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INTERVIEW

Japanese

GLIM SPANKY

GLIM SPANKY

Member:松尾 レミ(Vo/Gt) 亀本 寛貴(Gt)

Interviewer:山口 哲生

メロディが美しい以上にリズムが気持ちいいほうがポップだし、キャッチーなんですよ


-先ほど、ギターは一番こだわってないとおっしゃってましたけど、めちゃくちゃこだわってますよね(笑)。

松尾&亀本:はははははははは(笑)!

亀本:そうか! めちゃめちゃこだわってたのか(笑)!

松尾:そうだよ(笑)。

-「真昼の幽霊(Interlude)」と、そこから繋がる「Summer Letter」は松尾さんが作曲されていて。サイケ感があって、美しくて心地よかったです。

松尾:「真昼の幽霊」は家で録ったデモ音源なんですよ。本当は録り直す予定だったんですけど、「Summer Letter」を先に録音しないといけなくなって、録るときにスタジオで急遽キーを変えたんです。この2曲のキーが違うのはそれが理由なんですけど、でもキーが変わったことによって、ただ繋がっているだけじゃなく、そこに景色が生まれて。

亀本:そうね。

松尾:そこは偶然の産物ではあるんですけど、自分の好きなアコギのスタイルを存分に演奏できたかなと思ってます。

-作る際にイメージみたいなものはあったんですか? それこそ景色みたいなものとか。

松尾:この曲は3~4年......いや、もっと前か。『LOOKING FOR THE MAGIC』(2018年リリースの4thアルバム)を作っていたときに、「真昼の幽霊」という曲を作っていたんです。

亀本:そのときから構想があったんだ!?

松尾:本当は、タイトル曲の「Looking For The Magic」を「真昼の幽霊」にする予定だったの。だけど違う歌詞が出てきたから、それは「Looking For The Magic」にしたんだけど、あの曲はDADGADチューニングっていう変則チューニングなんですよ。今回のアルバムに入っている「真昼の幽霊」は、それとは違う変則チューニングにしているんですけど。だから私としては"変速チューニングで「真昼の幽霊」という曲を作りたい"っていう構想がずっとあったんですよね(笑)。

-なるほど(笑)。

松尾:この曲のイメージは、田舎の街の平日のお昼頃なんですけど、その時間帯ってみんなお昼ご飯を食べているから、外に人がいなくなるんですよ。人も車もあんまりいないんだけど、給食の匂いとか、パンの焼ける匂いとかがしてきて。それが、なんか人がいるようでいない感じがして、人の残像というか、それこそ"真昼の亡霊"みたいな感じがあって。あの瞬間がすごく好きだったから、あの景色を音楽にしたいなってずっと思っていたんです。

-それでこの幻想的な雰囲気になったと。

松尾:あと曲を作っているときに、たまたま"君の名前で僕を呼んで"という映画を観たんですけど、舞台がイタリアの田舎町だったんです。その映画に、周りに人はいるんだけど、日差しが強くて、自分と友達だけの空間みたいに感じるというか、まるで自分たちだけの世界になるようなシーンがあって。これは前に作りたいと思っていた「真昼の幽霊」の世界観に似てるなと思って、その映画にもインスピレーションを受けつつ言葉を書いていたら、ちょっと遠くに住んでいる友達から実際に手紙が届いたんです(笑)。

-すごい偶然(笑)。

松尾:そうやっていろんな偶然がリンクしていったんですよ。それで、本当は「Summer Letter」を「真昼の幽霊」にしたかったんですけど、また違う歌詞が乗ったので(笑)、イントロにしようと思っていたところにずっと付けたかった"真昼の幽霊"というタイトルを付けて、5曲目と6曲目に分けたという流れです。ちょっと歴史がいろいろあって、説明が難しいんですけど(笑)。

-そして、冒頭で少し話題に出ました「Innocent Eyes」は、まさに"ザ・アンセム"という感じで。

亀本:この曲は、もともと某男性グループのコンペに出した曲なんですよ。リファレンス的にも、広くて、デカくて、バーン! みたいな感じだったんですけど(笑)。ただ、そういうポップスを自分らがやっても、もっとうまくできる人が他にいるので。だからそこはさっきの話と同じく、ルーツ・ミュージック感を足すというところで、ちょっとカントリーライクなアコギとかを入れたりして。で、そこに松尾さんのメロディと歌詞をつけたんですけど。

松尾:それをそのまま放置していたんですよ。ほぼフル・コーラス作ってたよね?

亀本:そうだね。コンペってA、B、サビを作ってワンコーラスで提出するパターンが多いような気もするんですけど、でも邦楽って1番のあとに2番のA、B、サビが来て、そのあとにちょっと違うメロディが来て、最後にまたサビに戻るっていうパターンがあるじゃないですか。そのときのコンペは、それもくっつけて作ってくださいっていう話だったんです、ワンコーラス+αみたい感じで。その音源を改めて聴いてみたら尺が4分弱ぐらいあったんで、これもうそのままいけるんじゃない? って。たぶん、そのコンペでそういう構成にして出してほしいって言われなかったら、きっとこの形にはなっていなかったと思うので、面白い形にできて良かったです。

松尾:そうね。自分としては気に入っていた曲ではあったけど、作った当時は自分で歌うとは思ってなかったんですよ。グリム(GLIM SPANKY)では使わないだろうなと思っていたし、ダメだったらもうボツだなと思っていたので。でもちゃんと成仏させることができました(笑)。

-ちなみに、いつコンペに出したんですか?

