Japanese
sora tob sakana
Skream! マガジン 2019年03月号掲載
2019.02.17 @Zepp Tokyo
Writer 宮﨑 大樹
ポスト・ロック、エレクトロニカを軸にしたクオリティの高い楽曲に定評のある4人組ガールズ・グループ、"オサカナ"ことsora tob sakana。彼女たちの主催ライヴ"sora tob sakana presents「天体の音楽会 Vol.2」"がZepp Tokyoにて開催された。本イベントにはアイドル・グループのほか、バンド、アニソン・シンガーと形態は違えど、いずれも高い音楽性で魅了するアーティストたちが集結。転換には豪華DJも出演し、5時間余りも音楽が鳴りっぱなしの音楽好きにはたまらない一夜となった。

ポップなSEに乗って登場したのは、オープニング・アクトを務める事務所の後輩グループ、パンダみっく。高速スラップ・ベースが心地よいノリを生むファンク・サウンドにポップなメロディを乗せた「好きな曜日はxx」がこの日のオープニング・チューンとなった。メンバー全員が10代前半で、まだあどけなさの残るルックスの少女たちがこういったジャンルの曲を歌い上げるという、そのアンバランスな魅力は、先輩譲りのものと言えるだろう。そんな彼女たちは2019年1月に山縣絆奈、辻村羽来のふたりが加入し、中嶋莉緒、野邑仁衣菜との新体制でスタートしたばかりだが、とても日が浅いとは思えない堂々としたパフォーマンスでこの日の開幕を見事に飾った。

続いては4人組バンドのPAELLAS。「daydream boat」でのMATTON(Vo)の甘美な歌声が響き渡った瞬間から、Zepp Tokyoの空気感がPAELLASの都会的な世界観に様変わりした。楽器隊の鳴らすサウンドにも色気があり、MATTONの儚げなヴォーカルを生かしつつも適度にそれぞれが個性を主張している。MCではMATTONが"今作品を作っていて、今日が2019年初めてのライヴ。またこれからどこかで会えたらいいな"と、初めてPAELLASを観た人も多いであろう会場に照れ臭そうに語った。クールな音楽を奏でつつも、どこか温かみも感じるような彼らの楽曲は、そんな人柄から滲み出たものなのかもしれない。

冒頭でも触れたが、この日は転換をDJタイムとしており、DJピエール中野(凛として時雨)とDÉ DÉ MOUSEがそれぞれDJプレイを務めた。ピエール中野はPerfumeやNegicco、TRFなどのポップ・ソングを、DÉ DÉ MOUSEはダンス・ミュージックを中心にセレクトし、個性際立つアプローチで場を温めた。両者とも複数回プレイしていたが、回を重ねるごとに会場をホームに変えていく姿は観ていて爽快であった。

この日唯一のアニソン・シンガーとして出演したYURiKAは、冒頭に「Dive into the colors」、「鏡面の波」を披露。この2曲は、sora tob sakanaのサウンド・プロデューサーである照井順政が作詞作曲を手掛けており、この楽曲提供がきっかけで今回の出演オファーがあったという。YURiKAのライヴを観るのは初めてという人も多かったように見受けられたが、いい意味でアニソンらしくない2曲を披露すると、すぐに温かく迎え入れらえたようだった。楽曲だけでなく天真爛漫なキャラクターでも観客を引き込み、その後はキャッチーなアニソンも披露。手拍子が起きるなど会場に一体感を生んだ。

次に、白で統一された装いでJYOCHOが登場。ライトハンドをはじめとした、だいじろー(Gt/Cho)の凄まじいテクニックを目の当たりにした観客から漏れた感嘆の声が、2階の関係者エリアまで聞こえてきた。小気味いいドラム、身体を揺らしながら堅実に奏でるベース、バンド・サウンドに映えるフルートの音色、楽器のひとつのように聴こえる猫田ねたこ(Vo/Key)の滑らかな歌声、それらすべてが合わさった極上のグッド・ミュージックで会場が満たされていく。とりわけ、だいじろーが"オサカナとは相性がいい"と語ってスタートした「sugoi kawaii JYOCHO」は圧巻のパフォーマンスだった。MCでは、3月13日にリリースされるsora tob sakanaのニュー・アルバム『World Fragment Tour』に、だいじろーが提供した曲が収録されることも触れられ、今後の楽しみも増すようなステージだった。

