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INTERVIEW

Japanese

チリヌルヲワカ

2017年05月号掲載

チリヌルヲワカ

Member:ユウ(Gt/Vo) 阿部 耕作(Dr) イワイエイキチ(Ba)

Interviewer:岡本 貴之

チリヌルヲワカ8枚目のアルバムとなる新作『きみの未来に用がある』。確立された世界観を持ちながら、実はアルバムを出すごとにまったく違う作品を作っている彼らの新作は、前作『ShowTime』のはみ出さんばかりの荒々しさや実験的なサウンドからは一転、シンプルなリズムにユウ(Gt/Vo)のヴォーカル、ギター・リフ、コーラス・ワークが映える作品だ。"唯一無二の存在になりたい"というユウの創作者としての思い、これまでと違う意外なタイトルについて、そしてチリヌルヲワカ自身の未来について話を訊いた。

-3人編成になってから1年が経ちましたね。ライヴ活動を通して感じたことはありますか?

ユウ:3人でやってみたら音に隙間ができるから、空間が生まれることで輪郭がはっきりした印象があって。そういう違いを知ることができたので、勉強になりました。絵だとしたら、描かない部分があることで在るものが活きるというか。何もない部分があるから、在るものがすごく引き立って見える感覚はありましたね。

阿部:水墨画みたいにね?

ユウ:そう、水墨画。びっしり描き込んでない絵みたいな感じですかね。

イワイ:そういう感覚は3人とも考えながらやっていたから、会話で"ここをこうしてこうやろう"っていうことではないですね。前と噛み合わせ方が違うというか、違う組み合わせ方をすることが、やりながらだんだんわかってきました。

阿部:まだまだ知らないことがあるというか、面白いものでいろんな変化がありますよね。自分の視点もどんどん変わっていくし。好みも変わるというか。

-今作を聴いたときに思ったのは、"チリヌルヲワカの音楽はこういう感じ"っていう個性はハッキリあるんですけど、考えてみるとアルバムを出すたびに全然違う作品を出すバンドだなって。

阿部:うん、たしかに全然違いますね。今回、自分は簡単に言うと好みが変わったかな。プレイひとつをとってもそうですけど。単純にシンプルにやる方がカッコいいなと思うようになって。

-今作はいつごろから制作を始めたんですか。

ユウ:年末くらいから準備を始めました。12月もツアーをやっていたので。

阿部:いつもだいたい秋くらいからなんとなく準備を始めて、年明けに録るみたいな。今回は遅めだったかな。

ユウ:ちょっと遅めだったかもしれないです。でも、春にアルバムを出すのに向けて作るというのはいつもとそんなに大差ないんですけど。曲は年の後半に集中して書きました。

-"きみの未来に用がある"というのは今までにないタイトルですね。

ユウ:そうですね。このタイトルは1曲目の「ドルチェ」の一節をタイトルにしたんですけど。私個人的に、歌詞の一節をタイトルにするというのは、1回やってみたいと思っていたんですよ。この言葉はいろんな意味に捉えられると思うし、聴く方もタイトルでいきなり"きみ"って言われると、"自分のことかな?"って、ハッとするものがあるんじゃないかなって思ったんですよね。

-たしかに、自分に向けられているようなハッとする感じはしました。今までは歌詞の一節じゃなくて、必ずタイトル曲がありましたよね。

ユウ:今までのタイトルは、人に向けたような雰囲気がそんなになかったと思うんですけど、急に人に向けたようなタイトルになるっていう意外性はあるかなって思います。

-これまではチリヌルヲワカがやっている音楽をこっちから見にいくような感覚はあったかもしれませんね。

ユウ:うん、うん。でも、こっち側がそっちを見たような雰囲気にはなるかなって。

-それはアルバム全体においてもそういうことを考えた作り方だったんですか。

ユウ:いや、特にそういうことはなかったんですね。タイトルに関してだけです。「ドルチェ」はどっちかというとラヴ・ソングというか、特定の人に向けての思いみたいな歌詞だからちょっと意味合いは違うかもしれないんですけど。

阿部:毎回、"こんなコンセプトでやろう"っていうのはそんなにないもんね。

ユウ:そうですね、そういうのはないですね。

阿部:やっていくうちにどっちに行こうかっていうのはあるとは思うんだけど、曲をひとつずつ作っていくうちに結果としてそうなったという感じですね。

-ユウさんが作った曲をスタジオで歌いながら固めていく感じなんですか? 「空想都市」(Track.7)のワルツ調になるところなんかはセッションしながらできたのかなって思ったんですが。

阿部:いや、あれはユウちゃんが作ってきた段階ですでにそうなってました。"3拍子のユウ"ですから(笑)。

ユウ:あはははは(笑)。好きですね、3拍子は。だいたい作曲の時点でそうなっているというか。メロディを作るときにアレンジはイメージとして決まっているというのはありますね。ギターに関して言うと、前回はわりとシンプルを目指したんですけど、今回はこだわりたいというか。いつもこだわってないわけじゃないんだけど(笑)、結構面白いアレンジを盛り込みたいっていう思いがありました。3人になってから、"ギタリストとしてもっと頑張らなきゃいけない"という思いがすごく強くて。音楽人生の中でその思いが一番強いんですよ。その思いが強すぎて、とにかくアレンジもギタリストとしてやれることをやり尽くしたいという一心でやりました。ただ、そんなに今までと違うことをしようという感じではないですけど。

-「ドルチェ」のギターはコーラスが特徴的なことも合わさって面白い感じがしました。

ユウ:あぁ、そうかもしれない。コーラスと呼応したようなギターにはなってますね。

-ユウさんのギターについて阿部さん、イワイさんはどう感じていますか。

阿部:一番信頼している部分は、言葉にするとなんですけど、"ロックがわかってる"ということなんで。でも、それでいて"そういうのもできるんだ"っていう未知数なところもあるから、本人には直接言わないんですけど、へぇ~って思うんですよ(笑)。もちろん上手いですけど、上手いギターが好きなわけじゃないから。テクニックの問題じゃなくて、"ロック感"があるからいいなって思うんですよね。いいギターだなって。

ユウ:でも、それは私も同じかもしれないです。自分でも自分の限界がわかってないというか。"こんなこともできるんだ!?"って自分で思いながらやってるんですよ(笑)。だから、みんなもそう思って当然というか。

阿部:自分でも驚いてるんだ(笑)?

イワイ:最初に始めたときからですけど、リズムを正確に"チャッチャッ"って弾く感じではなくて、間の辿り着き方が、日本人じゃないんですよ(笑)。"黒人じゃないの!?"っていう。

ユウ:えっ!? 知らなかった。

イワイ:別にファンク・ギターが弾けるとかではなくて、次の音符に行くまでの微妙な"そんなところで休符くるか?"っていうところで。それがまぐれだったら毎回違うけど、毎回一緒だから。

阿部:うん、たしかに。

ユウ:あぁ~なるほど。

イワイ:だから僕は作っている間、そこの"ここか"っていうポイントを聴きながら、自分のフレーズを決めていくことが多いです。

阿部:さすがベーシスト、縫うね。ベーシストは縫うよね。

イワイ:あと、"そんなのアナログ・シンセで弾けばいいじゃん"みたいなフレーズを普通にギターで弾いてくるから。