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INTERVIEW

Japanese

The Floor

2019年12月号掲載

The Floor

Member:ササキハヤト(Vo/Gt) ミヤシタヨウジ(Ba) コウタロウ(Dr)

Interviewer:沖 さやこ

-「I Don't Know」も陰の空気と幸福感の融合が生々しくて、深層心理が見える曲だと思いました。トラックはミヤシタさんとコウタロウさんの共作なんですよね。

コウタロウ:ヨウジから"メロディの起伏があんまりなく、淡々と進む感じの曲を作りたい"という提案を貰ったんです。それでふたりで顔を突き合わせてそれぞれパソコンに打ち込んで、ある程度材料が揃った状態で僕がひとまず形にして、そこからヨウジと意見交換しながら詰めていったんです。

ミヤシタ:UNDERWORLDの曲とTHE KILLERSの曲をコウタロウに聴かせて、これをもとに曲作りを始めて。僕はシンセのリフ、コウタロウがメロディを考えてます。ダンサブルだけどロックの質感にできたので、すごくいいなと。

コウタロウ:バンド感を出したいから生ドラムの音をレコーディングして生感を出したりね。平熱感のあるメロディだから、こういうちょっと沈んだ言葉も乗せられたかなと思ってます。

ササキ:今回ほんと、みんな無理してないんです。無理して明るいものにしようとも思わなかった。

-"明るいもの"と言われて、昔The Floorがプロフィール欄に"持ち前の明るさで頑張ります!"と書いていたことを思い出しました(笑)。

ミヤシタ:あれは自分たちを鼓舞するための言葉ですね(笑)。

-気づかない間に4人ともなんとなく存在する"The Floor像"みたいなものに縛られていたところはあったのかもしれないですね。

ササキ:メンバーが抜けたことで、ひとまずそこがリセットされたんだと思います。そうなったら自分たちの信じるものを作るしかない。それで勝負したいとも思ったし、勝負できて良かった。今まで曲作りのパスを出してきたヨウジも、初めて作詞作曲に挑戦できたし。

-ミヤシタさんが作詞作曲なさった「Shadow」と「群青について」は、ミヤシタさんの原点や人生哲学が表れたものになっていると感じました。

ミヤシタ:1曲フルを自分で仕上げるのは初めてだったので、自分の根底となる、日頃思っていることや大切な思い出を書こうと思ったんです。今回の制作で固定観念や思い込みを崩すことができたんですよね。今までも自分はそういうものにとらわれないようにしようと思って生きてきたのに、知らず知らずのうちに視野が狭くなっていたんだな......と思って。「Shadow」はそういう気持ちを書きました。あと、SNSとか見てると"なんでそういう考え方しかできないのかな"と思う場面がすごく多くて。でも、そこからいろんな気づきを得られると、自分の人生も変わると思う。そういう気持ちも込められていますね。

-ミヤシタさんの作る曲は顕著なんですけど、なんとなく3人とも、"失いたくないもの"や"失ってしまうもの"、"手離したくないもの"を書いた曲が多い気がしたんですよね。

ミヤシタ:僕は歌詞を自分のために書いてるところがありますね。今後人生の困難にぶち当たったときのために......。

ササキ:メモなの(笑)?

コウタロウ:(笑)でも、わかるよ。そのときの気持ちとか、大事な気づきを忘れないために曲にするってことだよね。

ミヤシタ:そうそう。人のために書こうというつもりはなくて。自分のそういう大事な気持ちや気づきが誰かに響いてくれたら、ちょっとは書いた意味があるかな、と思うんです。「群青について」は最初にタイトルを思いついて、詞とメロディを同時に書き進めていって。時系列も場所もぐちゃぐちゃで、今まであった忘れられないこと、忘れたくないことを書いていきました。これも俺の記録ですね。

ササキ:僕は個人的に、"今というものを大事にしたい"という気持ちを込めたいなと思って書いていったんですよね。そうしたら自然と"人との出会いと別れ"を描いたものが多くなった。ふとしたことで会えなくなっちゃうことは、たくさんあると思うんですよ。一緒にいることが当たり前になってくると、どんどん麻痺してくることもあるじゃないですか。

