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Japanese

sora tob sakana

2020年08月号掲載

sora tob sakana

sora tob sakana

Official Site

ライター:宮﨑 大樹

sora tob sakanaの6年間にわたる旅路が解散という形で終着を迎える。

2014年7月に結成されたsora tob sakanaは、翌年2015年に照井順政(ハイスイノナサ/siraph)が音楽プロデューサーを務めてから、エレクトロニカ、ポスト・ロックのサウンドを軸にした音楽性の高さで、ポジティヴな意味での"楽曲派アイドル"の象徴であり続けている存在だ。2019年5月から現体制である神﨑風花、寺口夏花、山崎 愛の3人で活動をしていたsora tob sakanaは、作品ではTVアニメとのタイアップ、ライヴ活動ではシンガー・ソングライターやロック・バンドたちとの対バンを重ねていき、その音楽は、ジャンルという名の国境を越えて広まり続けていた。今年2020年は、2月にアイドル、バンド、アニメ(アニソン)がクロスオーバーした音楽フェス"sora tob sakana presents「天体の音楽会 Vol.3」"を開催。様々な音楽ファンを交流させることにも成功している。4月には、テレビ朝日"関ジャム 完全燃SHOW"で「広告の街」が紹介され大きな話題になるなど、ここからの展開が非常に楽しみだった。そんな矢先の解散発表ということで、シーンに与えた衝撃は相当なものだったし、これは私見ではあるけれども、sora tob sakanaの解散は、アイドル・シーンだけでなく、音楽シーン全体の損失と言っても過言ではないと感じている。とはいえ、少女から大人になるまでの6年間という、青春時代の多くの時間を注ぎこんでsora tob sakanaとして過ごしてきた彼女たちが、自らの意志で将来を考え、この決断に至ったということは、寂しくもあり、それでいてどこか晴れやかな感情が生まれたのも確かだった。

かくして、多くの関係者や音楽リスナーから惜しまれつつも解散を迎えるsora tob sakana。彼女たちが遺してくれた最後の作品がラスト・アルバム『deep blue』だ。2曲の新曲と、9曲の再録曲で構成された本作は、ラスト・アルバムとして、ベスト盤として、そして新たな作品として、いずれの性質も内包する1枚に仕上がっている。再録版は当時打ち込みだった楽器を生でレコーディングしている曲も多く、曲のクオリティがさらに高まり、歌唱としても数々のライヴで披露してきた経験を反映。思い入れ抜きに語ったとしても、名盤だと断言できる。

冒頭"新たな作品"としての性質を色濃く感じさせるのは新曲「信号」。打ち込みのサウンドによって、緩やかにどこまでも広がっていく荒涼で壮大な情景や、歌声を細かく分解して言葉の意味から解放された"音"を再構築したメロディなど、sora tob sakanaとしての新たな試みも取り入れられている。聴き手を惹きつける、少し無機質で雰囲気のある3人の歌唱にも意識を集中して聴いてほしい。ラスト・アルバムという言葉が持つイメージにとらわれずに、アルバムの1曲目で新たな魅せ方をしてくるあたりは、最後まで"今いいと思うもの"を作ろうとしている照井順政の姿勢の表れ。さらには、これまで自然体で活動をしてきたsora tob sakanaらしさとも捉えられるのかもしれない。


続く「クラウチングスタート」から再録曲のブロックへ。照井順政がsora tob sakanaに向けて手掛けた最初の作品が「クラウチングスタート」なのだが、彼が音楽プロデュースを手掛ける前からsora tob sakanaには「DASH!!!!」というオリジナル曲がすでに存在していた。そのため「クラウチングスタート」は、当時のsora tob sakanaのイメージから現在の音楽性にシフトチェンジしていく曲でありつつ、さらに当時グループに所属していたメンバーの卒表タイミングということもあり、卒業のニュアンスも含めた曲として制作されたという。そんな「クラウチングスタート」は、照井順政とsora tob sakanaによる始まりの1曲ということで、今回の再録版では当時と現在の違いをありありと感じることができる。その違いのひとつはやはり歌声の違いだろう。2015年のリリース当時はあどけない少女たちによる無垢な歌声が前面に出ているが、それから5年の歳月を経て、肉体的にも技術的にも成長した彼女たちの現在の歌声は、当時のイノセントな魅力に加えて表現力が飛躍していることが伝わってくる。サウンドとしても、リズム・ギターによって疾走感や爽快感が生まれていたり、ストリングスが存在感を増していたりと、より洗練されて新しく生まれ変わった印象だ。

