Japanese
PENGUIN RESEARCH
2019年06月号掲載
Writer 沖 さやこ
"敗者復活戦自由形"、"近日公開第二章"など、近年のPENGUIN RESEARCHは楽曲タイトルからも強い志気が溢れているものが多いが、今作『決闘』は表題曲もc/w曲「逆襲」もたった2文字。この単刀直入なタイトルを掲げるところにもバンドが真っ向勝負を挑む覚悟を感じる。
「決闘」はTVアニメ"ゾイドワイルド"の第4クール・オープニング・テーマ。同作品とは『WILD BLUE / 少年の僕へ』(2018年リリースの両A面シングル)から二度目のタッグとなる。PENGUIN RESEARCHの代表的な持ち味として、5人の音色が縦横無尽に飛び回るような展開の多いサウンドスケープと、堀江晶太(Ba)の作る2010年代J-ROCK的なキャッチーなメロディが挙げられるが、同曲ではそれをメタルやハード・ロック、ヒップホップのテイストとパズルのように組み合わせ、バンドなりのアウトプット方法で形にしている。
「決闘」がこれまでの楽曲と異なるのは、アッパーでありながらもクールでシリアスな空気感を持っていること。それはがむしゃらに体当たりするというよりは、不敵な笑みを浮かべて虎視眈々と獲物を仕留めるような余裕に近い。熱量を爆発させるのでなく引いたアプローチも巧みに盛り込んだ生田鷹司のヴォーカルも含めて、まさにゾーンに入っている状態を音に昇華したという様子である。
だが歌詞を見てみると"敗北に甘えすぎた 俺"や"ダセえままの俺"、"こんな馬鹿な俺"など、やはり楽曲の主人公は弱者だ。1stフル・アルバム『敗者復活戦自由形』のインタビュー時(※2017年3月号掲載)、堀江は敗者にスポットを当てた理由を"自分が負け組だから"と言い切った。そしてそのあと"ずっと勝ち続けている人なんていないと思う。人は悔しい想いをしたときに自分自身のことに気づく。そこから諦めるのか、逃げるのか、逃げたあとに戻ってくるのか――失敗をすることでリトライするんだろうなと思っていて。自分はそういうことを経験したうえで、「負けてられっか!」と思って生きている"と続けた。「決闘」だけでなく「逆襲」にもそのマインドは根づいているだろう。
そんな"敗者"も様々な経験を経ると同時に、「決闘」の歌詞にもあるように"みじめなもんさ"という卑屈も見せながらも、"勝ち慣れた奴には 見えない景色がある"など新たな気づきや人生哲学を得てきた。特に2018年は日比谷野外大音楽堂単独公演や野外フェスなどの大きな会場から、古巣である新代田FEVERなど、様々な環境でライヴを行っているため、バンドのメンタリティや目指す場所がより明確に見えてきたのではないだろうか。堀江が過去に"ライヴをすることで受け入れられるようになった"と語っていたシンガロング・パートも、過去最高に力強く鳴り響く。それはライヴの画が浮かんでくるだけでなく、観客やリスナーの存在がバンドを強くしていることを彷彿とさせた。
そしてもともと日本語を英語のようにハメていく譜割りを作ることが多い堀江が、ラップを取り入れることも自然な流れだ。それでいて本格的なラップではないがゆえに、曲中でもラップ・パートがユーモラスに響く。特に「逆襲」はスタジアム・ロック的な表打ちの縦ノリのリズムに、跳ねる語感が乗るのも心地いい。メッセージ性を持った言葉を、リズムを重視した歌唱で届けていく手法は、PENGUIN RESEARCHにとっても生田にとっても新境地だが、ラップを取り入れるのと同様にここに辿り着くことも必然だっただろう。
2曲共リズム隊もギターの音色もヘヴィなアプローチのため、浮足立った様子は微塵もない。逆境から生まれた底力を感じさせる「決闘」と「逆襲」は、間違いなく今後のライヴにおいて、そしてバンドの歴史においても大きなキーになるはずだ。
▼リリース情報
PENGUIN RESEARCH
ニュー・シングル
『決闘』
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【通常盤】(CD)
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TOWER RECORDS
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[CD] ※共通
1. 決闘 ※TVアニメ『ゾイドワイルド』第4クールオープニングテーマ
2. 逆襲
3. boyhood (Live at TSUTAYA O-EAST "Penguin Go a Road 2018-19")
[DVD] ※初回生産限定盤のみ
1. 決闘 (Music Video)
Live at TSUTAYA O-EAST "Penguin Go a Road 2018-19"
2. 方位磁針
3. songwriter
4. シニバショダンス
CDジャケット:Designed by 金田遼平
■「決闘」先行配信中
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