チリヌルヲワカ

INTERVIEW

Japanese

チリヌルヲワカ

2018年05月号掲載

チリヌルヲワカ

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Member：ユウ（Gt/Vo）阿部耕作（Dr）

Interviewer：岡本貴之

どんな状況になろうとも絶対満たされないと思うんですよ、みんな

－ユウさんは以前、"満たされてしまったら歌詞が書けなくなるんじゃないか"っておっしゃっていましたけど、満たされたときには自分の歌詞がどうなると思いますか。

ユウ：満たされちゃったときにですか？う～ん......でもそれはありえないと思うんですよ。どんな状況になろうとも、絶対満たされないと思うんです、みんな。どんなにお金があろうとどんなに美人でモテようと、絶対満たされないと思うんです、全員が。だから絶対何かしらあると思います。不満とか、もっとこうであれば良かったとか、人がうらやましいとか、嫉妬するとか。でも、私は正直言って自分がすごく恵まれていると思っていて、不満なんて言うのはすごく贅沢な状況だと思っているんですけど、でも絶対満たされないんですよ。

阿部：歌詞で言ってるユウちゃんの哲学は、わりと自分に言い聞かせている部分があるんだろうなっていつも思うんだよね。

ユウ：そうですね。自分を戒めています。そういうものが多いです。だから、どんな状況であれ歌詞は出てくると思います。

阿部：だから、ユウちゃんはいい意味でシンガー・ソングライターなんだよね。いわゆる作詞家と違って、自分で歌うわけだから。

ユウ：でも、本当に普段の私のことをそのまま書いたらすごいことになると思うんですよ。歌詞にならないというか。そこは自分の中で線引きがあって、同じことを言うけど、カッコ良く言いたかったり、言葉を選んだりしているので。でも最近スタッフさんに、「極楽浄土」の"どうせ終わるならなぜ始まったの？"っていう歌い出しの歌詞を見て、"すごくユウちゃんの感じが出てる"って言われて。私が、ペットボトルのフタをちゃんと閉めないで置いておく習性があって（笑）。なぜかというと、"どうせまた開けるんだから閉めなくていい"っていう気持ちがあるんですよ。そういうところが歌詞に出ているって言われて。"たしかにそうだな！"って思ったんです。

阿部：ははははは（笑）。そんな物理的なことを歌った歌詞なの？

ユウ：たぶん、全部に私の思想が出ているんですよね。でも、それをそのまま"どうせまた開けるからフタは開けっ放しでいい"って歌詞にするわけにはいかないというか（笑）。

一同：（爆笑）

－それだと、ただのだらしない人の歌になっちゃいますからね（笑）。

ユウ：それを、それなりに飛躍させて表現してるんですけど。

－でもそもそも、"フタを開けっ放しにする自分"を歌おうと思って書いてるわけじゃないですよね？

阿部：ははははは（笑）。

ユウ：そうなんですよ、自然に出てるということです（笑）。私をよく知る周りの人はわかると思います。

阿部：そういう意味では、ノンフィクションでありながらフィクションであるわけだよね（笑）。

－「飾らぬヒト」の"御託並べて未来を乞うより／星眺めて時を待つ方がいい"というフレーズはすごくいいこと言うなって思いました。

ユウ：あぁ～嬉しい！

－あと、このAメロの部分って、歌い回しが歌舞伎役者の言い回しみたいなニュアンスを受けました。

ユウ：あはははは（笑）。なるほど、セリフみたいな。意識はしてなかったですけど、面白いですね。この曲に関しては、歌詞を書いているときになんかスラスラスラってこの言葉が出てきて。特になんのきっかけがあったわけでもなく。

－これもユウさんをよく知る人からすると何かが出ているかもしれない？

ユウ：そうかもしれない（笑）。でも私は、"星眺めて時を待つ方がいい"っていうタイプではないんですよ。自分に言い聞かせているというか、そういう自分になりたいっていうことですね。逆なんです。

阿部：ユウちゃんの歌詞は、文節と段落とか関係なく進んでいくのが前から面白いなと思っていて。平歌の文末の言葉からサビのメロディにまたいで乗っかってくる歌詞とかあるんですよ。"えっ、そこから歌うんだ？"っていうものがたくさんあって。わかりやすい昔ながらの歌謡曲みたいなものの感覚からすると、もう少し文節と呼応してAメロ、Bメロ、サビってメロディとの兼ね合いがあるんだけど、そういうのがないのが面白いなって昔から思ってます。

－ユウさんは歌詞以外に文章を書きたいと思ったことってないですか。

ユウ：私、文章を書くのがすっごく苦手なんですよ（笑）。昔から作文が大嫌いで。わかんないんですよね、400文字で何かを書けって言われても一切浮かばなくて。だいたい"私は～"みたいに書き始めるじゃないですか、作文って。そういう決まりごとにとらわれてしまうというか。未だに苦手で、ブログとか書くのもすごく考えちゃうし。ツイッターの限られた文章でもすっごく考えちゃうんですよ。うまくまとめられないんです。でも歌詞ってある意味、超自由じゃないですか？脈絡がなかろうが、どんな口調でもいいし、一人称が誰でもいいし、敬語でもいいしなんでもいい。だから楽しんでやれているっていうのはありますね。