Japanese
GLIM SPANKY
Skream! マガジン 2014年09月号掲載
2014.08.07 @渋谷CHELSEA HOTEL
Writer 山口 智男
開場が遅れたことに加え、GLIM SPANKYにとって結成以来、初めてとなるワンマン・ライヴを見届けようと大勢のお客さんが詰め掛け、入場に時間がかかったため("もう一歩前に進んでください!"と何度も店のスタッフから声が飛んだ)、『焦燥』リリースツアー"HELLO! FREAKS"ファイナル・ワンマン・ライヴは30分押しでスタートとなった。
1曲目はメジャー第1弾リリースとなったミニ・アルバムのタイトル・ナンバー「焦燥」。GLIM SPANKYが2009年に閃光ライオットに出演したときに演奏したという古い曲にもかかわらず、ついにメジャー・デビューを飾ることになったときの2人の気持ちにぴったりだからということで、アレンジしなおして収録し、ミニ・アルバムのタイトルにもなった1曲だ。
和製ブルースにも聴こえる松尾レミ(Vo/Gt)の歌に亀本寛貴(Gt)の轟かせるギターが絡み、演奏が進むにつれ、最初、ちょっと投げやりにも聴こえた松尾の歌声がどんどん熱を帯びていく。GLIM SPANKYがどういうバンドなのかを物語るロック・ナンバー。ライヴのオープニングにこれほどふさわしい曲もないだろう。
ウルサ型のロック親爺(風)から、ステージの松尾に熱い視線を送るメンバーと同年代と思しき女の子まで、タイムレスなロックを演奏するGLIM SPANKYにふさわしく、超満員の客席の顔ぶれはまちまちだが、幅広い層のお客さんの気持ちをたちまち鷲掴みにすると、途中何度か挟んだMCで、初ワンマンがやっとできる喜びと、記念すべき初ワンマンに大勢のお客さんが来てくれたことへの感謝を松尾が語りながら、「ヴェルヴェットシアター」、タイトルが最高な「ダミーロックとブルース」、「FLOWER SONG」といった昔からのファンにはお馴染みのレパートリーに加え、ミニ・アルバム『焦燥』に収録されているサイケデリックな「MIDNIGHT CIRCUS」などを演奏していった。
圧巻は何と言っても松尾の歌声だ。激しいロックからバラードまで、たっぷりとした声量で歌い上げるさまはとても20歳そこそことは思えない説得力がある。いや、もはや歌声そのものに意味がある。『焦燥』を聴いたときもガツンとヤラれ、そんなことを思ったのだが、この日、ライヴを見てその思いはますます強いものになった。ラ行が自然と巻き舌になるところが堪らない。一方、相棒の亀本は松尾の隣で黙々と歪みが心地いいフレーズを時に豪快に、時に繊細に奏で、ロック・ギターの醍醐味をたっぷりと味わわせてくれた。
ところで、ツアー・ファイナルというと、それまでの集大成というか、総決算的な内容になることが多いが、そこはやっと本当の意味でスタートを切ったばかりの若いバンド。同じ志を持って、上京してきた友人との別れを歌った「夜風の街」や音楽の道に進むことを周囲の大人たちから反対された時の疑問をそのままぶつけた「大人になったら」という曲を、曲にまつわるエピソードを紹介しながら演奏して、自分たちがこれまでどんな思いで活動してきたかというストーリーも込めると同時に序盤、早速披露した「夜が明けたら」をはじめ、現在制作中という新曲を計4曲も演奏して、今回のツアー・ファイナルが1つの通過点に過ぎず、バンドはすでに新たな目標に向かって走りだしている(というか、走りつづけている)ことも印象づけたのだった。
その新曲だが、THE BEATLESの影響が窺える「夜が明けたら」はTVドラマの主題歌になりそうなポップ・ナンバー。線の細いフレーズがまだまだ頼りなげではあったけれど、亀本がボトルネック奏法を披露。後半、立てつづけに披露した3曲――THE ROLLING STONES風のロックンロールの「サンライズジャーニー」、カントリー・&ウェスタン調のリズムが軽快なタイトル未定曲、LED ZEPPELIN風のブルージーなロック・ナンバー「踊りに行こうぜ」も含め、それら新曲がどんなふうに形になるのかが楽しみだ。
そして、"今日来てくれたお客さんはGLIM SPANKYの最初の核となるお客さんたち"と改めて初ワンマンが超満員になった感謝を述べ、前述した「大人になったら」で本編を締めくくると、アンコールでは"純度120%のGLIM SPANKY"(松尾)とデュオ編成で「ロルカ」を奏で、結成してから6年間、さまざまな壁にぶつかりながらも1度も休止せずに活動を続けてきた2人の絆の強さを今1度、印象づけたのだった。
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