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INTERVIEW

Japanese

ピロカルピン

2015年05月号掲載

ピロカルピン

Member:松木 智恵子(Vo/Gt) 岡田 慎二郎(Gt) 荒内 塁(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-ゆったりとしたダンス・ビートを取り入れたニュー・ウェイブ色の強いTrack.8「ミステリーツアー」はピロカルピンの新機軸ではないでしょうか。

松木:これは荒内 塁のコーラスが炸裂しています。録ってるときに牧野さんから"もっと悪い感じで!"って言われてたよね(笑)。

荒内:(笑)コーラスのレコーディングの経験がそこまでなかったので難しかったですね。なかなか歌うだけでも難しいのに......。

松木:声優の域だったね(笑)。

岡田:「ミステリーツアー」はピロカルピンでは初めてワーミー(※ペダル状のエフェクター。音程を変化させることができる)を使ったんです。そういうニュー・ウェイブ・リヴァイヴァルの色の出た楽曲になりましたね。

-楽曲の粒立ちができているのは、こういう細かいところまで突き詰められているからですね。Track.6「波の音」は幻想的なアコギの音色が印象的でした。

松木:これはとにかくナチュラルに録ろうと思って。本当に海辺で歌っているような感じにしたかったんですよね。これも最終的にはコーラスが重厚になっていったので、現実と幻想の狭間のような曲になりました。

岡田:この曲は最初は波の音が聞こえて、そこにアコギを重ねて。最初は松木ひとりだったものが、コーラスが入って......と、現実から脳内に広がる幻想へと移っていく過程みたいなものを表現したかったんですよね。なので前半はわかりやすい明るめの曲が多くて、「波の音」から後半のディープな曲に入っていくというイメージでしたね。

-それは『太陽と月のオアシス』に引き続き、ですね。あのアルバムはインタールードが場面転換を果たしていましたが、今回はそれを楽曲で行っている。

岡田:そうですね。『太陽と月のオアシス』は玄人ウケする雰囲気満載でしたけど(笑)、今回はそれが加味されていいバランスにできたのかなと思います。今までは"ロックなアルバムの途中にアコギの曲が入るのはどうなのかな?"と少し抵抗があったんですけど――。

松木:たしかに! 前作はすごくそれに反発して反発して、アコギの曲をボーナス・トラックとして入れたんです。あのときに比べるとだいぶ柔軟になったんですね(笑)。

岡田:やっぱりシンプルに松木の歌声を聴きたい人もいると思うんですよね。そういったことも考えられるようになりました。でも純粋にギターと歌だけにしないところが、ちょっとひねくれてるかもしれないですね(笑)。

-ははは、大事です。2年間でピロカルピンは細かい意識がいろいろ変わってきてるんですね。Track.9「黒い雨傘」もスピード感があって、力強い新しさを感じました。私はこの歌詞にリアリティを感じたんですよね。

岡田:バンド最速というわけではないんですけど、聴いた感じだと最速かもしれないですね。ピロカルピンにこういうイメージを持ってない人もいると思うので、そういう人たちにも届いてくれたら。これは松木さんのダーク・サイドが出てるんじゃない(笑)?

松木:あ......そうかも(笑)。これは"羅生門"の世界をイメージしてできたもので。結構歌詞もストレートなんですけど......恥ずかしさみたいなものがなくなったのかもしれないです。日記みたいな歌詞ってあるじゃないですか。やっぱり歌詞は音楽と一緒に届けるものだから、そういうものではいけないと思ってて。言葉だけが独り歩きするものよりは、メロディを含めて全体で調和の取れたものにしたいという思いが強かったんですけど、今回はそれが根底にありつつも、よりわかりやすいものを書きたいなと思って。やっぱりそれはメジャー時代に染みついた感覚なのかな、と思います。

岡田:インディーズとメジャーを経ていなかったら、こういうアルバムにはならなかったなと思いますね。本当にいろんないい経験があったからこそ完成できたと思います。これくらいのことをメジャー時代にできればスタッフも満足してくれたのかもしれないですけど(笑)。人生はそういうものですよね。

-(笑)そうですね。でも自主レーベルを立ち上げて、自分たちで自分たちの納得がいく作品を作ったということは、とてもかけがえのない財産だと思いますし、そういう経験がまた音楽の深みになっていくと思います。バンド史上最大規模のツアーを、今できることもとても素敵なことではないでしょうか。

松木:そうですね。今まで行ったことのない地域にもいくつかお邪魔させてもらいます。ピロカルピンは"知る人ぞ知るいいバンドでありたい"というものがバンドの立ち上げ時からなんとなくあって、それが根底にあったままここまで来てしまったんです。でも今作でそこから逸脱できたなと思っているので、より多くの人に届けたいという気持ちがあります。ツアーでピロカルピンを見たことがない人たちにも見てもらえたらいいなと思います。もっと広いところに届けたいですね。