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LIVE REPORT

Japanese

PENGUIN RESEARCH

Skream! マガジン 2021年09月号掲載

2021.08.20 @川崎CLUB CITTA'

Writer 蜂須賀 ちなみ Photo by Viola Kam (V'z Twinkle) @vizkage

ワンマンとしては、2019年8月の横浜文化体育館公演以来約2年ぶり。ワンマン以外のイベントも含めてもライヴ自体が約7ヶ月ぶり。PENGUIN RESEARCHがステージに立つ姿を観るのは本当に久々だった。開演と同時に立ち上がる観客はこの日を待ちわびていた様子だし、一度ステージ前方に立ってからスタンバイしたメンバー5人も、それぞれに感慨を噛み締めているように見える。"ご機嫌麗しゅう、みなさん。元気してた? 今日は最後まで楽しんでこうぜ!"と投げ掛けたのは、もちろん生田鷹司(Vo)。そして「嘘まみれの街で」が再会を祝すように鳴らされた。

積み重なった時間をイメージするとき、私は氷のような物体を想像する。2年という月日は決して短くはなく、ステージとフロアの間にそびえる氷の壁はきっと厚い。しかし、ブランクを感じさせないバンド・サウンド、それを浴びて拳を上げる観客の熱で、氷は一瞬で溶けていく。会えなかった時間が一瞬で埋まっていく。ガイドラインを守りながらのライヴであるため、観客は歌えないし、シンガロングは当然起こらない。しかしシンガロングが聞こえた気がしたのは、私たち自身がその光景を求め、頭の中で思い描いていたからであろう。また、コロナ禍以前と同じように、各曲のフレーズを観客に託すメンバーの姿からは、ファンに対する変わらない信頼が読み取れた。

冒頭3曲を終えたところで"いつも以上に全力でやるので、ぜひみなさんも、俺らに負けないくらい全力で楽しんでいってください!"と生田。ここで、2020年4月に配信リリースされたものの、まだライヴで演奏されたことがなかった「キリフダ」を披露。また、柴﨑洋輔(Key)の旋律から「八月の流星」に繋げる季節感満載の選曲もあった。さらに6曲目には、この日のために作ってきたという新曲「SUNNY RAIN」を初披露。ちなみにコンポーザーの堀江晶太(Ba)はタイアップやリリースなどの機会がないと新曲を作らないタイプらしく、今回のように、ライヴのために新曲を作るケースは珍しいそうだ。そして「SUNNY RAIN」、サビこそストレートな疾走感があるが、リズムを噛み合わせつつ、転調とともにどんどん展開していく構成がこれまでになく新しい。後のMCいわく、新保恵大(Dr)はこの曲を聴いたとき、"晶太君、こんな一面があるんだと感じた"そうだが、演奏終了後の拍手の長さから考えるに、おそらく同じことを感じた観客も多かったのではないだろうか。

神田ジョン(Gt)がチョーキングとともに"お前ら会いたかったぞー!"と叫び、ライヴはクライマックスへ。ソロ回しがあった「SUPERCHARGER」では、メンバーのプレイに乗って生田が楽しそうに身体を揺らし、最後には自身もスキャットしてみせる。「敗者復活戦自由形」では、観客のヘドバンでフロアが大きく波打つ。極めつけは「決闘」、「近日公開第二章」、「HATENA」の3連投だ。ラストの「boyhood」を演奏する前には、生田が"生きていて楽しいと思える瞬間があれば、明日も生きていこうかなって気持ちになれる。またここで一緒に遊びましょう"とライヴ・タイトル"have fun!"に込めた想いを語る。最後の最後まで楽器を鳴らしまくる5人の姿からは、まだステージを去りたくないという名残惜しさ、今現在の充実感、そして未来への願いが滲み出ていた。時間にして1時間程度。昼夜2部制につき普段のワンマンより曲数は少なかったものの、かつてなく特濃だったライヴ。メンバーがステージを去ったあと、影アナが終演を告げると、フロアからは温かな拍手が起こったのだった。


[Setlist]
1. 嘘まみれの街で
2. バケモノダイバー
3. シニバショダンス
4. キリフダ
5. 八月の流星
6. SUNNY RAIN(新曲)
7. SUPERCHARGER
8. 敗者復活戦自由形
9. 決闘
10. 近日公開第二章
11. HATENA
12. boyhood

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