Japanese
あいみょん
Skream! マガジン 2021年02月号掲載
2020.12.13 @さいたまスーパーアリーナ
Writer 石角 友香 Photo by 永峰拓也
11月30日、12月1日の大阪城ホール2デイズからスタートしたツアーを折り返し、自己最大キャパとなるさいたまスーパーアリーナ2デイズに臨んだあいみょん。目の前にいる生きた対象へ表現を届ける喜び、作品を重ねてさらに多彩になった楽曲、歌の主人公の生々しさ、そしてバンドと深化したアンサンブルを聴かせるミュージシャンとしてのあり様。すべてがこれまでを上回る渾身の2時間半だった。筆者はオンラインで視聴したのだが、それでも溢れんばかりの熱量に気圧されたほどだ。
ライヴは新作『おいしいパスタがあると聞いて』と同じく、「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」でスタート。カントリー・テイストのバンド・アレンジに自然とクラップが起きる。オーディエンスの存在があいみょんの声に力を注ぎ込み、続くは笑顔での「ハルノヒ」。目尻を跳ね上げたアイラインにシースルーのトップス、少し短くしたヘアスタイルが大人っぽい。「満月の夜なら」では、タフな16ビートで始まり、ラップっぽいノリもあるフローでヴォーカルを楽しませ、サビの"溶かして 燃やして"の前ではダンスを誘発するように右手を上げる。しなやかなバンドのグルーヴが心地いい。最初のMCでは天井近くまで客席がある広いこの会場で前日もドキドキしながら臨んだけれど、もう1日あると思うと嬉しくなったと言い、"みんなが声、出せれへんぶん、私が一生懸命歌います。今日はめちゃめちゃいい夜にしよう!"と、自分自身も鼓舞しているようだった。
一気に場を掌握したのは貪欲にこの命を生き切る「どうせ死ぬなら」。序盤から覚悟の決まったこの曲で彼女の心拍が伝わるよう。迫力に圧倒されていると、一転、「ふたりの世界」ではライヴでお馴染みの"まだ眠たくないの"に続くワードを会場全体で、もちろん声に出さないていで言うことを試したいと、ベースの井嶋啓介に見本を強要。ここで成人式をしたというさいたま出身の井嶋がいじられる場面に爆笑が起こる。ほぼ無言の囁きのような"セックス"の唱和もシュールでおかしかった。幸せなムードになったあとには左右に身体を揺らしながら楽しそうにギターを弾き、ピュアなだけじゃない恋愛のリアルに射抜かれる「シガレット」。さらには赤いレーザーと液体アートが情念を演出する「マトリョーシカ」。少し昭和歌謡的な懐かしさが女性の矛盾する思いをさらに立体的に届ける。1曲入魂のヴォーカルのせいもあるが、見事なまでに各々異なる女性像を見せるメンタルの強さにも驚かされた。ライヴを楽しむのはもちろん、これまで以上に曲ごとに残る印象が強烈なのだ。
オーディエンスに向かって、家族で来た人、友達同士、ひとり、カップル、ご夫婦など、質問するお馴染みのやりとりに続いて、11月30日にメジャー・デビュー4周年を迎えたことを改めて報告。"上京した頃は日当たりの悪い部屋でいつか誰かが認めてくれるって、無意識に手にとったオムニバスのレコードを飾ったとき、「自分は何してるんやろ」と思ったとき、できた曲です"と、背景を話して「風のささやき」へ。自分の居場所を模索していた頃の心情は今も刺さる。様々な時期からの選曲だが、今回は赤裸々な曲が多いというか、面と向かって歌うならこれだろうという曲が続く気がした。そこからの「裸の心」のまさにネイキッドさ。スタンド・マイクを右手で掴み、その右手を左手でしっかり掴む。その仕草が歌と相まって心に迫る。しかも熱唱と言うより、心をそのまま差し出すような歌い方。自ずと涙が溢れるが、ライヴだとさらに血が通い、温度が増す。
あいみょんのアコギ1本での弾き語りが「憧れてきたんだ」、「from 四階の角部屋」と続く。敬愛しているからこそ、その対象への挑発的な前者、言わばダメ恋のやさぐれた後者。歌のテーマは全然違うけれど、主体は同じだ。人間らしい生々しさを潔い演奏でスパッと披露する彼女のスタイルが際立った。
今回は5人のバンド・メンバーとともに作り上げていることもあり、楽器も多彩なので違ったアレンジでも聴いてもらえると思って、とアコースティック且つパーカッションやシンセを生かしたライヴ・アレンジで「ポプリの葉」と「二人だけの国」を披露。八橋義幸のアコギでシンプルに聴かせる「ポプリの葉」では香りと記憶の分かち難い関係を、「二人だけの国」ではお経チックなこの曲をASA-CHANGのタブラや金物で、よりジャンルがよくわからないアレンジに仕上げ、より逃避的なニュアンスを表現して見せた。
