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INTERVIEW

Japanese

植田真梨恵

2019年04月号掲載

植田真梨恵

Interviewer:石角 友香

-「花鬘」はヴォーカルの位置が面白いですね。歌がそんなに前にいなくて、耳を澄ませて聴く感じというか。

これも心地よい空間というか、ちょっと空気の質感が曲によって変化するようなイメージで作ったので、ミックスまでなるべく絶妙なところで進めました。

-どういうふうに届けたいかという、細部の完成度が高いと思います。

これまでそんなに意識して"和メロ"って考えてきたことがなかったんですけど、和のメロディを突き詰めて一生懸命書いたはずが、コーラスも入れて全体を遠くから見たときに、ちょっと中国っぽいやん、と思ったんですよね(笑)。

-逆にマイナー・コードが入らないから中国っぽいとか?

そうですね。緑茶を目指していたのにウーロン茶になってるみたいな感じはあったりして(笑)。だけど、それも含めてレコーディング段階から"独特だな~"って自分で感じながらの作業だったので、それがワクワクしました。

-続いて5曲目の「灯」。"宛名のない手紙"と"光る灯台"。面白いモチーフですね。

たしかにそうですね。出演させていただいた映画("トモシビ 銚子電鉄6.4kmの軌跡")の主題歌として書かせていただいた曲なんですが、その映画は銚子電鉄と高校生が駅伝で対決するという内容になってて。高校生の女の子が主人公なので、思春期真っただ中で、言えないこととかほっといてほしいこととか、いろいろ難しい年頃のあの感じっていうのが、すごいポイントになってる映画なんです。なので、"宛てのない 手紙は 潮風にさらわれた"という歌詞になったのかなと思うんですけど。大切な存在になるのはわかっていても、言葉にしたりいちいち向き合ったりするのが照れくさかったり、嫌だったりする気持ちというか、もどかしいのが伝わってくるので。

-「灯」の次に「長い夜」があると繋がってる印象があって、「長い夜」はまさに雨。

雨ですね。雨、似合うんですよね。ピアノの西村さんが。"Lazward Piano"で初めてスタジオに入ったときから、スタジオにいるだけで"雨"です。もう、停電するほどの雨(笑)。海辺の"音霊"のライヴなのに雨とか、結構そういうことがあるので。

-雨雲を呼ぶんですかね(笑)。

(笑)今回は、雨が似合うようなピアノをお願いしました。これ、デモの段階から自分でピアノを弾いていたものを聴いてもらって、それをちゃんと弾いてもらった感じなんですけど。

-何もする気がないときが許される感じがします。雨の音がするから沈黙じゃないし。

たしかに。雨が降っててくれるからっていうのは、それによって許される感じがありますね。

-"長い夜"ですからね。

これ、実は映像をやっている友達が、専門学校の卒業制作で"長い夜"っていう映像を作ったって言ってて、それに合わせてエンディングを作ってみようと思って書いた曲だったんです。

-映像にはつけたんですか?

う~ん、使ったのかなぁ(笑)? 19歳とか20歳のとき、それこそ映画を観て曲を書いたりしてたので、"エンディング書いてほんとに使われたらいいなぁ"みたいな憧れからやってみたことだったりしたんですよね。で、そのデモがずっと残ってて。それがCMで使ってもらえることになったので、収録させてもらってるんですけど。だから実際、映画のエンディングごっこみたいなことをして書いた「長い夜」と、ほんとの映画のエンディングとして書いた「灯」という曲の流れなんだなぁという気がしました。

-「ひねもす」は今植田さんがおっしゃったように、どんなことでも感受したことを音楽にできる印象がありました。最後のフレーズが"なんだっていいのさ"ですからね(笑)。

(笑)"なんだっていいのさ"、好きな言葉なんですよ。私はあまり使えないですけど、なるべく使いたいです。"生きてるだけで丸儲け"的なニュアンスですね。私は歌えてさえいればなんだっていいのさ、君さえいてくれればなんだっていいのさとか、それこそ"生きてさえいれば"みたいな、そんなニュアンスですね。

-植田さんにとっては"歌えればいいんだ"ってことをフラットに表現してるのが『W.A.H.』なんでしょうか。

うん。そうかもしれないですね。『F.A.R.』の方がより切々とテーマに向かって書いた部分はあるんですけど、『W.A.H.』の方が、歌のパワーというか、エネルギー、刺激的じゃない方の心地よさという意味で書いたというのがあるので。「Bloomin'」とかも、なるべくメロディをシンプルにしたくて。強いからこそシンプルに、みんなが思わず口ずさむような感じのサビにしたいなと思ったりしましたね。

-きっぱり2枚の質感が分かれてるぶん、しっかり印象に残りますね。

それこそ"なんだっていいのさ"なんですけど、いろんなことをできすぎる、選べすぎる、なんでも似合う年頃という意味で、音楽でもやっていいところが自由すぎてわからなくなるので、ある程度コンセプトはあって、その端から端までっていうところをしっかり7曲で表現するというのが、私はインディー時代から好きでやりやすいみたいです。

-非常に明確な意志が届く5周年のスタートだと思います。

ありがとうございます。ライヴはまだ想像が及んでないんですよ。しっとりした曲が多いバンド・ツアーなんでね? 頑張ります(笑)。