありがとう、最後の曲です"ってバンドじゃないから。どこか過剰なサービス精神があると思うんです。
前田:過剰ってところは、俺も最近考えてて。例えばガガガやったら、10枚目のアルバム(2014年リリースの『ガガガを聴いたらサヨウナラ』)を出したとき、本編40曲にアンコール5曲やって、45曲ライヴをやったりとか。しなくてもいいことをいろいろしてるんですけど。それって普通にやってしまったら、他のバンドより劣ってると感じてしまうからやと思うんです。そこまで過剰にやって、やっと他のバンドと対等に渡り合えてるって思えるところがあるんかな? と俺は思ってしまうわけ。
森田:劣等感ってことですよね。それプラス、予想できない部分を持っておきたいっていうのもないですか? 何かをやらかすことで、自分を"今日、俺がどういくかわからんぞ"ってところを持っていたいという気持ちが僕はあって。で、それを続けてると、バンド像がひと言では説明できなくなってくるんです。"セクマシってどういうバンド?"って聞かれたとき、曲のことは言えるけど、曲にもどんどん広がりが出ていって、"自分たちはどういう立ち位置なのか?"ってことが自分でもわからなくなってくる。
前田:"たち位置"って、勃起したときの位置のこと?
森田:それはチンポジ(笑)。勃ち位置も気になりますけど、今回はバンドとしての立ち位置をね、この作品で示せたのがすごく良かったなと思ってるんです。それと同時に一辺倒ではないってところも、ベスト盤を聴いてもらえればわかると思います。
前田:でも、セクマシって、いまの時代の若い世代の感覚にもすごいフィットしてる感じがするけどな。キュウソネコカミとか、ヤバイTシャツ屋さんとか好きな人にも伝わると思うし、それはすごいなと思う。
-うん、ベスト盤を聴いても時代や世代を問わないことをやり続けてきたんだなと思うし、いまの若いロック・キッズたちにも響くし、面白がってもらえる作品だと思いました。
前田:モーリーって灘高じゃないですか? 前に呑み屋でたまたま同席した10個くらい下の子が、"セックスマシーンって知ってますか?"って聞いてきて。"僕、実は灘高なんですけど、灘高では中島らもか、森田剛史かってくらい伝説の人なんです"って言うてて、ビックリしたんやけど。ヤンキーが結婚したらすごくいいパパになるみたいな振り切り方で、モーリーは偏差値が高いからこそできるバカを最高に振り切ってやってるから。ひとつのことを考えるにも、他の人じゃ考えられないくらい何周も回って考えてるんですよね。
森田:"シンプルを科学しよう"とは思ってますけどね。
前田:ロックって神格化されるところがあって。ステージの上に立つとちょっとメッセージを発しただけで、"この人はすごい人や"とか大げさに捉えられてしまいがちなところもあるんやけど。例えば、「君を失ってWow」では、歌いたいことを全部含めて"Wow wow"だけで済ませてしまったりして、考えてみるとそれは心理やと思うんです。それって普通の人が考えたら、5周くらいしないと辿り着かないところだったりするので、モーリーのそういうところはすごい魅力的やと思いますね。
-考えて考えて辿り着いたのが、"シンプルを科学する"という手段だったんですか?
森田:そうですね。20代のときにガガガSPがワッといって、青春パンク・ムーヴメントの中でいろんな人が実績を残していくなかで"彼らと明確に違う、そして自分にしかできないことはなんやろう?"ってことはものすごい考えましたね。そこで陥りがちなんが、複雑にしていくことで。それはそれで音楽好きとか、その道の人にはものすごい好まれる尖鋭の仕方なんやと思うけど。もっと広いフィールドに行くにはどうしたらええんやろ? と思ったとき、シンプルを意識的に作らなきゃいけないと思ったんです。そしたら、言葉をたくさん詰め込んだ前田さんのカウンターにもなるし、僕はよりシンプルを目指そうと。
前田:でも、モーリーはその前からずっとそれをしてるんですよ。『土井』ってデモCDのころから、ずっとわかりやすいことをやってきて。それを世間的に知らしめたのが「サルでもわかるラブソング」くらいやったんかな? と思いますね。あのころ、電話で話したとき、"ミスチル(Mr.Children)は「君が好き」って歌うけど、恋愛してないとわからないじゃないですか? そこで考えたんですけど、「メシが好き」ってどうですかね? メシってみんな好きじゃないですか"言うてたことがあったんです。"ほんなら、拒食症の人はどうするんや?"って聞いたら、"そうですねぇ......"って悩んじゃって(笑)。
森田:それでお蔵入りになったんです。ちょっと配慮が足らんかったなと思って(笑)。
前田:そんな発想を明確に提示することができたって意味で、「サルでもわかるラブソング」はデカかったんちゃうかな? と思うんですよね。
森田:今も初めましての空間に行くときは、「サルでもわかるラブソング」を名刺代わりに演奏することが多いですしね。そこでもう、どういう捉え方をされても、こっちがいろいろ言うことじゃないかな? と思ってて。もし聞かれたら"シンプルを突き詰めていった結果、日本語の助詞を抜くことでアホに聴こえることに気づいたんです"とか言いますけど。単純なビートに子供がはしゃいでくれるのも嬉しいし、"アホなこと考えるね"って素直に言われるのも嬉しいし。自分の意図はどこまでも考えて作れるんですけど、そこから放たれたあとは自由に受け取ってもらえればいいんです。
前田:あとね、ライヴを通して振り返ったとき、モーリーほど正直にライヴをしてる人は少ないなと思って。最初に出てきて、お客さんを惹きつけてるときは"モーリー"なんですよ。ほんなら、後半になるとMCのテンションが低くなってきて、"森田君"になるんです(笑)。でも、お客さんはそれも受け入れていて。そういうバンドって、少ないと思うんです。最後になったら、"いや~、今日もいい感じで"って普通に喋ってるでしょ?
森田:あはは(笑)。意識的にではないですけど、キメキメの状態で最初から最後まで駆け抜ける必要はないなと思って。そこで人間としての隙が見えるのもいいかなと思ってるんです。でも、ライヴで"今日、どうだったかな?"みたいな評価の基準に"正直にできたか?"っていうのは、自分の中にもありますね。
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