3曲目の「夜空を全部」は1stシングルの表題曲で、sora tob sakanaの魅力のひとつであるノスタルジックな部分での代表曲であり、ライヴの定番曲。刹那的な青春の1ページを描いた名曲だ。夜空の情景が浮かぶサウンドと、曲の世界観を増幅させる歌詞、ユニゾンの美しさ、どの側面から見ても素晴らしく、sora tob sakanaのひとつの方向性としての完成形とも言える。sora tob sakana band setでもたびたびパフォーマンスされている曲ということもあって、再録にあたってはバンド・セットで練り上げてきたサウンドがダイレクトに反映されているようだ。数え切れないほど披露してきたであろうライヴで磨き上げた歌唱は身震いするほど美しく、そして、グッとこみ上げてくるものがある。

※再録前のバージョンになります。


「夜空を全部」に繋がれたのは2ndシングル表題曲「魔法の言葉」。1stシングルでノスタルジーという方向性を打ち出したあとに、アイドルとしてのかわいらしい面を見せた曲だ。「クラウチングスタート」や「夜空を全部」で感じるノスタルジーや、5曲目に収録されている「広告の街」のように音楽的に尖っている部分に着目されることの多いsora tob sakanaだが、今後この『deep blue』という作品で初めてsora tob sakanaを知る音楽リスナーに向けて「魔法の言葉」のようなかわいい曲を改めて本作に収録する意味は大きい。打ち込みを主とした曲であるため、再録にあたっては本作の中でも"歌の成長"という点により耳を傾けて堪能したい。

※再録前のバージョンになります。


「広告の街」は、照井順政がハイスイノナサで鳴らしているポスト・ロック調の1曲。イントロからAメロにかけての複雑で緻密なサウンドなど、先述した通りsora tob sakanaの音楽的に尖った部分としてたびたび取り上げられている印象が強い。実際、筆者が初めて聴いたときの衝撃も相当なものだったし、こういった音楽をアイドルというフォーマットに落としたことがsora tob sakanaの功績であり、彼女たちの武器になっていることは言うまでもない。しかしこの曲のもうひとつの側面として、短めのメロディを繰り返すサビを取り入れ、ポップスの流儀に則ったアプローチをするなど、大衆性を意識した曲であることも忘れてはならない。"木を見て森を見ず"ではなく、ひとつの作品として改めて評価されるべき曲なのだ。再録にあたってはギターのサウンド感やバンドのグルーヴ感などの違いを楽しめる。

ここまでの再録曲はシングルに収録されていた曲が名を連ねているが、続いて収録された「まぶしい」は、1stアルバム『sora tob sakana』から。今回の再録では多くの曲で生のストリングスでレコーディングが行われているが、打ち込みから生楽器に代わったことで殻を破ったような印象を「まぶしい」からは特に受けた。もともとポテンシャルの高い曲だったが、生楽器のサウンドが思う存分に躍動している今回の再録によって、再びその魅力に気づかされた曲のひとつだった。

メジャー・デビュー・ミニ・アルバム『alight ep』から再録されたのは「Brand New Blue」。ストリングスだけでなく、管楽器も生でレコーディングされ、煌びやかさを増した爽やかなポップスに仕上がっている。『alight ep』では編曲を照井順政ではなく白戸佑輔が行っていたこともあり、今回の再録と聴き比べることで、曲の印象そのものが大きく変わっている点も感じてほしい。

聴き比べという意味では、近年の代表曲であるメジャー1stシングル表題曲「New Stranger」もぜひ対比してほしい1曲だ。シングルでは、90年代のゲームセンターを舞台にしたTVアニメ"ハイスコアガール"のオープニング・テーマということもあり、チップ・チューン風のサウンドと打ち込みのドラムで原作に寄り添っているようなイメージだったこの曲。一方、再録版では生ドラムで再レコーディングしたことによって、よりsora tob sakana band setで聴いた印象に近いものに仕上がっている。そんなサウンドに触発されてか、どこかライヴ感を感じさせるような歌声も味わうことができ、まるでライヴ音源かと錯覚してしまうような臨場感はぜひ体感してほしい。

※再録前のバージョンになります。


インスト盤『deep blue-Instrumental-』は『deep blue』の世界で新たな発見をするための旅


本作もいよいよ後半へ差し掛かると、ライヴ終盤の定番曲「夜間飛行」と、その「夜間飛行」で終演したかと思いきや披露されることもあった「ribbon」が並ぶ。「夜間飛行」は、タイトル通り夜空を浮遊しているような情景が浮かぶsora tob sakanaらしい1曲。サビのユニゾンの美しさをとりわけ感じられる珠玉のナンバーでもある。再録にあたって、サウンド面では生ドラムを始めとしたバンドのダイナミズムを、歌唱面では「夜空を全部」と同様、歌い続け、磨き上げてきた神秘的で透き通るような歌声に酔いしれることができる。


