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INTERVIEW

Japanese

majiko

 

majiko

Interviewer:秦 理絵 Photo by マサ(@masalivephoto)

majikoというシンガー・ソングライターが音楽を紡ぐとき、孤独や、心にぽっかりと空いた穴のようなものが大きな原動力にある。6月19日にリリースされている、majikoの最新アルバム『寂しい人が一番偉いんだ』は、そんな彼女の"寂しさ"がテーマの作品だ。前作アルバムから3年5ヶ月。強い信頼を寄せるアーティストらと共に作り上げた全12曲には、音楽家として、あらゆる制約から解放された伸びやかで自由なmajikoがいる。自分にしか歌えない歌を歌いたい――そんな信念を貫きながら、今作でmajikoは、今の時代に必要な音楽とはなんなのか? という命題にも向き合った。決して消えることのない闇を纏い、聴き手の心と共鳴する孤高のシンガー majiko。いよいよ今作で彼女は一筋の光へと手を伸ばす。

-フル・アルバムとしては約3年5ヶ月ぶりなんですね。ミニ・アルバムとかシングルのリリースはあったけど、意外と間が空いてたなっていう。

そうなんですよ。こんなにたくさん入れたのは久しぶりですね。いろいろな曲に集中しなきゃいけないから、すごく疲れました。やり切った感じです。

-とにかく、1曲目「エミリーと15の約束」がすごく良かったです。母が娘に諭すような曲っていうのは、今までのmajikoさんにはないタイプですね。

素敵な曲ですよね。特に歌詞が良くて。カンザキ(イオリ)さんには感謝です。

-今回、カンザキさんに楽曲提供をお願いしたのは、どういう経緯だったんですか?

カンザキさんの「命に嫌われている。」を歌ったのがきっかけですね。そこから、スタッフとの間でもお願いしたいなっていう話になって、作ってもらったんです。

-楽曲のリクエストはしたんですか?

特にないです。"カンザキさん色をください"みたいな感じで。

-majikoさんから見て、カンザキさんってどういうアーティストですか?

巷で噂のアーティストですよね。周りにいる人がみんなカンザキさんの話をするんですよ。今をときめくアーティスト。私はもっぱら歌詞が好きなんです。「命に嫌われている。」のときも、歌詞が刺さったから歌わせてもらって。ライヴでも、この曲の辛辣な歌詞には心が入れやすいんですよね。メンヘラなので(笑)。

-「エミリーと15の約束」の歌詞では、どんなところにぐっときましたか?

母から娘に向けた歌なので、自分で自分に向けて歌ってるような感じもあるんですよ。いつも思ってはいることだけど、いざ言葉にされると、ズシンとくる。戒めるような感じというか。私も母を亡くしてるから、この曲はすごく大事に歌いたいなと思ったんですよね。だから歌い方も気にして、いつもだったら、こうは歌わないっていう母性みたいなものも出したくて。ただ、ここで歌ってることって、私自身は何ひとつ守れてないなと思うんですけど(笑)。

-"寝る前はちゃんと歯を磨いてパパにおやすみと言いなさい"から始まって、人としてどう生きるか、みたいな15のメッセージが込められてますけど、特に自分の価値観に近しいなと思う言葉はありましたか?

あー......11番ですね。

-"涙は見せびらかしてはいけないわ。弱さは噛みしめるものよ"。

そうだなと思いますね。大人になればなるほど、涙を見せられなくなってくるよねって思います。って思うと、11番だけ守ってるのかな。

-聴く人もそれぞれそういうことを考えながら聴く曲になるんでしょうね。そういう意味で、majikoさんのアルバムとして、すごく異色な始まり方だなと思います。

そうですよね。この曲は(レコーディングの)中盤から終盤ぐらいにできたんですけど、アルバムの収録曲順を決めるときに、1曲目しかハマらなかったんです。真ん中にも置けないし、最後でも違うのかなと思って。

-今回のアルバムを作るときに、こういう作品にしたいなっていう構想はありましたか?

ちょっと自分が落ちてたときがあって......。寂しい人に対して、それは私も含めてなんですけど、ちゃんと認めてあげる作品にしたいなと思ってましたね。それが、"寂しい人が一番偉いんだ"っていうアルバムのタイトルにも通じるんです。この世界で一番偉いのは、賢い人間でも、優しい人間でも、金持ちでも美男美女でもないと思って。寂しい人が一番偉いはずであってほしい。だって私が寂しいから。みたいなエゴが出てるんです。でも、今回はそのエゴも出していきたいなと思って。今回のアルバムのすべてには"寂しい"っていうテーマ性があるんですよね。

-やっぱり気持ちが落ち込んでるときっていうのは、曲を生み出しやすいですか?

そうですね。まぁ、私はいつも落ちてるんですけど(笑)。それにも波があって。その波の一番下にいるときに、言葉が出てくるんです。

-この"偉い"っていう言葉のチョイスがまた絶妙ですよね。

最初は"寂しい人が王様なんだ"とか、いろいろ考えたんですけどね。"寂しい人が一番偉いんだ"っていう言葉も、最初はタイトル案じゃなくて、ひとつのテーマだったんですよ。今までずっとタイトルは英単語だったから、今回もそれで考えたんですけど、"寂しい人が一番偉いんだ"を表す言葉が見つからなくて。LONELINESSもダサいし(笑)。じゃあ、これでいいんじゃないかって決めました。初めての日本語タイトルです。

-これまでのmajiko作品の文脈で言うと、『CLOUD 7』(2017 年リリースの1stミニ・アルバム)で曇り空の中を歩いて、『AUBE』(2018年3月リリースの2ndミニ・アルバム)で少し夜明けの方向に向かっていたけど......。

今回は、また闇のほうに戻っちゃいましたね(笑)。

-そうですよね(笑)。さっき"エゴを出してもいい"と言ってたけど、それは今回の作品を作るうえで芽生えてきた感情ですか?

そうだと思います。自分を持ってたほうがいいっていうのは、昔から思ってたんですけど、それが"絶対そうだ"みたいな確信に変わったのは、このアルバムのタイミングなのかなって。今回の「ワンダーランド」とか、自分が作詞作曲をするにあたって漠然と考えるようになったんですよね。

-それまでは、むしろ提供してくれる楽曲に寄り添うことを大切にしたかった?

そう、そういう意識のほうが強かったし、自分の曲に関しても、聴いてくれる人を後回しにして作ってるところが多かったんです。それが「パラノイア」(2018年7月リリースのメジャー1stシングル『ひび割れた世界』収録曲)あたりから、徐々にちゃんと考えられるようになってきたんです。