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INTERVIEW

Japanese

オワリカラ

2012年05月号掲載

オワリカラ

Member:タカハシ ヒョウリ(Vo&Gt)

Interviewer:沖 さやこ


-“狂ったこの街の たった一つの奇跡”と歌われた「さよなら女王陛下」みたいな存在はこの世にいると思いますか?

……本質的にはいないと思ってますね。ただ人それぞれの中にはいると思うんですよ。それを信じているから生きていける、っていう絶対的な価値観というか。でも生きていると、そういうものが死んでしまうときが必ずやってくると思うんです。そうなったときに“じゃあもう駄目だ”ってネガティヴな方向で全てを投げ出すのかっていうと、そうじゃなくて。新しいものとか、自分の中にあるものとか、そういうものを道しるべにして生きていくしかないと思うんですよね。そういうことかなぁ。

-タカハシさんにとっての、信じていけるから生きていけるものとは何でしょうか。

難しいですねー……。でも僕が今、一番思うのは、ひとつになるってことですかね。いろんなものの境目がなくなってひとつになれたりとか。逆に言えばもともとはひとつだったんじゃないかなっていう思いが凄く原動力になっていくというか。その全てがひとつのものから始まっていて、そこを目指しているのは光ってるもので。それに向かって行ってるんだっていうイメージ……それは1個大事なものとしてはあるかもしれないですね。

-アルバムを出すごとにオワリカラは進化し、成長していると思います。

本当にそうだと思います。作品って、一瞬一瞬そのときにしか作れないものだと思うんですよね。もう『ドアたち』は一生作れない。そのときそのときにしか作れないアルバムをちゃんと作っていくのが音楽家冥利に尽きるというか、一番大事なことだと思うので。でも前進してるって思いがすごくありますね。ちゃんと一歩ずつ進んでるっていうか、足踏みしていないっていうのは誇りに思っています。昔と違って、今は「Q&A」みたいな曲を堂々とやれるんですよね。この曲をライヴでやったときに凄く気持ちを入れて出来る、こういうことを堂々とやれるのは進んだなぁと思います。

-「金田一耕助の帰還」みたいなゆったりしたダンス・ナンバーも新鮮ですね。

金田一耕助が超好きなんです。金田一耕助は高校の時に、市川 崑監督、石坂浩二さん主演の角川映画の金田一耕助を見て邦画の最高峰だと感動して、そっから小説も読むようになって。ずっとすっごい大好きで。毎回すっごい好きなものに対するラヴ・ソング枠を設けているんですけど。

-ああ、『ドアたち』で言う「MANGA」とか。

「MANGA」もそうだし、2ndもゼットン(※ウルトラマンに登場する怪獣)とかショベルカーの曲が入ってたりとか、好きなものにちゃんと毎度愛を捧げているので、今回は金田一耕助に。ダークなダンス・ナンバーっていうか、ただアッパーじゃなくて、チル・アウト出来るようなエレクトロ・ファンクが好きなんですけど、その謎めいた音のイメージが金田一耕助と重なると思ってて。歌詞には金田一耕助が解決した事件の名前がいっぱい入ってるんです。全ての文化は何か気付きとか、ポジティヴなエネルギーを与えてくれるものだと思ってるんですよね。いろんな文化と文化の間に扉があって、そこを行ったり来たりすることで凄く豊かになると思うんです。金田一耕助は映画と小説だけど、この音楽からそういうムードが届いてたらすごくいいですね。

-『Q&A』は何度も何度も繰り返し聴けるアルバムですしね。

それは嬉しいですね。今までのアルバムって結構、聴く時を選ぶものだったと思うんです。今回のアルバムって、日常のいろんな場面にオワリカラらしいちょっと謎めいた瞬間を与えてくれるのかなって。そういうのは凄く大事にしたいですよね。

-作品ごとにこれだけ変貌を遂げるとなると、次回作どうなっちゃうんでしょうね。

どうなっちゃうんでしょうねぇ……どうなってると思います? 超ポップになるとか(笑)。

-金髪になっちゃったりとか。

それはないです、絶対に(笑)。

-(笑)。でも本当に、自然と次への期待が湧き上がる、そういうアルバムだと思います。

そうですね。新章スタートな感じはあるので、この先はバンドの姿が消えても“いい曲だね”って言われるような曲が作れたらと思いますね。例えば井上陽水の「少年時代」は名曲で、井上陽水の曲かどうかって問題じゃないですよね。バンドの姿も消えていって、音楽だけが美しく残る。そんな圧倒的な力を持った曲が……50歳くらいには作れたらいいな(笑)。

-うーん、もう少し早くしませんか?(笑)

(笑)。ゆっくり段階を踏みたいかな。ハイ・ペースなマイ・ペースでいきたいと思ってます。