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LIVE REPORT

Japanese

The Floor

Skream! マガジン 2018年05月号掲載

2018.03.23 @渋谷WWW

Writer 沖 さやこ

今年2月にリリースしたメジャー・デビュー作である1stフル・アルバム『ターミナル』は、インディーズ時代の既発曲の再録などを含まず、すべて新曲で構成された意欲作だった。そのアルバムを引っ提げて行われたリリース・ツアーは、新旧の楽曲を並べただけではなく、さらに音楽的に構築し、且つ情熱的に繰り広げたステージだった。

ベートーヴェンの交響曲第9番をSEにスケール大きくメンバーが登場し、ライヴは「Cheers With You」からスタート。ササキハヤト(Vo)は以前より声量が上がり力強い歌声を聴かせ、永田涼司(Gt)は繊細な響きで彩りを与える。ミヤシタヨウジ(Ba)とコウタロウ(Dr)のリズム隊はバンドに躍動感を作り出す。これまでのThe Floorはグッド・ミュージックを丁寧に描き出すライヴをしていた印象があったが、この日はすべての音から彼らの胸の内にある熱い想いがダイレクトに飛び掛かってきた。気合十分といった様子だ。

アッパーな楽曲を3曲畳み掛け、導入を挟んでギターのループ感が心地いい横ノリの「POOL」へ。そのあとの「Toward Word World」、「リップサービス」、「煙」、「灯台」も導入を作り、ライヴ自体を作品のように作り上げていく。事前にセットリストや展開、ライヴ・アレンジという枠組みを作っているがゆえに、メンバー全員がそのときに抱えている感情やパワー、彼らの本質を存分に大爆発させることができたのではないだろうか。音楽への情熱が音とリズムを生み、聴き手のこちらもそれに突き動かされて踊り出しそうになる。

その後も曲間に導入を挟み込み、4人は"In Train Tour"というネーミングどおり次々と車窓が変わっていくようなドラマチックな景色を描く。感情が蠢くようなスリリングな表情、冒険に胸をときめかせる少年のような表情と、様々な顔を見せながらどんどん演奏に没頭していった。「Wake Up!」は同期と電子ドラム・パッド、サンプラー、鍵盤などを使ったライヴ・アレンジ。かわいらしい浮遊感のあるサウンドでもクリエイティヴな表現で中だるみを許さない。ギターを抱えながらハンドマイクで歌うササキの姿も画になっていた。

10曲の大冒険を経て、11曲目の「Flower」では柔らかい歌声や軽やかな演奏といったリラックス・モードで少々クール・ダウン。ここから彼らは、自分たちが巻き起こしたエモーショナルの波を完全に乗りこなし、味方にしたように見えた。まさに無敵モード。こうなったらもうひたすら前に進むのみだ。しなやかなグルーヴを作った「パノラマ」から「SING!!」、「ハイ&ロー」と曲を重ねるごとにダイナミズムの規模を大きくする。そこから宇宙を彷彿とさせるサウンドスケープの「イージーエンターテイメント」への流れは圧巻だった。

高校3年生のときに初めて観たライヴで"バンドってかっこいい"と思ったというササキが"あのころの俺と今を繋ぐ歌"と語り演奏した「18」には、隅々にまで感謝と喜びの念が宿る。メンバーがドラム前に集まって音を鳴らし、ラストは「ファンファーレ」。ササキは今にも涙を流しそうな表情を浮かべていた。楽器隊のメンバーも感慨深げな面持ちで音を鳴らす。やっとここまで来たという気持ちと、もっと先に行きたいという気持ち、その両方が素直に高らかに鳴り響いていた。

アンコールは「夢がさめたら」と「Wannabe」の2曲を無邪気に力いっぱい届ける。アンコールのラストでもササキは今にも涙を流しそうな顔をしていた。札幌のバンドにとって、東京にこれだけ自分たちの音楽を愛している人がいることへの喜びと感謝はとても深く、かけがえのないものなのだろう。ミヤシタがMCで"今度のツアーはもっと回りたい"と言っていたが、The Floorは、遠征経験は多数あれども実はまだ大規模な冠ツアーを行ったことがない。彼らの旅はまだ始まったばかり。これからどんな冒険をしていくのか、そこでどんな感情や経験を得て、どんな音楽を生み出すのか――未知なる領域に胸をときめかせる4人の姿は非常に勇敢だった。


[Setlist]
1. Cheers With You
2. ドラマ
3. はたらく兵隊さん
4. POOL
5. Toward Word World
6. リップサービス
7. 煙
8. 灯台
9. ノンフィクション
10. Wake Up!
11. Flower
12. パノラマ
13. SING!!
14. ハイ&ロー
15. イージーエンターテイメント
16. 寄り道
17. 18
18. ファンファーレ
en1. 夢がさめたら
en2. Wannabe

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