亀本:1年ぐらい前だったかな。

-じゃあ、まさにここ昨今のモードとも重なって。

亀本:そうそう。そこの価値観の変化は大きかったと思う。次のアルバムはより開けたものにしたいよねっていうベースが決まってたから、じゃあこれもありじゃね? ってなったので。

松尾:それで言うと、「愛の元へ」もコンペ用に作ったんですよ。しかもデビュー当時に。

-そんな前に!?

松尾:「褒めろよ」(2015年リリースの1stシングル表題曲)を作った頃でしたね。男性の方が歌うために作った曲だったので、(歌詞の)一人称が男目線で、当時は自分では絶対に歌わないだろうなと思って、思い切ってラヴ・ソングを書いて。結局ボツにはなったんですけど、この曲を"めっちゃ好きなんだよね"ってマネージャーがずっと言ってくれていたんです。"いつかリリースしないの?"って言われてたんですけど、しないかなぁって。でも、それも心境の変化があり、今だったらできると思ってフル・コーラス作りました。

-このレイドバック感も、ここ昨今のグリムが提示してきたものでもあるし、まさに今だからこそですね。「Innocent Eyes」に関しては、アコースティック・ギターを使ったEDMを人力でやった、みたいな印象もありましたけど。

亀本:僕、EDMプロデューサーって結構好きで。めちゃくちゃキャッチーな曲がすごいあるから好きでよく聴いてたんですけど、"(UEFA)EURO 2020"のテーマ・ソングがU2とMartin Garrix(Martin Garrix Feat. Bono & The Edge「We Are The People」)だったんですよね。Martin Garrixが25歳ぐらい(※リリース当時)だから、もうお父さんと一緒にやってる感じ(笑)。でも、おじさんのロックと、若いEDMプロデューサーのコラボというのがとても良くて。ちょっとそういう感じのイメージはしてました。

-サビで半テンするところもスケール感が出ていいですね。

亀本:僕らは遅いテンポが好きなので、隙さえあれば半分にしたいんですよ(笑)。

松尾:そうね(笑)。

亀本:「不幸アレ」もそうだけど、いけそうなところがあったらすぐ半分にしたがるんで。J-POPとかJ-ROCK的なビート感だとだいたい(BPM)160~180ぐらいが多いけど、僕らは75とか80でいいんで! みたいな(笑)。

松尾:そうそう。できる限りミディアムな横ノリのロック感をちゃんと伝えたいから、激しさもあるけれど、半分にするところも織り込んだりして。

亀本:「褒めろよ」とか「ワイルド・サイドを行け」(2016年リリースの2ndミニ・アルバム表題曲)も半分セクションは作っていたんですけど、この曲はもう豪快に、前半は半分で、後半は四つ打ちにして。

-あとこの曲もそうですけど、今回のアルバムは踊れる曲が多い印象もあって。

松尾:結構リズム重視で作ってましたね。歌もそこにこだわりましたし。

-聴いていて、やっぱりロックってダンス・ミュージックだよなって改めて感じました。

亀本:そこの概念はよりこだわりましたね。ロックってポップ・ミュージックだったと思うんですけど、そこはやっぱりノれるというところが大きくて。日本だとメロディが美しいことをキャッチーとかポップって言いがちだけど、世界のポップ・ミュージックを見ると、やっぱりノれるのが一番キャッチーなんですよね。だからノれることはキャッチーさに直結しているし、メロディが美しい以上にリズムが気持ちいいほうがポップだし、キャッチーなんですよ。そういうことも最近考えていたので、そこもちゃんとアルバムに反映できたかなと思ってます。

-松尾さんとしては、そこを意識して歌ってみていかがでした?

松尾:微妙なグルーヴのつけ方が難しかったですね。いろんなグルーヴを見せたいなと思っていたので、特に「Glitter Illusion」とか、「ラストシーン」もそうかな。かなり表情が難しくて。

亀本:やっぱり歌は曲の中でのボリュームが超デカいから、ニュアンスとか、しゃくり方とか揺らし方みたいなところって、実はグルーヴにかなり関わってくるしね。

松尾:そうそうそう。「愛の元へ」もめっちゃ難しかったんだよね。自分の中では珍しく歌詞を詰め込んでいるからリズムの取り方が難しかったし、「Glitter Illusion」のAメロのあととかは、ソウルフルだけどロックにしたくて。そこは表現力が試されるところでしたね。私は結構ストレートに歌うことを美学にしていたタイプで、あんまりビブラートをかけないから、その塩梅をどうするか。今までの自分を崩さず、新しい表現に昇華していけるのかを実験しながら歌った感じでした。だからリズムも表現も含めて、試行錯誤してましたね。

-今作も大充実の1枚になりましたが、11月30日に恵比寿LIQUIDROOMでリリース・パーティー("The Goldmine Release Party")を開催されて、来年1月から3月まで、全国をじっくり回る("The Goldmine Tour 2024")ことになっていて。お話にもあった通り、ライヴを意識したアルバムなのもあって、かなりすごいことになりそうですね。

亀本:ライヴのイメージはもうだいぶ湧いてますね、どういうふうになるのかっていうのは。

松尾:そうだね。早くやりたいです!