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INTERVIEW

Japanese

モーモールルギャバン

2017年06月号掲載

モーモールルギャバン

Member:ゲイリー・ビッチェ(Dr/Vo) ユコ=カティ(Key/Vo/銅鑼) T-マルガリータ(Ba)

Interviewer:沖 さやこ

-今回は前作以上にシンプルで音数が少ないと思いました。ライヴ・アレンジ的というか。

ゲイリー:同期を使うと同期に合わせてる感がライヴに出ちゃうので。ライヴで人の手ではない音を使いたくないというのがあって、作品もそういうライヴ感満載なものにはなったなと思います。クリックも聴かずに好き勝手にドラムを叩いて――

ユコ:それはずっとそうだよ(笑)?

ゲイリー:まぁそうなんだけど(笑)。クリックを聴かず、バンドで出す以外の音を入れない人はたぶんいまは少数派だと思うので、"ジャンルはJ-POPです"とは言っているけれど、俺たちもしかしたらすっげーロックかもしんない! と思いながら作品は作ってます。足し算で盛るよりも、引き算で成立する音楽の方が絶対にかっこいいんですよ。難しいですけどね。

ユコ:ライヴで3人で再現できないことはやらないようにしているから、3人でできないなと思ったら別の方法論を考えています。前回よりは演奏に迷いが出ないように......というのはすごく意識していました。やっぱりレコーディングするとなるとCDとして残るわけだから、"これでいいのかな......"と迷いながら演奏することもあるでしょう?

マル:ない。

ユコ:ない!? そう! かっこいいですね。迷うのは私だけでした(笑)。

ゲイリー:違うの、迷ってないわけじゃないの。迷わないところに自分を追い込んでるの!

ユコ:(笑)音を出すときに迷っていると、パフォーマンスが良くないんですよ。だから思い切って"これが正解だ!"と思ったことを弾くようにしましたね。ライヴをしているときはそういうスタンスで演奏しているので、それに近いかたちで音が録れたかなという感じはしますね。

マル:デモにベースも入っていたので、そのとおりに弾いて。いかにかっこよく弾くか、それだけを考えました。

-そうですね。"いかにかっこよく演奏するか"というのはすべてのプレイから強く感じます。

ゲイリー:昔からそういうつもりでレコーディングしてきたんですけど、どうしても昔は下手だったんですよね(笑)。頑張っている人は美しいんですけど、頑張るだけじゃどうにもならないことは、すごくたくさんあって。ようやく"頑張ったなりの演奏"が音になるようにはなってきましたね。"頑張ってる感は出てるけどビートが揺れ揺れ"みたいな作品をいくつも出しちゃってるので(笑)。

ユコ:そのときの精一杯は出してたんだけどね(笑)。

-いやいや。昔だっていいアルバムがいっぱいありますし、聴くと感動しますよ。

ゲイリー:"誰だこの下手くそなドラムは! あ、俺か"という、もうこれは作品を作った当事者あるあるですよね(笑)。でも、そう思えるのは成長できているということなので。毎日飲んだくれているわりには、俺ってすげぇな~......って。単なる自画自賛ですけど(笑)。

-『ヤンキーとKISS』はあまり演奏で無理をしていない気も。

ユコ:小難しいことをやるテクニック系なわけでもないですし。

ゲイリー:音の存在感、という意味でのテクニック系ではあるけどね(笑)? 難しいことはできないですけど、俺の音は俺しか出せないので、俺というテクニック! 良くも悪くもできないことをしなくなった。やっぱり若いうちは自分にできないことばかり見えてしまうので、"できないことをできるようになりたい"という、なにくそ根性で生きているところがすごくあると思うんですけど、最近は自分に向いてないと思ったら"無理!"という諦めが早くなった(笑)。できることを120パーセントやるようにしています。

ユコ:自分の持ち味というのをいい加減わかってきたころでもあるので(笑)、下手くそな背伸びはせず、できることをちゃんときっちりやる。そういうところにはやっとこれたよね。

ゲイリー:そうねぇ、おっさんになったしね(笑)。


こういう生き方がひとりでも多くの人に伝わったら、世界が平和になる


-おっさんおっさん言いすぎですよ(笑)。ゲイリーさんが今回の曲を作るうえでテーマにしていたものなどはありましたか?

ゲイリー:QUEEN、ですね!

-(笑)たしかに1曲、もろQUEENの曲がありましたけど。

ゲイリー:もろQUEENだったので、調子に乗って"ロックミュージック"(Track.6)というタイトルをつけちゃったんですけど(笑)。POLYSICSのハヤシさんに"モーモールルギャバンは古き良きものを好む最後の世代だよね"と言っていただいたんです。僕は音楽はQUEENが好きだし、歌詞は村下孝蔵さん、中島みゆきさん、甲本ヒロトさんが好きだし。古き良きものを、いまの若者が――さっき自分のことを"おっさん"と言いましたけど(笑)、いまの若者の言葉でかたちにしていくことに意義があるだろうと信じて作りました。

-先人に挑む?

ゲイリー:挑んでないです(笑)。だって中島みゆきさんの歌詞と自分の歌詞を見比べて毎日のように絶望してますもん! 俺はなんてくだらない人間なんだ!......でもいいんです。中島みゆきさんと自分を常に比較していると、一生調子に乗らずに済むからそれくらいでいいんです! 僕の書いているものは基本的にただの酔っぱらいの戯言なので。今回もコンセプトとかを何も考えずに好きなように作ってます。

-そうですか。"ヤンキーとKISS"というタイトルが意味深なので、何か物語があるのかと。

ゲイリー:ヤンキーやバンドマンに絡まれたりしたら、男同士だとどうしても拳でいきがちじゃないですか。でもキスするとだいたい相手がひるんで逃げるんですよ。

ユコ:......これ、ノンフィクションなのがびっくりですよね(笑)。

ゲイリー:私という人間がここまで生きてこれたのは、ヤンキーに絡まれてもキスしてきたからだ! 俺が逃げるんじゃなくて、向こうが逃げますからね(笑)。こういう生き方がひとりでも多くの人に伝わったら、世界が平和になる――そういう願いを込めて。