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INTERVIEW

Japanese

majiko

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Interviewer:三木 あゆみ

-できあがったMVについてはいかがですか?

「世界一幸せなひとりぼっち」は、結構冷たい雰囲気で作っていきたいですって亀田さんにも話していて、だから曲単体で聴くと氷みたいな、でもその中にも温かさがあるという感じで作っていたんですけど。そこに炎をチョイスする林さんのセンスがもう、本当にすごいなって。「エミリーと15の約束」のときもそうでしたけど、淡々と歌っていくような展開の中、無機質の中に生き生きとした植物を入れるというセンスも、本当に素晴らしいなって思いますね。

-次の曲の「23:59」は、タイトルと歌詞の中の"今日の0時、世界が終わるらしい"というところから、世界が終わるかもしれない日の23時59分の思考やストーリーが描かれているのかなと想像していました。

本当にその通りで。世界が終わる前の人間の心理ってどうなるんだろうと考えていたんです。怖いだけじゃなくて、ワクワクしている自分もいるような感じなのかなとか。歌詞にもありますけど、上も下も、白も黒もなく、人類初めての平等が今から訪れるという皮肉な感じとか。わだかまりを持っていた人たちも"もう終わるんだから良くない?"みたいな心理になるだろうなというか、私はそうなりたいと思って。それでこの曲を作ったんです。終わるか終わらないかは聴き手の想像に任せるという感じなんですけど。こういうのもなんか2020年っぽくっていいかなって(笑)。

-最後のカウントが、すごく想像力をかき立てられます。この続きはいったいどうなってしまうんだろうって。ちなみに、majikoさんの中にはこの続きがあるんでしょうか?

たぶん続きはこれから生まれていくものだ、とカッコいいことを言っておきます(笑)。オケを作るときに、そのカウントの"1"でプツンと切れるみたいなアレンジも考えてたんですけど、ちょっとそれは夢がなさすぎるっていうか、絶望すぎるなと思って。ここは余韻を残そうと。終わったとしても余韻だけは残っているとか、余韻が残っているなら世界はまだあるんじゃないかとか、みんなが真新しくなる世界になるとか――そういう妄想です(笑)。

-そこから、一転して「神様でもあるまいし」ですが、majikoさんはこういうビート感の強い曲との相性もすごくいいですよね。

嬉しいです。私はエレクトロ・スウィングがめちゃくちゃ大好きで。「ワンダーランド」(『寂しい人が一番偉いんだ』収録曲)からも滲み出ちゃってるんですけど。これは、ライヴのことも考えて、ただノれる曲、なんの意味もない曲を作ってみようかなと思って作った曲で。ただノせることだけを考えてできあがったのがこの「神様でもあるまいし」ですね。

-メロディのリズムとかもフックになるところがたくさんあって、すごくいいですよね。次の「Once Upon A Time In TOKYO」もmajikoさんの突き抜ける声と手数多めのバンド・サウンドがめちゃくちゃかっこ良くて、ライヴで聴くことができたらと考えただけでもテンションが上がってしまいます。

あぁ良かった~。初めてこういった速いファンクを書いたので、そう言ってもらえるとすごく嬉しいです。

-ここでこういうバッと開ける曲を持ってきているところに、強い想いがあるのかなと感じたんですが、そのあたりは何か考えていたことなどはありましたでしょうか。

ここで、今までのmajikoの中で聴いたことがないジャンルの曲を持ってくることによって、耳を奪うというか、"お!? キター!"みたいな、そういう作用を想像してここに持ってきた所存です。

-サウンドもすごくゴージャスですが、完成形を聴いたときはどういう印象がありましたか?

デモの時点での音は生ではないじゃないですか。でも完成形を聴いて、やっぱ生音最強だなというか。もちろん曲によっては電子音のほうがかっこいい場合もありますけど、これは生音で録って良かったなって思いました。

-歌詞の言い回しとかもmajikoさんらしいなと感じました。

これは自分の中にオカマさんを降ろして書いたんですよ(笑)。そしたらぶわ~って歌詞が書けて。

-(笑)ちなみに、タイトルはどこから来たんですか?

"ワンス・アポン・ア・タイム・イン~"って、映画とか小説とかいろいろなところで使われているじゃないですか。そこに"TOKYO"って付けたらカッコ良さそうだなと(笑)。曲の中の"ワンスアポンアタイムイントウキョウ"って部分は、ふわっと降りてきた歌詞だったんですけど、これは絶対にタイトルになり得るなと思っていて。今作の曲を作っていくにあたって、英語のタイトルが欲しいねと今作でもアレンジを手伝ってくれた哲ちゃん(木下 哲)とかと話をしていたので、そこをクリアしました(笑)。

-さっき歌詞ではオカマさんを降ろしてという話がありましたが、この曲は歌で結構演じ切っている印象があって。意識していたところはありましたか?

