Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

チリヌルヲワカ

チリヌルヲワカ

Member:ユウ(Gt/Vo) イワイエイキチ(Ba) 阿部 耕作(Dr)

Interviewer:山口 智男

2作目の『白穴』から年1枚のペースでリリースしてきたアルバムも、今回の『太陽の居ぬ間に』で10作目。あらかじめ方向性を決めずに、そのとき持っているものをすべて出しきるというやり方で3人が作り出す"ヲワカ節"は、もはや普遍の域に達していると思わせる一方で、メンバーたちは決して声高に語ることはないものの、アルバムを作るたび繰り返してきた試行錯誤が大きな手応えに繋がったという実感があるようだ。ここからチリヌルヲワカの表現は、さらに濃密なものになっていくのだろう。

-リリースに先駆け、「トライアングル」のMVを公開したのは、アルバムのリード曲という位置づけだからだと思うのですが、「トライアングル」をリード曲に選んでアルバムの1曲目に置いたのは、今回キーになる大事な曲だからなのでしょうか?

ユウ:正直リード曲という意識はそんなにないんですよ。どれが(リードに)なってもいいと思っているので。

-それはもちろん。でも、その中から「トライアングル」を選んだわけではないですか。

ユウ:うーん、たしかに。なんだろうなぁ。はっきりした理由はないかもしれないです(笑)。

-あ、そうなんですか。個人的には、3人編成になった現在のチリヌルヲワカのことを、改めてこのタイミングで歌った曲なんじゃないか。そういう意味で大事な曲なんじゃないかって。

ユウ:そういう答えを期待していたわけですね(笑)?

-はい(笑)。

ユウ:同じことを言う人がいて、言われたとき、"あ、そうか。たしかにリード曲に相応しい"と思いましたけど、"トライアングル"っていうのは3人のことではなくて、私ひとりのことなんです。私ひとりっていうか、主人公は誰でもいいんですけど、その主人公ひとりの人生としての話なんです。"トライアングル"ってタイトルは、上から見た景色と下から見た景色、そのどっちでもないまっすぐな景色っていう3つの視点というイメージから付けたんですよ。

-なるほど。1番で"7合目を過ぎたあたりで"、そして2番では"7M過ぎたあたりで"と歌っていらっしゃるじゃないですか。だから、"7"という数字には何か意味があるんじゃないかと思っていろいろ考えたら、3人になって最初にリリースした『ShowTime』(2016年)というアルバムがちょうど7枚目だったんですよ。

イワイ:なるほど!

-だから、『ShowTime』を過ぎたあたりからバンドに取り組む気持ちが変わったのかなと。

ユウ:そうか。それいいですね。そういうことにしたいです(笑)。

-つまり、そうではないんですね(笑)。

阿部:でも、そうやって作者が意図しないところを読んでもらえるっていいことですよね。

ユウ:それは嬉しいです。

阿部:じゃないと、作った人の意図だけっていうんじゃ作品が膨らまない。

ユウ:だから、否定はしたくないです。"そうじゃありません"とは言いたくないというか、逆に"そうかもしれないし"って言いたい。

-そういう受け止め方もありだと?

ユウ:はい、それはもちろん。

―「トライアングル」の読みは違いましたけど、今回バンドをやることとか、音楽を作ることとか、表現することとかに対する思いを歌った曲が他にもいくつかあるように感じました。

ユウ:そうですね。そういう曲を多くしようと狙ってはいないですけど、自然と自分の人生を重ね合わせたようなものになってしまうっていうのはありますね。たしかに、今回は特に自分の音楽人生をいろいろ考えてたかもしれないです。音楽人生を振り返って――と言っても、"こんなことがありました"みたいに具体的に書いているわけじゃないんですけど、年齢的にもキャリア的にも考える時期だったのかもしれないですね。"いつまでやれるんだろう"って考えるようになったことが出ちゃっているとは思います。

-そうなると、「トライアングル」も音楽人生を振り返っているように聴こえるのですが、今回ご自分の音楽人生を考えて、何か答えは見つかったのでしょうか?

ユウ:答えは見つからないですけど(笑)、例えばどの曲に感じましたか?

-また違うと言われちゃうと困るんですけど(笑)、「バッドエンディング」とか「前ストロ」とか、ひょっとしたら「太陽の居ぬ間に」、「化 ス」もそうかな。おっしゃったように、どれも"音楽人生を振り返りました"と具体的に書いている曲ではないんですけど、なんかそんなことが感じられたんです。

ユウ:"いつまでも続くもんじゃないぞ"という思いは常にある気がします。それは音楽に限らず、若さとか、幸せとかもいつまでも続くものじゃないという儚さを、歌詞を書いているときに感じることが多いので、それが反映される感じではありますけどね。

-ところで、今回のアルバムを作るにあたっては、どんな作品にしようと?

阿部:曲ごとにですよね。アルバム・タイトルにしてもヴィジュアルにしても、最初にイメージがしっかりあるわけではないんです。ジャケットもずっと同じ人にやってもらっているんですけど、ほとんどお任せでこっちから細かいことは言わないんですよ。作る前にアルバムのコンセプトを考えたってことって、これまで1回もないよね?

ユウ:はい。1回もないし、私はあらかじめコンセプトがあって、そこに向けて作るよりも、自分でもどんな感じになるのかわからないくらいの方がいいかなと思っているし、最初から答えが見えているよりも、最終的にどんなものができるのかわからないまま自分も楽しみにしていたいんです。

-では、できあがったとき、どんな作品になったという手応えがありましたか?

ユウ:私の作る曲の中での王道の曲が集まった感じがありました。いつもそうだと言えばそうなんですけど、今回は特に王道に行ったアルバムになったと思います。無理していないというか、ほんとに自然にこうなりましたみたいなアルバムです。ただ、聴いた人の感想を聞くと、意外にそういうふうに捉えられていないような気もして、あれ、違うのかなって。

-なぜこのタイミングで王道に行ったんだと思いますか?

ユウ:いつもそうなんですけど、アルバムを作るたびに出し切った感がすごくて、今回は特に私から出るもの全部搾り出しましたという感じがしたんです。だから、この次はどうなるかわかりませんというのもあるんですけど、でも、毎回全国ツアーを終えたあとに、"今回のアルバムはこういう作品だったんだ"っていうのがわかるから、今はまだちょっとわからないですね。

阿部:たしかに、いつも時間が経ってからの方がわかるよね。

ユウ:ライヴでいっぱいやって、この曲ってこんなに盛り上がる曲だったんだとか、こういう立ち位置の曲だったんだとかっていうのがわかるんですよ。

-じゃあ、ツアーが終わったとき、改めて話を聞かせてもらわないと(笑)。

ユウ:はい。ぜひお願いします(笑)。