Japanese
植田真梨恵
2016年10月号掲載
Interviewer:石角 友香
早くも6枚目のシングル『夢のパレード』をリリースする植田真梨恵。前作『ふれたら消えてしまう』から繫がる、その瞬間にしか感じられないことの尊さや、季節の変わり目の匂い、それに伴う生き物としての喜びも悲しみも高い抽象度のまま凝縮されている。まさに今を生き、今を生きていることをそのまま音楽に昇華する最近の彼女のソングライターとしての純度の高さ、そしてそれを果てしなく遠くまで放つ声の力。今回のインタビューは、とても濃い経験をしたという今年の夏の話からスタートした。
-植田さんの今年の夏はどんな感じでしたか?
不思議な夏でしたね。憧れの人にたくさん会えましたし、いいことも嫌なこともいっぱい起こった夏だったので。生まれて25年間生きてきて"あ~、こんな夏があるんだな"って、"ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016"で吉井(和哉/THE YELLOW MONKEY)さんと一緒の日に出演したり、中村一義さんなど大好きな人たちにお会いしたりして、"夢みたいな人たちが実在するんだな"と思った夏でした。
-フェスで初めて植田さんのライヴを見た人も多かったと思います。
そうですね。実際、ライヴ中に聞いてみたら半分以上が初めましての人だったので、そういう人たちに向かって私が届けられることはひたすら歌う姿勢というか、"あー!"って歌ってるだけでヤバいぐらいの気持ちで届けていくことしか今の私にはできないなと思って。そういうことをすごく感じたので、歌が大事だなとひたすら思いました。
-それって歌とか歌詞とかバンド・サウンドが、というより自分の存在を投げかける感じですか?自分自身がそこで一番発揮できることというか。例えばそこに外国の方がいたとしても、歌詞が風になびいて全然聞き取れなかったとしても、とにかく私が誰にも話さないようなことを神様にだけ伝えるようなつもりでライヴをすれば、その人たちに届くかもしれないと思って。そう歌うようになりました。
-そういう感触を得られるのって、モノを作って表現する人の一番の醍醐味なのかなと思います。
そうですね。毎回、音楽が好きになっていってるってお話ししているんですけど、その気持ちがより強くなってますね。自分が書いて歌うことしかできないですし、書いている意味とか、そういうものに気づかされるタイミングがありますね。
-そういったことは、むしろ知らない人がいる場所で歌うことで気づいたり?
というより、ホントに今の私にできる最善のことをしようとすると、他に何もできないから歌うしかないなっていう感じが強いですね。
-経験できるときに経験すると鍛えられている感じがしませんか?
します(笑)。自分が"そもそもひとりだよな"ということとか、それを前提としているモノとの向き合い方が変わるというか。自分のチームもお客さんも含めて、すぐそばにいてくれている感覚もあるし、もちろんありがたいんですけど、大前提としては他人だし、100パーセントは理解し合えないので。そこに向き合っていくことの大切さみたいなことを感じてますね。
-濃い夏だったということはよくわかりました。さて、ちょうど今日9月になって(※取材日は9月1日)、「夢のパレード」(Track.1)がめちゃくちゃハマることに気づきました(笑)。
おぉ(笑)!
-どういうところから生まれてきた曲ですか?
メジャーに進出してからは、なるべくわかりやすい曲やテーマのはっきりした曲を書きたいなって気持ちがあって。ただ、そういうふうにポップなものを描く前に、より自分の気持ちに一番近いモノを駄文でいいから準備体操みたいに書いてアウトプットしていたんです。新しい曲を家で作るときアコギを使うんですけど、弾きながら小さい声で歌ってたら、すごく悲しくなってしまって。その流れで「夢のパレード」はすぐできあがりました。小さい声で録ったデモを自分で繰り返し聴いてて、すごく好きな曲になったんですね。で、レーベルにこれをお渡ししたら"これがシングルでもいいね"って話になって。結構びっくりしたんですけどね(笑)。「夢のパレード」は気持ちがとってもこもってる曲なのでみなさんに届くといいなぁと思いながらパッケージ制作に向かいました。
-なんで悲しかったんですかね?
ちゃんと説明しようとすればするほどわからなくて。特にこの曲は未だに自分が何を歌いたかったのか、抽象的すぎて全然わかんないんですよね(笑)。なので、MVを作るにしても写真を撮るにしても、何をテーマに作っていったらいいのかわからなくて。でも、ただひたすら思うのは、子供のころに見た怖い夢とか、"嫌だったな"って感じた体験とか、そういうトラウマみたいなものを思わせる部分と繫がってる曲なのかなと。そんな気がしています。
-ふとしたときに思い出すようなこと?
"嫌だな"と思うようなことって、成長する過程でも大人になっても出会うもので。それこそ、ネガティヴやポジティヴという言葉では語れないんですけど。自分が作り出す曲の中で何を歌っているのか一番わからない曲です(笑)。
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