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INTERVIEW

Japanese

The Mirraz

2016年02月号掲載

The Mirraz

Member:畠山 承平(Vo/Gt)

Interviewer:山口 智男

-と、言うと?

The Mirrazってライヴでメンバーみんなほとんど動かないんですよ。そのクールさがかっこいいと思ってやってるんですけど、今のライヴ・シーンやフェスなんかだと、それが通用しないように思える瞬間があるんです。だからってヴォーカルとして何かパフォーマンスできるのかっていったらギターを弾きながら歌ってるのでできないこともあって、今回ハンドマイクでライヴをやる曲も作りたかった。全部シンセ入れちゃえば、そういうこともできるからって理由もありました。ライヴとしての機能もそうだし、チャレンジ的な要素もあるし、自分がやりたかったっていうのももちろんある。自分がやりたかったことが実はまとまってるアルバムなんです。それがいきなりアルバムとしてドーンって出しちゃうから、普段怒らない人がストレス溜まりすぎていきなり発狂しちゃった感じっていうか(爆笑)。 いきなり"もう会社辞めてやる!"って(笑)、"あの人、10年間まったく怒ってなかったのにね"って、それぐらいの変化には聴こえるかもしれないですね(笑)。でも、俺からしたら"ずっとこんなクソ会社で我慢してきたんだ!"って感じ(爆笑)。だから自分としては自然なことで、当たり前のような気持ちなんですけど、周りからしたらね(笑)。

-たしかに、それぐらいの驚きとインパクトがありますよ(笑)。

そうですよね。ありますよね(笑)。でも、シンセを入れてもThe Mirrazになるという自信はあった。だから全曲入れることによって、変わったと思うお客さんもいるかもしれないけど、聴いてたら何の違和感もなくなるだろうし、"変わったけど、変わってないよ。これがThe Mirrazだ"っていう自信はありますね。

-シンセの導入は新しい挑戦として聴きどころのひとつではあると思うんですけど、個人的にはシンセよりもさっき言っていた勢いというか、やけっぱち、やけくそな感じがまた戻ってきたことが今回は大きいんじゃないかって。

バンドを続けてると、やっぱりストイックになっていって、それはそれで音楽的にレベルも上がってるし、バンドとしても充実してるんですけど、音楽の大事なところってそれだけじゃないよねってふと気づいて。もちろん、それも大事なんだけど、特にThe Mirrazというバンドのイメージを考えると、もっと勢いが欲しいと思った時期もあって。そういう勢いみたいなものは意識的にやっていかないと出せないっていうはありますよね、もう10年やってるので。それは経験しなきゃわからなかったことです。だから、やけっぱち感を演じてるというか、あえて求めてやってる感じです。やけっぱちな感じってどうだったけなってところがスタートになってますね、特に歌詞は。

-メジャー・レーベルにいたころの鬱憤は歌詞に反映されているんですか?

いや、そうでもないです。鬱憤が溜まってるから書いたっていうよりは、こういう鬱憤が昔あったはずだから、それをなんとか引きずり出してみよう。"みんなが求めてるThe Mirrazってこれでしょ?"って感じですね。今の自分が書きたいと思う曲はゆるめの曲。「葬式をしよう」(Track.8)、「いつでも死ねる」(Track.11)は書きたいことを書いてます。

-引きずり出す作業は大変でした?

大変っていうよりは、例えば「土曜日の原宿マジでクソ」(Track.10)って......。

-そのタイトルめちゃ共感します(笑)。

って思うじゃないですか(笑)。昔だったらそのまま歌詞にして、それでいいやって投げっぱなしで終わってた。でも、今ってそう思ったときに思ったことをそのままTwitterで書くと、何言ってんの?って炎上することが結構あるじゃないですか。非常識なことがタブーになりすぎてるというか、軽はずみなことがものすごく社会的にNGって空気がちょっとあって。それはTwitterだからってこともあると思うんですけど、作品を作るときにはもっと自由でありたいんです。でも、どうしてもNGな空気を感じてしまう。それはメジャーでの経験もあるんですけど、時代的な空気もあって、そういう歌詞をぱっと思いついても、踏みとどまってしまう自分がいるんですよ。だから今回はあえてそこで、もう一度自分で背中を押してあげる感じ。でも、どうせ書くならその言葉にもうちょっと意味を持たせるとか、そのままだと子供が愚痴ってるだけになっちゃうから、大人の視点を入れるとか。そういうプラスαが増えたって感じですね。あとは自分も1stアルバムや2ndアルバム(2009年リリースの『NECESSARY EVIL』)を聴くと、"ああ、この部分、子供っぽいんだよな"とか、表現しきれてないとか感じるんですよ。そういうところを改善した"1stアルバム"を、音楽面でも精神面でも成長した自分で、もう一度作るというテーマもありましたね。

