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INTERVIEW

Japanese

Poet-type.M

2015年10月号掲載

Poet-type.M

Member:門田匡陽

Interviewer:石角 友香

-Track.5の「プリンスとプリンセス(Nursery Rhymes ep4)」、この門田さんと楢原さんのふたりだけの曲はミニ・アルバムの中でアクセントになってる気がします。

"Nursery Rhymes"って副題をつけてるシリーズなんですけど、それはやっぱり他の曲よりもヴォリュームを落としたいっていうのはいつもあるんです。春盤では「泥棒猫かく語りき」(Nursery Rhymes ep3)っていうのを僕と大地だけでやってるんですね。誰かと誰かで終わらせたいなって思ってて、今回それがならやん(楢原)とだったんです。夏盤はバンドになっちゃったんだけど、箸休め。でもその箸休めも、今回は強引にハッピーエンドで自分の中で終わらせてしまった。それはちょっと悲しいですね。

-強引にハッピーエンドで終わらせないといけないぐらい現実が禍々しい?

俺は最初、小さな子供に向けた"白雪姫"みたいに"昔むかしこういう話があってね"っていうふうに話してるつもりだったんです。でもそれの結末が何年か前に流行った大人が読む怖いグリム童話だったんです。だからしょうがないなと思って。

-この曲も"もう来ない秋のメモリー"という詞などに終わりを見て取れますね。

ディストピアだし、"Dark & Dark"が報われるわけがないなとは最初から思ってたんです。しかも春に始まって冬に終わる。これが何か象徴してるんじゃないかな?と思って。春に終わるものだったら、ひょっとしたらまた違う発想だったかもしれないです。でも、冬に終わることで、今の自分の心境というか、現実に対して抱いてる思いが負の方にすごく引きずられるんです。形にしないといけない負の部分に、ですね。そこにだんだん季節と僕が追いついてきちゃったんですよね。だから"Nursery Rhymes"っていう小曲シリーズは、こういうお伽話がありました、めでたしめでたしっていうところで終わらせるつもりだったんですけど、そうはならなかった。

-タイトル・チューンのTrack.6「性器を無くしたアンドロイド(Dystopia)」の、話しかけるぐらいのテンションと穏やかなメロディに乗せてすごく厳しいことを言い放つバランスはどこから?

この曲に関しては、まずどうして日本人はテンションとかモチベーションとか感情論とか、そういったものにこうも左右される国民性なんだろう?っていう気持ち悪さがずっとあるんですよ。それがないだけでめちゃくちゃ叩かれたりするじゃないですか? 例えばちょっと有名な誰かが何か言ってることの真実や是非ではなくて、"言い方が気に入らない"とか"その気にしなさが気に入らない"と。そう言われても、あんたが直接言われたわけじゃないんだから、別にいいじゃんってところなんですけどね。でも外野がやかましく言う、みたいな。そういう、ことの是非よりも感情の方が偉いみたいな国になってるんですよね。

-SNSが発達したことによって顕在化しましたよね。ここぞとばかりに......反論ですらないというリンチみたいなことが起こる。

だから寛容さもないし、感情にコミットしてくるものでないと正義ではないみたいな。"ドラ泣き"なんてまさにそうですよ。マジで下品な言葉だと思いますよ。そんなの広告代理店的な発想で作品作ってるだけですって、言ってるようなものじゃないですか? もうそういうのが電車とかに乗って目に入るたびにものすごく嫌悪感を覚えるんですよね。そこは観てる人に任せりゃいいじゃないですか。観てる人に委ねていい部分なのに"一緒にドラ泣きしましょう"とか、そんなの正義じゃないです。そういうものが世の中に溢れすぎて、感情感情感情感情になってんですよね。だから人はメンタルを気にするし、そういう目に見えないものをそんなに拝み崇めて、宗教と変わらなくなるぞっていう。そう、だから"クソメンタル"って歌ってるんですよ。

-メンタルの弱さに対する攻撃かと思ったけど、そういうことじゃない?

そういうことじゃないです。"メンタル弱いからしっかりしようぜ"っていうことではない。"で、あんたが気にしてるそれは何?"ですよね。

-夏盤のテーマが"情報"だったじゃないですか? そして今回はさらにその情報を今、人がどういうテンションで発しているかを描いている。原因を背負って秋盤に繋がっているんだなと。

結局そうなっちゃうんですよ。音楽は音楽としてやりたいんですけど、でももう"Dark & Dark"っていう性格上、そこはしょうがないんです。

-現実の東京に限りなく近いとしたら、そこは......。

そうなっちゃうんです。結局今、僕が住んでる街の話になってしまう。

-でも音楽的な楽しみはすごくいっぱいあるのでは?

そうですね、楽しいんですよね。だからそれがまた困るんですよ。自分のやれることの限界が見えていたらどこかで納得できるんですけど、やればやるほど楽しいから困っちゃうんです。まぁでも最初期に想定してたことで唯一、守ってることが"だんだん良くなる"ってことですね。春盤よりも夏の方が良かったし、夏盤よりも秋のほうが良かった。それはできてると思う。