八橋のアコギのスライド・ギターで聴かせた「チカ」は、あいみょんを含む3本のギターのアンサンブルが豊か。続く「朝陽」もそうだが、ボロボロになっても愛し愛されるということを希求してやまない業のようなものが、さりとてウェットになることなく表現される。「朝陽」の歌詞の中の"痛い"が文字で投影されると、そうして心も身体も傷を負わなければいられないのは生きている確認作業なのかも、と思う。視覚に訴える演出が心を揺さぶる。
ドラムとベースのセッションから始まったファンク・テイストの「愛を伝えたいだとか」の熟練、あいみょんの弾くアコギがよく聴こえる「マリーゴールド」。まっすぐな歌唱はさらに安定感を増していた。この曲でオーディエンスが腕を左右に振る様を見ると泣きそうになると告白したのち、今回はこの日だけのプレミアムな試みを紹介。そう、ホーン隊が参加しての新曲「スーパーガール」の初披露だ。レア・グルーヴ調で踊れるこの曲。「愛を伝えたいだとか」が好きなあいみょんファンには待望のナンバーなのでは。男性目線の歌詞で彼女のことを"スーパーガール 今や僕を/支配しているんだぜ/知らなかったろ"の"知らなかったろ"が抜群にクール。続いて「真夏の夜の匂いがする」もホーン隊バージョンでドラマチックにフル・バージョンアップ。見事なエンディングにモニター越しに思わず拍手してしまった。
音楽的に楽しい試行を展開してきたこの日。後半はユーモラスでエロい「マシマロ」、マイクを手に広いステージの両袖に走る「夢追いベンガル」はエンディングで座り込むほど。ロック・ヒーローというのはジャンルじゃなくて佇まいだよなと思わせたあと、「君はロックを聴かない」を配するなんて最高だ。さらに「漂白」で、恋すること、それは対象が人でもなんでも、どれだけ命を燃やせるか? 自分を賭けれるか? について染み込ませるように歌う彼女。一曲一曲の印象が強くなり、歌詞世界に没入できるようになったのはライヴの流れもあるだろうし、よりライヴ・メンバーがバンドになったからではないだろうか。
"嬉しかったこのさいたまの2日間を間もなく終えるんですけど、ますますシンガー・ソングライターになれた気がします。自信がついたというか。自信がなかったわけじゃないけど、こうやってみんなに語り掛けて歌うことでそう思えた。ほんまにありがとう!"と率直な感想を述べて、分厚いバンド・サウンドの「さよならの今日に」をついさっきまで爆発的なテンションで歌っていた人と同一人物と思えないような、自分を俯瞰するような声で歌い上げていった。自分はどう生きていくのか。きっとこれからもハッとするような瞬間や、蠢く感情を丹念に言葉にしていくことがあいみょんの表現者、そして人間としての醍醐味だろう。
ラスト・ナンバーが弾き語りによる「そんな風に生きている」だったのはまさに彼女のスタンスの表明だろう。柳に風と言った歌詞の内容とメロディ。強かさとずるさは紙一重。でもどうにでもして生きていくというニュアンスのこの曲はアンニュイ且つ堂に入っている。新作の1曲目とラスト・ナンバーで様々な時代のレパートリーを挟んで構成したセットリストも見事だったし、なんと言ってもリアル・ライヴで久々にファンに再会したこのツアーへの喜びがストレートに反映されていた。渾身という言葉がハマる2時間半。ライヴ・パフォーマー あいみょんの底力を見た。
[Setlist]
1. 黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を
2. ハルノヒ
3. 満月の夜なら
4. どうせ死ぬなら
5. ふたりの世界
6. シガレット
7. マトリョーシカ
8. 風のささやき
9. 裸の心
10. 憧れてきたんだ
11. from 四階の角部屋
12. ポプリの葉
13. 二人だけの国14. チカ
15. 朝陽
16. 愛を伝えたいだとか
17. マリーゴールド
18. スーパーガール
19. 真夏の夜の匂いがする
20. マシマロ
21. 夢追いベンガル
22. 君はロックを聴かない
23. 漂白
24. さよならの今日に
25. そんな風に生きている
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