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INTERVIEW

Japanese

ピロカルピン

2015年05月号掲載

ピロカルピン

Member:松木 智恵子(Vo/Gt) 岡田 慎二郎(Gt) 荒内 塁(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-そうですね、とても素晴らしいと思います。音へのポリシーというと、初回特典としてアルバム全曲のハイレゾ音源のダウンロード・カードが封入されているという前例のない試みもあります。

松木:今はパフォーマンスが面白いバンドが増えているのかなと思うんで、時代に逆行してるのかもしれないんですけど、私たちは音源にこだわってきたバンドで、そこにアイデンティティがあるので。そこをしっかりしないと意味がないと思いますし、そこが1番自信を持って届けられるところでもあります。今はライヴ・シーンばかりになっているので、CDを聴かない人たちがたくさんいると思うんですけど、ぜひハイレゾで聴いてもらって"音源を聴く楽しみ"をもっと知ってもらったら、違う方向からも盛り上がっていけるんじゃないかなと思いますね。

岡田:レコーディング・スタジオでハイレゾ音質とCD音質を比較したときに、音の空間がものすごく狭くなって......こんなに違うんだと思ったことがあるんですね。僕らがレコーディングやミックスで聴いているものはハイレゾ状態に近いんで、それをみんなに聴いてもらいたいし。音楽を聴く方法も今の時期は過渡期じゃないですか。僕としてはCDを買ってくれた人が1番いい音を手にして欲しくて今回このような企画をやってみました。ハイレゾだけではなくMP3の圧縮音源も手に入れることができるんです。

-ではCDを買えば聴き比べもできますね。

岡田:僕は"違うフォーマットのものを手に入れるために同じ内容のものをまた買わなければいけないのは嫌だな"と思ってしまうので。ハイレゾ音源はCDよりも高く売ってることも多くて、ある程度の収益にもなると思うんですけど、盤を買ってもらったらCDでもハイレゾでもMP3でも、その人に合った音源を手に入れられるようにしました。今回それが実現できたので、迷わず自信を持って"CDを買ってください"と言えます。それがファンの人たちへの誠意にもなると思うんですよね。

-ピロカルピンは昔から奥行きのある音作りをしているバンドですから、それをハイレゾで聴けるのはとても嬉しいです。紙資料には"キャッチーなメロディとギター・オリエンテッドなバンド・サウンドの追究をテーマにした"と記載がありましたが、そこを詳しく教えていただけますか。

松木:ギター・オリエンテッドなバンド・サウンドは今までもピロカルピンが追究してきたものでもあるんですけど、今回はコーラスにかなり力を入れました。レコーディング・エンジニアの牧野さんに共同プロデューサーとして入ってもらったことで、メンバー全員がコーラスのレコーディングに挑戦しました。重厚になっているので、そこも聴きどころですね。

岡田:牧野さんがコーラス好きみたいで。アレンジは僕が考えるので"コーラスはこれくらいかな"とある程度決めるんですけど、録ってると牧野さんがどんどんスイッチ入ってきて"じゃあもう1個重ねよう""もう1個行こう!"みたいになってきて......そんなに入れるんですか!?って(笑)。

松木:Enyaみたいなね(笑)できあがったものを聴くと"ああ......! すごく良くなった!"と思うんですよね。

-確かに今回のコーラス・ワーク、ものすごく巧みだと思います。でもコーラスで聴かすというよりは、音の中に馴染んでいることでの良さというか。

岡田:やっぱり僕らはキーボードを入れていないので、その代わりにコーラスを充実させているというのもありますね。

松木:そうだね、ペダル・トーン的なコーラスも結構多いし。

岡田:シンセで弾けば映えるのかもしれないですけど......そこをコーラスでやるという。つまらないこだわりかもしれないですけど(笑)。

松木:本当に時代に逆行してる(笑)。でもバンドの持ってる強みでもあるから、それは活かしていきたいですね。

-そうですね。それぞれの音の芯も強いと思います。ギターは結構THE CUREの匂いがするものや、シューゲイザー的なものも多くて、岡田さんのバックグラウンドが出ているなと思いました。

岡田:あ、THE CURE大好きで、「BE FREE」は完全にそれを意識してますね。今回は牧野さんが所有している"atelier Q"というスタジオで録ったんですけど、いい音が録れるまで牧野さんも付き合ってくれて。今回は使ってるギターもすごく多いので、バリエーション豊かな感じにはなりました。

-岡田さんはアレンジのイニチアシブを取ってらっしゃいますが、ドラムに関してはどれくらい要望を出すのでしょうか? 荒内さんのドラムは曲の世界を拡張する、ドラマティックなドラムだと思います。

松木:(荒内のドラムは)歌心があるよね。歌もうまいし、普段から鼻歌もよく歌うしね。歌が好きなのかなと思ってます。

岡田:今回は(ドラムに要望を出すことが)少なかったんです。荒内としてはもう少し、歌を活かしてシンプルにいい感じに叩きたいと思うんです。でも俺が"もっと叩け""もっと派手に"とか意見を言うので......荒内もピロカルピンに入って4年くらいだから"岡田さんはもっとこうして欲しいだろうな"というのがわかってきたのかも(笑)。だからなおさらバンドとして合ってきてるんじゃないかなと思いますね。

荒内:音楽を始めたときにスピッツが大好きだったのもあって、ドラムを考えるうえで歌は意識してますね。(岡田と)ふたりで意見交換をして、すり合わせていって"これだ!"というものを見つけていく感じだったんですけど、今回は驚くほどに(自分が作っていったドラム・パターンに)ツッコミが少なくてすんなりいって......ちょっと不安です(笑)。

岡田:それぞれの意見を尊重したいという気持ちもあるんですけど、それ以上に求めているものが出てくるんです。だから基準を緩めたというわけではないんですよね。