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LIVE REPORT

Japanese

GLIM SPANKY

Skream! マガジン 2023年01月号掲載

2022.12.21 @昭和女子大学 人見記念講堂

Writer : 山口 哲生 Photographer:上飯坂一

"でも、私は自分の信じる美学は曲げねぇから"(松尾レミ/Vo/Gt)。

最新アルバム『Into The Time Hole』を掲げ、各地のホール、ライヴハウスを回る10ヶ所11公演の全国ツアーを開催したGLIM SPANKY。ふたりにとって、3年ぶりとなるアルバム・ツアーは、1曲目の「シグナルはいらない」から凄まじい熱量で幕を開けた。ハンドマイクでステージの前まで出てきて熱く言葉をぶつけていく松尾レミと、興奮を極限まで引きずり上げていく骨太なリフを高鳴らせる亀本寛貴(Gt)は、重量感たっぷりのロック・サウンドで客席の熱を一気に高めていく。ふたりは、軽快なビートをミラーボールが彩った「HEY MY GIRL FRIEND!!」や、サイケデリックなギターが心を包み込むように、解放していくように響き渡った「It's A Sunny Day」など、最新モードを続々と披露。ツアー開始直前にリリースされた新曲「不幸アレ」では、妖しさを放ちながら前のめり気味に突っ込んでいくアグレッシヴな演奏で、オーディエンスを魅了していた。

近作では、自分たちのルーツやバックボーンに根ざした楽曲はもちろん、打ち込みを多用し、モダンなサウンド・プロダクションに挑戦した楽曲が印象深かったが、それらはライヴという空間で、完全に大化けしていた。特に強烈だったのが、「ドレスを切り裂いて」や「レイトショーへと」といった、ソウルやR&Bを下敷きにした楽曲群。卓抜したサポート・バンドによる生演奏に差し代わることで、よりグルーヴィなものへと変貌を遂げ、松尾の魂を震わせる歌声や、亀本の情熱的なギターと絡み合い、身体に強く訴え掛けてくるものになっていた。

他にも、"こんな時代に背中を押してくれるのは、ロックンロールだと思いませんか!"という松尾の叫びからなだれ込んだ「時代のヒーロー」や、伸びやかで美しいアルペジオが沁みるフォーキーな「美しい棘」、「怒りをくれよ」、「ワイルド・サイドを行け」、「愚か者たち」といった代表曲の連打に、大学時代の頃に作ったという「Velvet Theater」や、初期の大名曲「大人になったら」など、新旧織り交ぜながらのセットリストを展開。"最近の曲とか昔の曲とか、いろんなGLIM SPANKYを好きな人がいるけど、ライヴに来てくれたらみなさんの好きな時代のGLIM SPANKYが常にいる"と亀本が話していたが、まさにその通り。そこから浮かび上がってくるのは、この日の松尾の言葉を借りると、GLIM SPANKYは"自分が思うかっこいいことを曲げずに、どれだけ引き出しを増やしていくかの勝負"を常にし続けているということ。そして、様々なアプローチをしながらも、それらはすべてまぎれもなく、GLIM SPANKYの音になっているということだ。

"私たちはロックが好きで、ロックを聴いて育ってきて。きっとこれからどんな曲を作っても、絶対に自分たちの血肉になっているものは薄まらないと思う。だからいろんな挑戦をしていきたいし、自分の美学を曲げずにこれからもやっていきたいと思ってます。きっとここにはそういう仲間たちが集まってると思うから。一緒に時代を作っていきましょう!"(松尾)

松尾のまっすぐな言葉のあとに届けられたのは「形ないもの」。ひと月前の新曲が、瞬く間に旧曲扱いになってしまう。そんな凄まじいスピードですべてが過ぎ去ってしまう時代だとしても自分たちの美学は、信念は、絶対に曲げないし曲がらない──そんな自信であり確信が、今のGLIM SPANKYを強く動かしている。それを見事なまでに体現したステージだった。


[Setlist]
1. シグナルはいらない
2. ドレスを切り裂いて
3. 褒めろよ
4. HEY MY GIRL FRIEND!!
5. It's A Sunny Day
6. 美しい棘
7. Breaking Down Blues
8. 時代のヒーロー
9. Looking For The Magic
10. Velvet Theater
11. レイトショーへと
12. 怒りをくれよ
13. ワイルド・サイドを行け
14. 愚か者たち
15. 不幸アレ
16. NEXT ONE
17. Sugar/Plum/Fairy
18. 形ないもの
En1. ウイスキーが、お好きでしょ
En2. By Myself Again
En3. 大人になったら
En4. Gypsy

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