意識しましたね。歌い手時代に積み重ねてきた歌い方......張るとかだけじゃなくて、Aメロみたいな声質とかも、"私こういうのも持っているんですけど、忘れてない?"みたいになって、出したという感じです(笑)。

-演じ切っているというと、「勝手にしやがれ」や「魔女のルール」もかなり世界観が確立されていますよね。「勝手にしやがれ」はどうやってできていった曲なんですか?

「勝手にしやがれ」は結構昔からあった曲で、スタッフ間でも"これいいよね"って話に出ていて、今回満を持して入れようとなりました。それで自分が昔書いてたデモだとロックロックしすぎてたので、リアレンジすることにしたんです。ローファイ・ポップみたいな感じにしようと思って、今回の「勝手にしやがれ」ができましたね。歌詞もすごく気に入っているんですよ。Bメロとか特に気に入ってます。

-この曲は歌詞もすごく印象的で。この曲の主人公は"あなたって肩すら抱けないの?"と大人な顔を見せるけど、"離れたりなんかしないのに"と言っちゃうかわいさもあるなって思っていて。

そうですそうです(※小声)。女性ってすげぇかわいいなと思うんですよ。「Once Upon A Time In TOKYO」もそうなんですけど、恋する女の人ってなんであんなに滑稽で愛おしいんだろうとか。それに気づかない男性も愛おしいし、全部愛おしいなっていうのが根底にあって。ひとつの物語として、そして自分の経験も含めたりして、書いた曲ですね。

-「魔女のルール」も大人の女性が描かれていますが、majikoさんは、こういう複雑なかたちをした女心みたいなものに惹かれるところもあったりするんでしょうか。

女心を歌うのが好きで。「春、恋桜。」(2019年リリースの配信シングル)っていう曲から目覚めたんです(笑)。隠しているけど、心の中で何か"ぐわぁぁ"っていうものを持っているのが、たぶん女性だと思っているんですけど。そういう女性の言う皮肉とか、エロティシズムってすごくえっちだし、魅力的ですし。だから女心を歌うのはすごく好きですね。

-「魔女のルール」の"隠しごとがあるたび、化粧は濃くなってく"みたいな感覚も、女性ならではの表現というか、わかるなという。

そうですよね。「魔女のルール」は少し年上の女性の悩みみたいなものを書いていて。子供のころから大人と話すことが多かったんですけど、そのころは女性が自分の年齢や、男の人のことを気にすることがあまり理解できなかったんです。でも今になってあの頃の大人の女性たちはこういうことを思っていたのかなと、ちょっとわかってきて。それを曲にしましたね。

-そして「ほしに例えば」は"世界で初めて/誰かに向けた愛の言葉は何?"など、すごく壮大なことを歌った曲だなと思いました。これはどういうイメージからできていった曲だったんですか?

これは歌詞を書いていくにつれて、ラノベの主人公みたいだなと思って(笑)。男の人はツンツンしてるけど、女の人のことをちゃんと好きでいるみたいな。前世とか言い出しちゃう女の人に"何言ってんだよ"とか言いながらも、"生まれ変わっても僕になりたいな"って言ってるラノベです(笑)。

-(笑)ロマンチックな要素はありますよね。サウンドも、ヴァイオリンのような音が入っていることでスケールの大きさがより感じられます。

初期のデモの時点ではシンプルな構成だったんですけど、ふと"民族系っぽいヴァイオリンが聴こえる"と思って。それで、そういうのをいつも頼んでいる人に聞いてみたところ、フィドルというものがあることを初めて知ったんです。"じゃあフィドルじゃね!?"となって、入れてみたらうまく固まりました。レコーディング当日はDADARAYのキーボードのえつこさんが私のわがままという名の要望に応えてくれて。そうしてできあがったのが「ほしに例えば」ですね。

-ドキュメンタリー映像とかで流れていそうな、壮大なサウンドですよね。歌詞も運命とか、すごく広い世界のことを歌われているなと思って。

そうですね、「ほしに例えば」はこのアルバムの中で一番抽象的な歌詞だと思ってます。

-たしかに。抽象的な歌詞を書きたいと思ったのはなぜなのでしょうか。

もともと私は抽象的な歌詞が好きなんですよ。みなまで言わないものというか。でも、そうも言ってられない感じが今作にはあったので......。だけど1曲くらいあってもいいんじゃないかなと思って(笑)。