Japanese
The Mirraz
2016年02月号掲載
Member:畠山 承平(Vo/Gt)
Interviewer:山口 智男
『マジか。と つーか、E.P.』と『パンドラの箱、ツンデレっすね』という前2作でEDMにアプローチして、ファンを驚かせたThe Mirraz。しかし、1年4ヶ月ぶりにリリースする最新アルバム『しるぶぷれっ!!!』を聴けば、彼らの目標が単にEDMに止まるものではないことがわかるはず。The Mirrazが大胆にシンセ・サウンドを導入するにまで至った経緯とそこで目指したものを、バンドのフロントマン、畠山承平が激白。結成10周年を迎える今年はさらなる変化の年になりそうだ。
-2015年はThe Mirrazにとっていろいろ変化がありましたね。どんな1年でしたか?
来年10周年なんですよ。来年っていうか、今年の9月から10周年っていうんですかね。もう10年もやってきてるっていう現実に、俺は気づいてなかったんですけど、たぶん最初の5年ぐらいは忙しくて、よくわからないうちにばーって進んで。で、"気づいたらもう10周年近いです"という1年だったんですよ、2015年は。自分的にはThe Mirrazとしてこれからもずっと活動していくためにどうやっていくかってことをものすごく考えさせられました。"新世代"って枕詞がつくバンドが今ものすごくたくさん出てきているじゃないですか。そうしたらいきなり"新木場STUDIO COASTでライヴやります"みたいな(笑)。俺らの世代って、すげえ頑張ってやっとCOASTでやって、そこからさらに先へ進める人たちは日本武道館でやったかもしれないけど。みんながトントン拍子に活動していたわけではなかった。まぁ、今のバンドもみんながそういうわけではないと思うんですけど、トントン拍子にいけてるバンドの数は増えてるって印象はある。そういうふうに時代がどんどん変わっていく中で、The Mirrazはこれからどういうやっていくのか1年考えましたね。今もまだ全然考えてますけど。
-じゃあ、まだはっきりとした答えは見つかっていない?
そうですね。世代がものすごく変わりましたよね。J-ROCKに影響を受けたJ-ROCKが今、めっちゃ増えてるんですよ。俺、J-ROCKはほとんど興味ないし、ほぼ影響を受けてない。むしろ反対のことをやりたいぐらいの気持ちで活動してたんですけど、そうしたら(音楽シーンの)中心がJ-ROCKになってしまったんで、"あれ、どうすんのこれから"という感じはありますよね。まぁ、そういう時代の変化を感じてるので、今はっきりした答えを出しても来年また変わるかもしれないし。
-でも、10年やってきたんだから、もう周りのことを気にせずやりたいことをやっていくという選択肢もありますよね?
もちろん、"The Mirraz"っていう独自の道を、世の中と関係なく作り上げていきたいという気持ちがあるんですけど、でも、それがただ古臭かったら面白くないと思うんですよ。時代遅れになってたら意味がない。音楽ってやっぱり流行り廃りの世界で、その中で自分の個性で進んでいけるだけの力を持ちながら、みんなが求めているものを提供するためにどうするのか。流行を追うだけじゃ意味はないと思うんですけど、流行りを知ったうえで、自分たちはどうするのかっていうのは、すごく考えてますね。特にこの2年ぐらいは。
-そこで見出した、時代と向き合うための方向性が今作『しるぶぷれっ!!!』のEDMだった、と?
EDMに関しては、そこまで答えが見つかってない段階でやり始めたってところはあるんですよ。どちらかというと、もともと嫌悪してたジャンルだったし(笑)。そもそも俺、そんなパーティー・ピーポーじゃないんで(笑)。そこも偏見で、"EDMって流行ってるらしい。でも、超チャラいじゃん"というイメージがあったんですけど、いろいろ聴いているうちに、"この部分はかっこいい"とか、"このシンセの音は新しい"とか気づき始めて。これとヴィンテージ・ギターの音を足したら新しいジャンルが作れるなって、そういうアイディアも湧いてきて、そんなふうに実験的に始めたところはありましたね。そのときはEDMの要素を取り入れて、流行りの音もやってますってアピールをしたかったというよりは、単純にサウンドとしてかっこいいものを作りたかったんです。シンセの音を取り入れることは、前作の『OPPORTUNITY』(2014年リリースの7thアルバム)からやりたくて。でも、入れるきっかけがなかったんですよ。前のアルバムで普通に同期でやっちゃってもよかったんですけど、そのときはThe Mirrazは生音でやってるバンドってイメージを壊せなくて。
-あえてギターでやったとおっしゃってましたよね。
そうそうそう。それがEDMってキーワードが浮かんだことで、普通にシンセを使えるって思えたんで、いいきっかけになりましたね。それもあるし、EDMのフェスを映像で観たりして。最近アメリカだと普通にポップスがEDMのようなサウンドになってますけど、フェスを見ていると、ロック・フェスとはまた違うノリがあって、ディズニーランドのような感じやお客さんが楽しんでる雰囲気って、今のロックにないなと思ったんです。そういう楽しみ方がThe Mirrazのライヴに加わったら、他のバンドがやってないし面白いっていう考えもありましたね。
