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INTERVIEW

Japanese

phatmans after school

2017年12月号掲載

phatmans after school

saji(ex-phatmans after school)

Official Site

Member:ヨシダタクミ(Vo/Gt) ユタニシンヤ(Gt) ヤマザキヨシミツ(Ba)

Interviewer:秦 理絵

-江戸時代の文献とかにも出てくるって言いますよね。

ヨシダ:だから、ずーっと同じことの繰り返しなんです。人間はすべからく欲望に負けていく。あとは失敗しないと、人間は成長しない、過ちを繰り返す。

-つまり、この曲は過ちを犯したあとの世界。

ヨシダ:そうなんです。でも僕はバッド・エンドが嫌いなので、最終的には"いろいろなことを積み重ねて進んで行け!"っていうものにはしてますけどね。"生こうぜ"って。

-なるほど。「クリスマスタウン」なんかもバンドとしては新機軸ですね。コーラス・ワークから始まるっていうのもクリスマスっぽくて。

ヨシダ:完全にノリがモータウンですよね。デトロイトな感じの。この曲は1~2年ぐらい前にチャレンジしようと思ったんですけど、ハマらなかったんです。で、今回また冬にアルバムを出せるのでやってみました。子供のためのパレードみたいな曲ですね。

-子供のための?

ヨシダ:なんとなく、子供が聴いてワクワクするものにしたかったんです。この曲の歌詞は、自分も自分のお父さんもそのまたおじいちゃんもサンタクロースに会っているっていう物語なんですよ。それはどういうことかと言うと、自分の父ちゃんは自分が子供のころサンタクロースになってくれてたんです。で、自分の父ちゃんも子供のころ、自分のおじいちゃんがサンタクロースになってくれてた。っていうことは、僕も大人になったら、自分の子どものサンタクロースになるっていうことなんですよね。

-代々サンタの役をお父さんがやっていると、その子供は知ってるんですね。

ヨシダ:ちゃんと"サンタはいる"って信じさせる家もあるかもしれないんですけど。そうじゃないのもきれいじゃないですか。子供のための魔法が素敵だなと思ったんですよね。

-ちなみに、今回のアルバムを『ボクノバアイハ』(2011年リリースのメジャー・デビュー・ミニ・アルバム)のアンサーになる作品にしようと思ったのは、どのタイミングだったんですか?

ヨシダ:いつか『ボクノバアイハ』のアンサーになる作品を作りたいっていうのはあったんですよ。でも、いまのタイミングかは悩んでて。アルバム・タイトルはカタカナ7文字っていう縛りにしてるんですけど、それを考えたときに、"そもそもアルバム・タイトルってそんなに記憶に残るか?"と思ったんです。それは悪い意味じゃなくて。例えば"アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)のアルバム良かったよね、あの「リライト」が入ってるやつ""あぁ、『ソルファ』ね"っていう感じじゃないですか。だからそこに意味を持たせるよりもイメージがわかりやすい方がいいのかなと思って。"キミノバアイハ"っていう字面を見たときに、"そういえば、似たようなアルバムが前にあったな"って思い出してくれたら、"アンサーがくるのかな?"っていう想像できる。そういうものにしたかったんです。

-『ボクノバアイハ』っていうのは、自分をわかってほしいアルバムだったわけですよね。

ヨシダ:はい。

-その答えとして『キミノバアイハ』では何を表現したいと思ったんですか?

ヨシダ:さっき言った話と少し重複するんですけど、昔の僕は誰に向かって音楽をやってるのかわかってなかったんです。自分たちのことで精一杯だったので、何かを伝えるっていうところにはいけなかった。でもいまは年齢なりにいろいろなものが見えてきたときに、じゃあ、"僕"と"君"ってどれぐらい違うのか? って考えるんですよ。そんなに大差はないんじゃないかって。君のために歌うっていうことは、僕のことでもあるっていうか。

-わかります。

ヨシダ:だから『ボクノバアイハ』は"僕はこういう人間です"っていうアルバムだったんですけど、今回の『キミノバアイハ』っていうのは、"君のことはわからないけど、僕は君のことをこう思ってる。だから、君の場合はどう?"って問い掛けてるんですよね。

-いま言ってた"僕と君が大差ない"っていうのを象徴してるのが、8曲目の「kakemeguru」と12曲目の「アノニマス」ですよね。この2曲は対みたいになってて、それぞれ"君らしさ"と"僕らしさ"は何かっていうことを歌ってますよね。

ヨシダ:そうなんですよね。実は「アノニマス」を作ったのは何年か前なので、正直、当時どういう気持ちで書いたかはあんまり覚えてないんですけど、歌詞はほぼ変えてないんです。「kakemeguru」で、"君らしくいけばいいさ"って歌ってるんだけど、そもそも自分らしさって何か? ってなったときに、それを正しく説明できる人なんていないんですよ。だから、みんな悩みを抱えて生きてるし、つらいんですよね。そういう吐き出したくても吐き出せないつらさが「アノニマス」にはそのまま歌詞に出てるんです。

-以前収録しなかった曲を、どうして今回のアルバムには入れようと思ったんですか?

ヨシダ:なんだろうな......この曲では最後の方で"伝わらないから/考えてしまうんだよ"って歌ってるんですけど。人って自分の気持ちを100パーセント伝えることはできないんですよ。だから"通信"っていうのは、気持ちが通じると信じるって書きますからね。"受信"は受け取ったと信じる。そうやって伝わると、期待することは"僕ら人と人とが触れ合う意味"だと思うんです。結局人間はひとりで生きていくしかないんだけど、横には誰かがいるわけじゃないですか。そこで"あ、君もつらかったんだ"っていうことを伝え合って、誰かが横にいてくれると信じて、この世界は進んでいく。この曲ではそういうことを歌ってるから、改めていい歌詞だなと思って、ちゃんと録らないといけないなと思ったんです。