Japanese
FoZZtone
2014年11月号掲載
Member:渡會 将士 (Vo/Gt)
Interviewer:沖 さやこ
-バンドマンは一般的な週5でフルタイム勤務のような生活ではないと思いますが、その生活を想像するというニュアンスですか?
あ、僕は、バンド活動をしながらお金をもらって自分たちの生活をして、お金を払ってくれた人たちにも対価に見合ったものを提供して――それは普通の会社や八百屋みたいなお店とまったく一緒だなと思うんです。だから俺が"なんでこれが伝わらないのかな~"とやきもきするようなスタッフとのやり取りみたいなのと同じようなことが、みんなの生活にもあると思うんですよね。だからそんなにね、バンドマンとバンドマン以外の職業のかたがたが違うという感覚はないんですよ。僕、吉井和哉さんが好きで、吉井さんの『39108』というアルバムの1曲目の「人それぞれのマイウェイ」はガソリン・スタンドでの描写で歌詞が綴られていくんですけど。そこに"給油口に入れる時のゴリっていう音キライだ"という歌詞があって......そんなこと言われても全然救われたりしないけど(笑)、ああ、めっちゃわかる~!って。あれもすごく日常生活だと思うんですよね。そういうのがいいなと思うんで。
-「溺れる鯨」は、サビのメロディと古めかしい言葉遣いは鯨歌(※江戸時代から明治時代末期まで続いた捕鯨文化での、鯨の解体作業中や、宴席で歌い継がれてきた労働歌であり祝いの歌)がモチーフになっているとのことで。FoZZtoneには2011年にリリースされたアルバム『NEW WORLD』に「白鯨」という組曲もありますが、渡會さんにとって鯨はどういうものなのでしょう?
聴き手が好きなように想像してくれていいと思うんですけど、もともと僕は鯨が食べるのも見るのも好きで。『NEW WORLD』のときにいろいろ調べたら、鯨って面白い生き物なんですよ。伝承とかを見るとちょっと神格化されてて、東南アジアにある捕鯨の島では鯨をずっと食べ続けてたら鯨になっちゃった、みたいな民話があったり。独特なラストを迎えるものが多いんです。調べているとどうやら、能動的に捕鯨する人たちにも乱獲するという感覚はないみたいで。今でも鯨歌を歌い続けている場所もあるみたいで、"村長が鯨歌を歌うまでそれ以外の歌は歌ってはいけない"みたいなルールもあるみたいなんですよ。みんな敬いかたが半端じゃなかったりして。鯨にまつわる人々がみんな面白いんですよね。それと、鯨の生き死にに過剰すぎるなと思っていて。鯖が死んで浮いててもみんな関心持たないけど、それが鯨だったら結構な騒ぎになるじゃないですか。鯨が頭がいいから、という理由なら頭がいい豚も守ったら?とも思ったりするし。でも鯨が好きな理由のひとつは、大きいから、というのもあるかもしれませんね。
-マンドリンの音色も美しいTrack.4「Message from the front」は"続けるだけじゃどこにも辿り着けない"という言葉に、11年目のバンドから歌われるゆえの重みがありました。"「自分らしさ」は勝てなけりゃ意味がない""しみったれた「ありのまま」じゃ辿り着けない"などなど......。
......本当に昔から"バンドは続けたもん勝ちだからさ!"みたいなことを言われてて(笑)、作品を作り続けるのには体力もお金も掛かるんだぞ!? と思ったりして。あとは"ありのまま"という言葉への抵抗ですね。"素の自分ってどんなもんだよ?"と。あと名曲とも名高い"NO.1 にならなくてもいい"も、それを言いわけに使っている人があまりにも多いのが嫌だなーといらいらしていたのもあって――そんな中で11年続いたバンドが歌ったら説得力あるんじゃないかなと思って。根本的にみんな未熟じゃないかと。その状態で"別にNO.1目指す気ないからいいよ"とか"ありのままでやっているからここから変えようと思わない"とか、社会全体に保守的な意見が多い気がして、それだとどこかの国に侵略されちゃうよ? と思うし。そういう危機感もあるし、今頑張ってる人たちを、ダサい言葉で甘やかさないでほしいなと。そういうところに物申すところはありましたね。
-もともと渡會さんは反抗心をユーモアに変換してらしたけど、今回はそれが如実だと思います。
残念なことにパンクス魂がちょっとありまして......(笑)。「Message from the front」というタイトルもBAD RELIGIONの「News From The Front」というタイトルと引っ掛けて。"後ろ向きだと前からやってくるものに気付かない。未来はいつも前からやってくる"という曲で、あの人たちもパンクスなんですよね。
-"素の自分ってどんなもんだよ?"とおっしゃっていましたが、今回のアルバムは渡會さんの"素"の部分が大分出ている思うんですよね。
そうですね。だと思います。素を出すけど、それを"ありのままでいいや"で出してるんじゃないし、虚勢で固めているわけでもない......しょうもない人間だけどこんだけ頑張ってます! 現状こんな感じです! みたいな、駄目なプレゼンみたいな感じです(笑)。やっぱり、お客さんとして聴いてくれる人でも、そういう人が好きなんですよね。"自分はこういう人間だから"と止まっちゃう人はいっぱいいて、それはそれでいいですけど、成長しつづけてる人が魅力的ですよね。
-中原中也の"汚れつちまつた悲しみに"と掛けられている"いかれっちまった愚かさに"が頭から離れない、キャノンさん作曲のTrack.8「Anomaly」は、またFoZZtoneには新しいサウンド・アプローチで......いや、FoZZtoneにはというより音楽シーンかな? もう時代もジャンルもわからない1曲になっているなと(笑)。
これはね、ちょっと竹尾君の良くないところが出ちゃったかな......"そういう弾きすぎ感か!"と(笑)。あんまり他の曲でギターをガッと弾いてないんで"この曲は俺ギター弾くわ"みたいな感じのことを言っていて。でもキャノンはMUSEとかが好きなんで、そっちの雰囲気で行きたかったんです。で、武並さんが"頭のフィル録り直していい?"と言って、もともとキャノンのデモの時点で音の入りが早かったんですけど、それなのにさらに前に2、3音ずらして......完全にドッパンズトパン、ドッパンズトパン!と聴こえるようにわざと変な譜割で叩きはじめて(笑)。最初はみんな"どうしよう?"みたいな感じだったのに最終的には"とにかくわけわかんなくしてやれ!"みたいな謎の行動に出て、それが全部カオスに混ざりまくって。まさに"Anomaly(=統計学や理論の枠を越えて巻き起こる異常事態)"ですね。
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