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INTERVIEW

Japanese

あいみょん

あいみょん

Interviewer:石角 友香 Photo by 上溝恭香

-曲の作り方や歌詞の書き方自体は変わらないんですか?

まったく変わらないですね。曲作りとしては変わらず自分の声とギターとで同時進行で作るっていう感じです。でも今年は、ピアノは弾けないんですけど、キーボードとか、新しくチャレンジしてみたいことは日々あるんです。

-今回12曲入ってますけど、曲自体はその10倍ぐらいはありましたか?

楽曲自体は10代からもうずっとあるので200曲以上はあるんですけど。

-「今夜このまま」の書き下ろしのときも10曲ぐらい作ったと聞きました。

結構作ってましたね。

-あのタイミングでお話が来たのはどうでした?

ありがたかったし、私で大丈夫かなと思いながらも自信はありつつ。あまりにもスケジュールがタイトやったのもあったので、間に合えばいいなと思いながら作ってました(笑)。

-(笑)シングル曲があるなかで、アルバムはパズルみたいに埋めていったのか、ストーリーを編むように組み立てていったのか、どっちですか?

曲はあったので産みの苦しみはまったくなくて、どっちかって言うと、スケジュールとどう戦って、完璧にみんながいいと頷けるものを作れるかという方が重要でしたね。曲自体は常に作ってるし、絶対自信があるものしか入れないんで。

-最初の3曲(「満月の夜なら」、「マリーゴールド」、「ら、のはなし」)は男性目線の歌詞が続きますね。

そうですね。男性人称の曲を書くのが好きというか手癖みたいな感じです。ギターのコードとかと一緒で。最近は、私、声低いし、中性的な声質なので、"僕"って歌った方が説得力あるのかな? とか思うこともありますね。

-女性人称で歌っても男性人称で歌ってもおかしくないのは強みだと思いますよ?

でも男性の気持ちはわかったつもりになって書いてるだけで正直わからないんで、実際に男性が聴いたらどう思うのかは毎回気になります。ただ、曲作りしてるときは何も意識せんままにつらつらって書くことが多いので、自分の感情がそのまま浮き出てると思いますね。

-4曲目の、女性人称の「二人だけの国」はトラックとしては最強にシュールですね。

(笑)お経というか"ナンマイダ"をイメージして作りました。昔、遊びで、好きな映画を観て、"もし私がその映画の主題歌をオファーされたら"というていで曲をよく作ってて。この曲はその感覚で作りました。

-この曲が主題歌となるのは、どんな映画なんだろう?

絶対みんな知ってる映画ですね(笑)。聴いてわかる人はわかる。めちゃくちゃ有名な邦画なんですけど。

-ちょっと想像してみます。こういう音数が少なくてかっこいいトラックで、あまり感情がない感じで歌ってますけど、最初からこういうイメージでしたか?

あああ一直線で音階のないようなAメロは、やっぱお経をイメージしてるので、弾き語りでデモ作ってるときからそうでした。"運命共同体同士"って漢字を並べたときに、音階をつけるのがすごい難しくてそのまままっすぐ歌ったらお経みたいになって、"あ、これはナンマイダやな"と思ったんです。

-ふたりの世界に浸ってる感じはしますね。

うんうん。それはあるかもしれない。いろんなイメージをしてほしいなと思います。

-「プレゼント」も歌詞の完成度が高いですね。

世の中を俯瞰で見た神様目線と言いますか、人に命を与えた側から見た世界と言いますか、そういう感覚で書きました。

-"愛を作っている"とか"涙を作っている"っていう歌詞は人間以外の目線ですよね。

うん。テレビ番組"めざましどようび"の書き下ろしなんですけど、"背中を押すような楽曲"っていうのは私の中ですごく難しくて、誰かを応援したくて曲を作ったということがないんですよ。極端に"頑張れ"とも言いたくないしっていうのもあって、"涙を流すために作っておいたから"っていう感じにしようと思って書きました。

-涙を流せることで救われることもあるから、涙自体が救命装置なんだと。

うん。でも朝聴いててもどんよりもしないしっていう曲になればなと思って。自分が誰にこうされたら嫌だとか、これをされたら落ち込むとか、そういうのを聴いた人が自分で気づけるようになったらいいなと思いますね。

-一瞬テンションが上がる曲って、次に悲しいニュース見たら忘れたりしますし、その悲しいニュースも忘れちゃったりするし。日々たくさんの情報に晒されて消化できないなと感じます。

そうですね。いろんな情報がありすぎて処理しきれないから、入れたら出して、入れたら出して、みたいな感じになっちゃいます。

-あいみょんさんが常に曲を作りたいのはそういう理由でもあるんですか?

そうですね。例えばインディーズの19歳のときは好きな人に対して"死ね"って歌ってました(2015年リリースのデビュー・シングル『貴方解剖純愛歌 ~死ね~』表題曲)けど、今はまったくそう思わない。そういう自分の心と身体の成長があるので、「貴方解剖純愛歌 ~死ね~」を今バージョンで書けって言われたら全然違う感じで書けるはずなんですよね。そういうのが面白くて。昨日は嫌いやった人のことを今日好きになってるかもしれないですし、そしたらまた曲の感覚がすごい変わってくるし。だからやっぱ"毎日書かないとな"と思います。

-変わっていく自分自身のドキュメントというか?

や、変わらないとダメです、人間は。インディーズからずっとやっててメジャーに行って、例えば"紅白"にも出たりしたら、みんなが"メジャーに行ったら変わるよね"って言うんやけど、"え? メジャーに行って変わらへんのやったら、メジャーに何しに来たん?"と私は思っちゃうんですよ。それ世の中にすごく言いたいですね。変わることの方が面白いのに変われへんことを意識するって面白くないなって。ちっさいころ粘土遊びしたじゃないですか。その感じ。

-作るものは変わっていきますからね。

そう。なのにみんな"変わらへんから"ってよく言うなぁって。もちろん、根本が変わらへんのはよくわかりますよ。私も絶対自分で作詞作曲するとか、そういうのはあるんですけど、人に見られることが多くなる=意識することも変わってきますし、それは変わっていかへんかったらあかんのになって思っちゃう。

-人に見られる経験をしていくと発信できることも変わっていくし。

うん。それに自分も変わっていきますね。かっこいいと思うものも変わっていきますし、昔自分がやっていたことをダサいなと感じることもありますし。そういうのはやっぱ変化していかないとなと。