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INTERVIEW

Japanese

植田真梨恵

2016年07月号掲載

植田真梨恵

Interviewer:石角 友香

今年は春フェスなど、さらにロック・フィールドにも自由奔放で芯のある歌と音楽を届け、新たなリスナーを獲得している最中の植田真梨恵。前作『スペクタクル』がチャート上位にランクインする中、夏フェス映えしそうなアップ・チューン「ふれたら消えてしまう」を表題曲に据えたシングルを7月6日にリリースする。ラフなバンド・サウンドと、そこで歌われる音楽ならではの一瞬の魔法を愛しく、儚く浮かび上がらせるリリック。掴めないけれど確かにある気持ち――彼女ならではの世界観をますます色濃くするこのシングルについて訊いた。

-今作の表題曲「ふれたら消えてしまう」(Track.1)は何かテーマを持って作った曲なんですか?

いや、ただ"夏の野外でやったら気持ち良さそうな曲書こっかな~"と思いながら、内容に関しては何も考えず書き始めました。

-シンガー・ソングライターの曲をバンド・アレンジしたというよりは、バンド感のある仕上がりだなぁと思ったんです。バンド・サウンドであることに意義があるというか。インディーズ時代のアレンジャーの方と一緒にやっていらっしゃいますが何か意図はありました?

本当にただメロディに引っ張られてできていった曲だったので、それがシングルになったことが嬉しかったですね。いつもはやっぱり、楽曲によって"どのようにアレンジしていくのが合うか"ということを考えるのですが、この曲に関しては何も考えずにただ音楽を作って、その世界観をひたすら詰めていくってことに没頭していたインディーズ時代の雰囲気が出るといいなと思って。それで、久しぶりにアレンジを岡崎健さん(※インディーズ時代の作品にてアレンジを担当)にお願いしました。メジャー・デビュー以降、アレンジやディレクションなどかなり責任を持って自分でやっていくことが多かったので、それらを経験してから、再び岡崎さんと一緒にやるというのは、当時の感覚とは違ったり、懐かしかったりしてよかったです。あと今回、シングルを作るにあたって"ギターがメインになるような曲が揃ったシングルにできたらいいなぁ"となんとなく思っていたので、ギタリストでもある岡崎さんとしっかりギターのフレーズを詰めて、"弾いていて楽しい曲にしたい"という考えもありましたね。

-セルフ・プロデュースも経験したうえで、今はいい意味で肩の力が抜けた感じですか?

そうですね。もう純粋に"売れる/売れない"とか"売りやすい!"とかは関係なく、今抱えてる思いがそのまま歌詞になって、曲としてできあがっているものなんです。音楽として3、4分の中で描けるものを描いたという感覚が強かったので、そういうふうに作った曲が表題曲としてリリースされることがすごく大事だし、取り組み方としてはある意味ラフだったのかもしれないです。

-今回のシングルが"ふれたら消えてしまう"ってタイトルだと知ったときに、"恋愛がテーマなのかな?"と想像したんです。でも実はそういう何かについて直接的な歌詞じゃなかったんだなと曲を聴いてわかりました。

そうなんです。新しいギターを買って、弾いて、それにメロディが引っ張られて、作っててすごく楽しかったんですよ。みんなで歌えるような雰囲気のメロディもしっかり意識したいなと思いながらも、なんかもう正直何も考えてなくて、最後の"ふれたら消えるのか"の部分もメロディに引っ張られて出てきた言葉なので、自分自身"そう思ってたんだ?"って思うことの方が多かったですね。毎回そうなんですけど、リリースした曲に、自分の状況がどんどん追いついていくような感じがするんです。最近だと『スペクタクル』(2016年1月リリースの4thシングル)もそうでした。今、『ふれたら消えてしまう』がもうすぐ発売というときに(※取材日は5月31日)、私自身この曲ができたとき以上に"ふれたら消えてしまう"ということを実感してるんです。それが毎回すごく不思議だなぁと思っています。

-"時間は消えてしまう"ということを、まさに「ふれたら消えてしまう」で歌っているのですね。

ピークが一瞬で消えていく感じとか、実感したり意識したりする時点でその内容の性質が変わっちゃう感じとか、それがすごく愛おしいし悲しいと思うので。

-何も考えずに書き始めた曲かもしれないですけど、歌詞を書いてる途中で"私はこういうことを書こうとしてるんだ"とどこかの段階で思いましたか?