-1stアルバムのころの勢いを取り戻しながら10年分の進化もあるわけですね。The Mirrazらしいやけっぱちな曲だけではなく、「葬式をしよう」、「いつでも死ねる」のようなメロウな曲も入っているからバランスもいいですよね。

明るい曲とか希望がある曲とか、もちろんそういうのも嫌いじゃないんですよ。でも、それをガチでやると自分的には恥ずかしさもある。素直に出せるのは、"世の中つまらないよね、でも、何とかしたいとは思っているんだよね"ぐらいの気持ち。絶望的ではないんだけど、ちょとネガティヴな人の歌詞なんです。ただ、そういう歌詞は書いちゃいけないっていう強迫観念もありますけど、The Mirrazってわりとそういうもんだから、今回はそれでもいいんじゃないかって思って書きました。あまり気にしないようにしているというか、むしろ、もうちょっと暗くてもいいんじゃないかっていう意識はありましたね。

-今後はライヴの雰囲気も変わっていきそうですね?

そうですね。EDM的なところはもっとライヴで浸透させたいと思ってて、フェスで見たとき、The Mirrazのライヴは他のバンドでは味わえない空気感があるよねってところにまでは持っていきたいです。

-ハンドマイクのパフォーマンスも増える(笑)?

すでに去年のフェスでいろいろチャレンジしてるんですよ。ステージでは動かずに魅せるやり方を今までしてたんで、どこまで機能するか実験的にやってるところはあるんですけど、これまでお客さんの反応ってあまり気にしてなかったんですよ。目をつぶって歌うことも多かったから見えてなかったし(笑)。ケイゾー(Ba/中島ケイゾー)や真彦(Gt/佐藤真彦)が"今日は盛り上がったね"って言ってても、俺は全然わからなかった。でも、ハンドマイクでお客さんを煽ると、みんなが楽しんでいるのがわかる。それはいいことだと思いました。ちゃんと仕事してるなって(笑)。チケット代の分、楽しませてるぞって(笑)。ライヴとしての実感がよりあるのかな。The Mirrazってライヴ・バンドってイメージがあるかもしれないけど、俺、ライヴが苦手なんですよ。あれだけの量の歌詞を覚えて、なおかつ間違えないで歌う。そうやりながら、お客さんを煽る他のバンドとどう戦っていくかって課題があったんですよ。だからそういうところもちゃんとパフォーマンスしてお客さんを楽しませたい。これまでは間違えずに歌うという技術の披露になってたところもあったのかな。それだけだとやっぱりお客さんもつまらないですよね。

-なんだか、10周年とともに新しい局面を迎えられそうですね?

Skream!1月号のインタビューでASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤(正文)さん(Vo/Gt)が"ハンカチ落としをやってるようなものなんです"って大槻ケンジさんの発言を引き合いに"もう一度ハンカチを落として欲しい"と言ってるのを読んで、自分たちにもハンカチが一度落ちたんだったら、またそういう状況にも持っていきたいと思ったんですよ。でも、その一方で、ハンカチが落ちるのを待ってるしかないんだとしたら、何をしても無駄っていうか、自分たちが好きなことをやるしかないじゃんとも思って。またいろいろ考えさせられたんですけど、より多くの人に聴いて欲しいと思って歌詞やサウンドを悩みながら3年ぐらい作ってきて......こんなに歌詞のことで悩むのってThe Mirrazってバンドが日本においてすごく特殊だからだと思ったんですよ。たぶん、昔のロック・バンドだったら、"その歌詞ダメ"って言われたら、"じゃあ、歌詞を載せずにカップリングに入れてください"ぐらいの感じだったと思うんですけど、The Mirrazって、ほぼ全曲がそうなので、昔のバンドと同じことしちゃうとバンドとしてNGになってしまう。でも、それを気にしてたら何にもできなくなっちゃうから、10年目にしてもう好きにやりたいなって気持ちになってきていますね。