-そうですね。

ササキ:例えば、「Candy」は恋してる人を客観視した目線で書いてるんですよね。"付き合う"というただの口約束で、制約のないものに一喜一憂する様子がキャンディみたいだなと思って。"どうせ溶けちゃうんだけど、楽しくて甘くて大切で忘れられないもの。だからこそ大事に味わったほうがいいんじゃないの? 恋ってそういうものじゃない?"と思って書いた曲です。作る曲も鼓舞するというよりは、"俺はこういう気持ちだから、あなたもそう思ってくれたら嬉しいな"という投げ掛けというか。

-「ナイトフォール」も「To Be Continued」もまさにそうだろうなと。

ササキ:そうですね。ほんと、今回は曲を作るうえで余計なことを考えなかった(笑)。別れを経験したら"その人やその人との思い出を忘れない"ということしかできない、という気持ちを書いたのが「ナイトフォール」。「To Be Continued」はストレートに"続けてこうぜ"って気持ちを書いたんですけど......これは酔っぱらってとある人に"逃げたら負けだろ!"と言ってケンカしたことがありまして(笑)。でも、冷静になって考えると"ひとつの道を貫くことがすべてじゃないし、別の道もこれまでの続きだよな"と反省して。だから、自戒を込めて作った曲でもあるんです。過去は過去と切り捨てるのではなく、それを全部抱えてこれからも生きていくよっていう想いを込めました。

コウタロウ:なんとなくこういう曲を作りたいというイメージから音を作っていって、歌詞を書いていくうちに曲の景色が見えてきて、自分の気持ちに気づくところもありましたね。そういう経験は、自分で作詞作曲をするから得られるものなんだろうなと思います。

-曲を作ることで自分自身の巣作りもできたんですね。

コウタロウ:あぁ、ほんとそうですね。

ササキ:たしかに。今までにはなかった感覚でした。

-これまでのThe FloorはみんなでThe Floorを作ってきたけれど、今回は各々の個人プレイをチーム・プレイに変換した、という感覚なのかなと。

ミヤシタ:そうですね。すごく個人的なことを書いたけど、ハヤトが歌えばThe Floorになるなという安心感もあるし。それがあるからこそ個人的なことを書けたし、ハヤトにも自由に歌ってもらいました。ただコウタロウはゴリゴリに、ハヤトにヴォーカル・ディレクションをしてましたけど(笑)。

コウタロウ:そんな......! 押しつけてないよ(笑)!

ハヤト:"ここはしゃくって"とか"ここは下げてほしい"とか細かく書いてありました(笑)。

コウタロウ:いや、それはわかりやすく僕のイメージを伝えるためであって......! 必ず俺の思い通りに歌えって押しつけてるわけではなく!

ハヤト:あははは、わかってるよ(笑)。ちゃんと"ここはこう歌いたいんだよね"って話し合いもしたしね。

-ははは(笑)。新体制は前体制と方法論は違えども、順調のようで良かったです。

ミヤシタ:メンバーやタナカさんを頼りながら制作できたので、自分の作ったものにほかの人のアイディアが入るのが嬉しかったですね。自分の根底が出たものだけど、自分だけのものじゃない。みんなの曲になったと思います。

ササキ:自分の作ったデモが数段かっこいいものに仕上がって、お互いの信頼度が上がりました。やっぱすげぇなと思ったし、やっぱ俺らかっこいいんだなって(笑)、再認識できたし、自信に繋がりましたね。自分たちの作っている曲を演奏するようになってライヴも変わってきていると思うし。

ミヤシタ:変化することにビビらなくなったね。

ササキ:もっともっといいバンドになりたいし、自分の思い描く人間になりたいし。かっこいいと思ってもらうためには、自分が思うかっこいい自分にならないと意味がないと再認識したし。活動を重ねるごとに変わっていってると思います。安パイばっか切ってたら高みは目指せないから、どんどん攻めていきたいですね。まだまだ変わる。まだまだ良くなると思っています。