どこかの段階で思ったかといえば、一番意識があったのは2Aですね。2Aの死んでしまった人の歌を聴いてる感じ。

-"ヘッドフォンの奥から蘇る これはだあれ/(すでにこの世にはいない)英雄の息遣い"から始まるヴァースですね。

なんだろう。一番"こんなことを書きたい"という意識が働いてるかもしれないです。

-最近、今はいない人に関して考えることが多いですね。今年、亡くなった人も多いし。

でも音楽をやってる人に関しては、ずっと音楽をやって生きていて、その人の音楽がいろんな人に届いてみんなの心の中で大事なものになっていって、そうなることでその人は生かされているわけで。それでみんなが"ライヴを観に行きたいな"と思って、実際にその人がいる場所に行って曲を聴いたりするじゃないですか。その時間や場所はそこにしかなくて、すっごく価値があることだから、みんなお金を払ってライヴに行くと思うんです。だけど、もしその音楽をやって生きている人が亡くなってしまったとき、その存在感が、よりお客さんの心に近くなるというか。形を失ってしまったからこそ余計にそばにあるような気がして。この言葉が正しいかどうかわからないですが、たぶん、音楽をやって生きていた人が、レベルアップして"音楽"になったんじゃないかって。だからそれがすごくカッコいいことだなと思うし、憧れというか、私も、すべてを音楽に費やして生きて"音楽"になれたらすっごくいいなと思いました。

-あぁ、なるほど。そして植田さんが今回この曲の歌入れをした日は......。

hideさんと忌野清志郎さんの命日で、たまたま5月2日だったんです。もし私がいなくなったとしても、この曲を知ってる人は何人かいるかもしれないなと思って歌ったので、なるべく修正せずにそのままの形で、普通に聴いてもらいたいなぁって意識がすごく強くありました。それをエンジニアさんにも伝えて作っていきましたね。

-歌入れの日がそういう日だとリンクしちゃいますね。

たまたまこの歌詞だったから余計にそうだったんですけどね。(hideや忌野清志郎のような存在に)やっぱりすごく憧れるので。私もなれるチャンスを持っているというか、自分が作った音楽を人に届けていくことができる立場にいるので、だったらそのすべてを残していきたいなとすごく思います。

-表現をする人としての心構えというか、そういう歌にも聴こえてきます。

たしかにそうですね。結局、細かく説明することがすごく難しくて、なかなか伝わらないことなので。だからその曲ができて素敵な感じで残っていって、みなさんの解釈でなんとなくリンクする部分があれば、すごく素敵だなと思うし。それはたぶん歌にしかないものだなと思いますね。

-植田さんはずっとそういうふうに作ってきたと思いますが、全部音楽にしてしまおうという決意が定まると、より説明がしづらい曲になっていくんだろうなと。

(笑)そうでしょうね。本当にそうだと思います。"こんな人に届けたくて"ということがどんどんなくなっていくのかなと思います。

-だからこの曲も、夏を楽しみにしてる感じが出ている明るい曲であると同時に、意識していなかった"音楽"を急に意識し始めて、それも瞬間で忘れてしまったりする儚さも感じるし。でも"感じる"以上は説明していない曲だし。

いつ何時も......思い出せば歌えるような、でも形がないところが歌の素敵なところだなと。それがすごく優しいし、いいなぁと思うので、いっぱい歌を作りたいですね。