-最近、日本でもEDMを取り入れているロック・バンドって増えてきましたけど、それでもアルバムの中の1曲か2曲。アルバム全曲でシンセ・サウンドを取り入れているってThe Mirrazぐらいじゃないですか? そこは冒険だったんじゃないか、と。
最初に今回のアルバムで何がしたかったかというと、1stアルバム(2008年リリース『OUI!OUI!OUI!』)のときのような勢いが欲しかったんですよ、バンドとしての。今回8枚目なんですけど、どんどん玄人好みというか、自分が音楽にストイックになってきていて、メジャーからリリースした1枚目のアルバム(2013年リリース『選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ』)もシングルはわかりやすい曲にしたけど、洋楽的すぎて難しかったかなって感じてて。でも、自分的にはゆるめの音楽が好きになってきて、曲作りする中でThe Mirrazでこれやる必要あるのかっていう曲がいろいろ出てきたんですよ。The Mirrazは俺のワンマン・バンドなんで、俺が好きなことをやったらそれがThe Mirrazだと思ってたから、何をやってもいいやと思ってたんです。でも、なんとなくThe Mirrazのイメージって固まってるなって気がしてきて。お客さんから何かを求められてるっていうふうにも感じ始めてもいたし。でも、そこで"もう一切、速い曲やる気ないし"っていう姿勢でやって、それが伝わらないまま終了ってなってしまっても違うし。ああ、それでみんなソロ活動を始めるわけかってそのときやっとわかったんです(笑)。あとやっぱり、メジャーにいってレコード会社からすごく言われたんですよ。"The Mirrazはこれをやってください"って。でも、それって契約したときの話と違うじゃんって(笑)。"これまでこういうことをやってきたんで、次はこういうことをやるつもりです。今まで通り好きなことをやっていくつもりですからね"って話して契約したのに、実際シングルを作ったら、"これダメ"、"この歌詞ダメ"、"全部ダメ"って。"じゃあ何したらいいんですか?"って伝えたら、1stアルバムの「CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい」とか「僕はスーパーマン(ruirui)」っていわれて、"はぁ?!そんなの今さらやってどうすんの?"て思ったんですけど(笑)、レコード会社の人はThe Mirrazにそういうイメージを持ってたみたいでした。わかりやすいからだと思うんですけど、そのプレッシャーと呪縛が結構あって、歌詞も縛りがあるし。「真夏の屯田兵 ~yeah! yeah! yeah!~」(2013年リリースのミニ・アルバム『夏を好きになるための6の法則』収録)も「気持ち悪りぃ」(2012年リリースのメジャー1stシングル表題曲)も歌詞を結構変えたんですよ。それでも散々言われたのが"歌詞が個人的すぎるよね。みんなが共感しないよね"って。また、"はぁ?! じゃあ、なんでThe Mirrazやりたいって言ったの!?"って感じですよ、俺からしたら。むしろThe Mirrazってそれじゃん。みんなが個人的に抱えながら、なかなか言い出せない気持ちをさらっと言ってるからかっこよかったんじゃないの!って感じだったんで、それがダメって言われたら何を書いたらいいかわからないし、何をやったらいいのってなっちゃって。それが2~3年ぐらい続いてたんです。そういう経緯があって自分たちの武器でどうやって戦っていくかを悩んで作ったのが前作で、The Mirrazの面白い要素とNGワードを使わずに曲を作るってことをめっちゃ必死こいてやりました。そういうことが売れるために磨かなきゃいけない技術だと思わされてやってきたので、それが作曲のセオリーになってしまって。それでどうしたらいいかわからなかったんですけど、今回のアルバムに関しては......いや、でも、1stアルバムみたいに自分がやりたいことをやってる感じも出したかったし、The Mirrazらしく新しいことに挑戦してるところも出したかった。それもあって全編シンセを入れたんですけど、テンポも含めるとEDMっぽい曲って半分ぐらいかな。遅めの曲だったり、ちょっと速めの曲はEDMっぽいシンセを足しているだけで、あまりEDMという意識はない。そういう曲が何曲かあるんですけど、それは『OPPORTUNITY』のときからずっとやりたかったんですね。だから今回、推し曲はちゃんとThe Mirrazらしく攻撃的でノリもよくて、且つ新しいことに挑戦してるというものにしたいと思って。「マジか。そう来たか、やっぱそう来ますよね。はいはい、ですよね、知ってます。」(Track.1)、「パンドラの箱、ツンデレっすね」(Track.5)、「つーか、っつーか」(Track.6)はThe Mirrazらしいイメージを意識しつつ、EDMの要素を足しました。テンポが遅い曲は前作からやりたかったし、アルバムはやりたいことをやろうって作ったんで、それで全部シンセでもいいかなって。まぁ、他にもいっぱい理由があって。
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