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Japanese

あいみょん

2019年08月号掲載

あいみょん

ライター:石角 友香

サブスクリプション・サービスのトップ10に常時3~4曲がランクインしている状態が続くあいみょん。日常生活の中で普段音楽の話をしない知人とでも、"あいみょんのどの曲がどういう理由で最も好きか?"と話す機会も少なくない。中でも映像喚起力や、温度や湿度、空気感をぞくっとさせるほど思い出させる突出した歌詞の表現力に焦点があてられることが多い。そして世代を問わず日本人にとってのフォーク・ロックと呼べる親和性の高いコード進行や、メロディ・ラインを挙げる人も多い。

だが、シングルとしては8作目となる今回の「真夏の夜の匂いがする」の最大のトピックは、曲展開とジャンル感、サウンドやアレンジなのではないだろうか。いきなりサーカスチックというか、ロマ音楽的なマイナー・コードのアコギのカッティングで始まりつつも、懐かしのリズム・マシン、TR-808のような音も聴こえる。リズミカルに歌詞を乗せたかと思えば、ガラッと壮大なラインが入り、サビではビートこそ平歌と同じでありつつも、広い世界にパーン! と開かれるような、エモーショナルなロックのアレンジと突き抜けるようなヴォーカルへと飛翔。歌詞の意味を堪能する間もなく翻弄される。ひと回り目は"え?"とか"おー、そうくるか!"とか驚いている間に曲が終わるほどだ。今回もサウンド・プロデュースとアレンジは田中ユウスケ(agehasprings)だ。彼は今回、架空のサーカス感とほんのりサイコビリーめいた感覚をおなじみ八橋義幸(Gt)に加え、みどりん(Dr/SOIL & "PIMP" SESSIONS)、高桑 圭(Ba/Curly Giraffe/HONESTY)という、ロック、ソウル、ファンク、時にジャズも昇華できる面々を召喚し、これまでの令和歌謡的なあいみょんのフォーク・ロックに、よりコアな音楽好きがその細部をディグる楽しみを加味した印象を持った。もちろん、それはあいみょんの歌詞と曲ありきなのだろうが、何度か聴いてもいい裏切りに合う感覚が、最新型のあいみょんを体現している。そして"そのいい意味で裏切られる感覚の発端はなんなのだろう?"と歌詞をじっくり聴くと、サビが象徴的だった。"天国か地獄か/分からない道を行こう"とか、"簡単じゃないからハマっていくんだろう/恋も金もこの人生も"、とか、アンビバレンツに溢れている。タイトルから夏の恋を連想するのもアリだが、真冬に比べると真夏の夜は外の空気を体感しているケースが多いだろう。怖いけど見たい、知りたい。そして実際外に出る――そのざわつく感じを"真夏の夜の匂い"と解釈すると、今がリアルに立ち上がるのではないか。

サウンドやアレンジの実験はカップリングの「テレパしい」にも顕著で、こちらは関口シンゴがサウンド・プロデュースとすべての演奏を担当。あいみょんが素直に歌うフォーク・ロック調の歌とメロディを、JACKSON 5っぽい親しみやすいソウルの色づけで仕上げているあたり、テレパシーで通じ合えるふたりでもありたいけれど、言葉でも伝わることはあると気づく男性目線の歌詞を軽やかに聴かせることに成功している。

2曲ともあいみょんのヴォーカリストとしての自由度、歌の表情の多彩さがさらに増してきた今だからこそ、可能になった音楽的なチャレンジだと受け取れる。

最近は、菅田将暉の2ndアルバム『LOVE』に収録されている「キスだけで feat. あいみょん」で、曲提供のみならず、デュエットも披露。この曲に関する菅田のインタビューで、"エピソードを一瞬で解釈し、凄まじいスピード感で歌詞に打ち込んでいったことに芸術家としてのすごみを感じた"というくだりがあった。一瞬一秒、感じたことを曲に変換すること自体が生命活動のような彼女らしいエピソードである。10月11日公開の新作映画"空の青さを知る人よ"の主題歌を担当していることも合わせ、今年後半の動向から目が離せない。


▼リリース情報
あいみょん
8thシングル
『真夏の夜の匂いがする』

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[WARNER MUSIC JAPAN/unBORDE]
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1. 真夏の夜の匂いがする ※TBSドラマ"Heaven?~ご苦楽レストラン~"主題歌
2. テレパしい
3. 真夏の夜の匂いがする (Instrumental)

配信はこちら

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