Japanese
オワリカラ
2012年05月号掲載
Member:タカハシ ヒョウリ(Vo&Gt)
Interviewer:沖 さやこ
-(笑)。
ただ、歌、言葉、リズムとか、曲ごとの主役がハッキリしてきた分、他の部分でむちゃくちゃなことをする必要がなくなったんですよね。主役をガッと神輿に乗せてあげればいい。今回は曲ごとのふくよかないいところを出してあげたいって気持ちがあったから。凄く変わった音というよりかは、ちゃんと伝わる音がいいなって。ちょっと寄り添ってるものというか。歌ってるものは明らかに非日常なんですけど(笑)、そういう日常の中のちょっとした疑問とか、ないしちょっとした気付いたこととか、そういうものが結びつくようなものだったらいいなと思いました。
-歌詞が逃避的だったり、新しい世界を歌ったものが多いのも印象的でした。
あー、なるほどなるほど。僕26なんですけど、ずっと同じものを信じて生きていくことは難しいなと思ったんです。去年も地震とか、いろんなことがあったりして。当然に思ってたこと、信じてたことは永遠ではないですよね。そうなったときに、そこを出て行ってもっとポジティヴな方向に進んでいこうっていう勇気……そういう生き方が素敵だなぁと思うし。どんなネガティヴな人が死ぬような映画でも、最終的には一歩踏み出す勇気や、ポジティヴな勇気を与えるっていうことが文化の素晴らしさだと思うんですよね。だからそういう表現になったのかもしれないです。
-意味深なフレーズも多いですしね。
ストレートじゃない表現が好きなんで。ただひとつの捉え方しかできないことはあんまりやれないんです。いろんな捉え方が出来る、自由さがあるものの深みが凄く好きで。そういうものは最初凄い、取っ付きづらいんですよね。目に触れる回数も少ないし。だけど1回好きになったときの中毒感は絶大で。子供の頃からそういうものが好きなんですよね。
-「夜戦ちゃん」は“ちゃん”が付いてるからユーモアとして成立しますが、なかなか怖い歌ですよね。コーラス・ワークが巧みで歌に入りこんじゃいますし。
結構怖いですよねぇ。コーラスや、ちょっとしたギミックはオワリカラと井上うにさんで考えるんですけど、とにかく井上さんはめちゃくちゃアイディアをたくさん出してくるんです。面白ければいいっていう、完全にオワリカラを遊び場としか考えていない感じなんで(笑)、これも試してあれも試して……。「夜戦ちゃん」のコーラスは“これ面白いよー”って爆笑しながら作業して(笑)。
-(笑)。今作に限らずどのアルバムも思わず笑ってしまうユーモアに富んでいるので、そういうのは意識してらっしゃるのかなって。
ああ、凄くありますね。完全にひとつ筋が通ってると、僕の中で逆に疑わしいなと思っちゃうんですよね。どっかがハズれてたり、どっかがハズれてたり、そういう微妙な感じが自分的な温度感に凄く合うというか。“どっかズレてんなこいつ”とか“ちょっとだけダサいぞ”っていうのが人間ぽくていいと思うんですよね。笑いながら泣いてるとか、空っぽだけど満たされてるとか。そういうのって、言葉ではなかなか表せないけど、音楽ではそういう感情を出せると思うんです。そういうものが信用できるんですよね。何でも疑わしいっていう気持ちが子供の頃からあるほうなので、割とどこでも居心地が悪いというか。でもその中にも“儚いけど凄くいいな”っていう瞬間とか、輝いてる瞬間は確実にあって。そういう一瞬一瞬が、信用できる感情って自分で思ってるんですけどね。
-言葉が何度もリフレインするところも特徴的でユーモラスだと思います。
詩と歌詞って全然違う存在で。完璧なものって歌詞としては良くないんです、言葉だけで成り立ってしまうから。そうじゃなくてリズムとか音楽とかと合わさった時、噛み合うだけの隙があるものっていうのが良くて。ひとつの言葉のリフレインっていうのは一種のリズムだから音楽のリズムを殺さないっていうか。アップ・テンポな曲では言葉のリズム感を大事にしてる……っていうとなんか頑張ってるみたいだけど(笑)、感覚としてそういうのはやってるんでしょうね。
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