続いては、ブラック・ミュージックを基盤とした音楽性の高さが魅力のアイドル・グループ、フィロソフィーのダンス。sora tob sakanaと音楽のジャンルは異なるが、その親和性は高いようで、ライヴ定番曲を中心とした攻めのセットリストに対し、会場全体が振りコピやシンガロングで応えるなど、さながらワンマン・ライヴのような一体感のある盛り上がりを見せていた。大人の魅力も溢れるような、カラフルで華のあるパフォーマンスを見せた彼女たちは、あっという間に5曲を駆け抜けてステージをあとにした。

バンドとしてはこの日最後に出演したTempalayは「素晴らしき世界」からスタート。洋楽ライクなサウンドを感じさせつつ、どのジャンルにも属さないような彼らの音楽性は、個性派揃いのこの日のラインナップでも強い存在感を放っていた。ダンサブルなナンバーやラップを用いた曲など、彼らの音楽はバリエーション豊かでどれも中毒性が高く、観客も食い入るように彼らを見つめていた。存在感の塊のようなバンドは、音楽好きのオーディエンスたちの心にくっきりと爪痕を残したようだ。

オープニング・アクトからおよそ4時間半。最後のDJを務めたDJピエール中野のプレイで温まりきった空間に、インスト曲「whale song」が響き渡る。いよいよsora tob sakana band setの登場だ。インストから流れるように披露した「New Stranger」のオリジナル音源は、散りばめられたチップチューン風のサウンドが心地よさを生むが、今回は生バンドならではの熱量のある音を鳴らし、この曲のもうひとつの表情を見せた。sora tob sakanaのライヴを観るたびに感動させられるのは、透き通るようなユニゾンの美しさなのだが、この日もその魅力は健在。ユニゾンはどうしても個性が潰れがちなのだが、彼女たちの場合はsora tob sakanaというひとりの声に聴こえるような不思議な感覚がある。メンバーの身長も近いためダンスもより揃って見栄えよく、聴覚的にも視覚的にも高いクオリティには思わず唸らされた。この日、新作『World Fragment Tour』から披露された「WALK」は、未来に歩き出すような希望に満ちた1曲。Zepp Tokyoを幸福感で満たすとともに、アルバムのリリースをますます楽しみにさせてくれた。最後は彼女たちのアンセム「夜空を全部」を披露し、ファンも最後の力を振り絞るような声援で応えてイベントは大団円を迎えた。
ジャンルや形態を超え、上質な音楽を鳴らし続けたこの日の集いは、まさに国境のない天体で行われた音楽会のようだった。
[Setlist]
■パンダみっく
1. 好きな曜日はxx
2. 今夜がおわらない
■PAELLAS
1. daydream boat
2. Echo
3. Shooting Star
4. Orange
5. Weight
■YURiKA
1. Dive into the colors
2. 鏡面の波
3. 時のFoliage
4. Shiny Ray
■JYOCHO
1. つづくいのち
2. 太陽と暮らしてきた
3. my rule
4. sugoi kawaii JYOCHO
5. family
6. pure circle
■フィロソフィーのダンス
1. イッツ・マイ・ターン
2. アイドル・フィロソフィー
3. ダンス・ファウンダー
4. ベスト・フォー
5. ライブ・ライフ
■Tempalay
1. 素晴らしき世界
2. 新世代
3. SONIC WAVE
4. テレパシー
5. Festival
6. どうしよう
7. 革命前夜
■sora tob sakana band set
1. whale song
2. New Stranger
3. 秘密
4. silver
5. 広告の街
6. WALK
7. knock!knock!
8. 夜間飛行
9. 夜空を全部
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