ここまで『deep blue』の収録曲について一曲一曲触れさせてもらったが、ラスト2曲、「ribbon」と「untie」については、あえてこの場で紹介することは控えさせていただきたい。どうか実際にアルバムを聴いて、結ばれた"ribbon"が"untie"(解く)されるその意味と「untie」の鍵盤が響いたあとに残る心象風景を、ただただ感じてほしい。

なおラスト・アルバム『deep blue』と併せて、同作のインスト盤『deep blue-Instrumental-』も制作されている。ファンにとっては待望のインスト盤なのだが、アイドルの作品でインスト盤が望まれるということ自体、sora tob sakanaの音楽が本当に愛されていたことの裏づけだろう。インスト盤では、照井順政がsora tob sakanaとその作品を通して表現したかったことにも想いを馳せながら聴いていってほしい。『deep blue』で見落としていたかもしれない音のこだわりや仕掛けを探索していくような楽しみ方もできるだろう。ギターのストロークの細部や、ストリングスの響き、打ち込みの一音一音まで集中して聴いていくと『deep blue』とはまた別の充実感を味わうことができるはずだ。言わば『deep blue-Instrumental-』は、『deep blue』の世界で新たな発見をするための旅とも言えるのかもしれない。アルバムとそのインスト盤と言うと、本来は比較されて然るべきものなのかもしれないが、本作はそう語るようなものではないというか、まったく別の作品として語りたくなるような存在感を感じた。

繰り返しになるが、こんなにも素晴らしい作品で我々を感動させてくれたsora tob sakanaは、残念なことに解散してしまう。"解散"という事実について、一抹の寂しさは拭えないが、最後に『deep blue』、『deep blue-Instrumental-』という、シーンの歴史に名を刻む記念碑的な作品をそれぞれ遺してくれたのだ。

ラスト・アルバム『deep blue』は、彼女たちが青春時代を生きてきた証。そして彼女たちが作り、遺してくれたsora tob sakanaという名の世界そのものだ。そのことを感じながら、一曲一曲を噛みしめるようにじっくりと聴いてほしい。


VIDEO MEASSAGE



▼リリース情報
sora tob sakana
ラスト・アルバム
『deep blue』
NOW ON SALE
[NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン]
sts_deepblue_syokaibd_gnca1574_jk_S.jpg
【BD付初回限定盤】(2CD+2BD)
GNCA-1574/¥12,000(税別)
amazon TOWER RECORDS HMV
・三方背BOX仕様
・撮り下ろし写真付き40Pブックレット

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【DVD付初回限定盤】(CD+DVD)
GNCA-1575/¥7,000(税別)
amazon TOWER RECORDS HMV
・16Pブックレット
・トールケース

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【通常盤】(CD)
GNCA-1576/¥3,000(税別)
amazon TOWER RECORDS HMV
・16Pブックレット

[CD] ※全仕様共通
1. 信号(新曲)
2. クラウチングスタート
3. 夜空を全部
4. 魔法の言葉
5. 広告の街
6. まぶしい
7. Brand New Blue
8. New Stranger
9. 夜間飛行
10. ribbon
11. untie(新曲)
 
[CD] ※BD付初回限定盤のみ
"sora tob sakana LIVE TOUR 2019「天球の地図」【5th anniversary oneman live】《band set》"
1. ribbon
2. 秘密
3. 鋭角な日常
4. Summer Plan
5. Brand New Blue
6. 嘘つき達に暇はない
7. 発見
8. ありふれた群青
9. ささやかな祝祭
10. flash
11. New Stranger
12. 広告の街
13. silver
14. knock!knock!
15. Lighthouse
16. 夜空を全部
17. 流星の行方
18. 夜間飛行
 
[Blu-ray①/DVD] ※BD付初回限定盤/DVD付初回限定盤のみ
"sora tob sakana LIVE TOUR 2019「天球の地図」【5th anniversary oneman live】《band set》"
1. node
2. ribbon
3. 秘密
4. 鋭角な日常
5. Summer Plan
6. Brand New Blue
7. 嘘つき達に暇はない
8. 発見
9. ありふれた群青
10. ささやかな祝祭
11. flash
12. New Stranger
13. 広告の街
14. silver
15. knock!knock!
16. Lighthouse
17. 夜空を全部
18. 流星の行方
19. 夜間飛行
・Making of "天球の地図"
音声特典:オーディオ・コメンタリー
 
[Blu-ray②]  ※BD付初回限定盤のみ
MUSIC VIDEO COLLECTION
1. 信号
2. ささやかな祝祭
3. flash
4. untie
・Making Movie
音声特典:オーディオ・コメンタリー

 
インストゥルメンタル盤
『deep blue-Instrumental-』
sts_deepblue_inst_gnct0024_jk_s.jpg
2020.08.10 ON SALE
GNCT-0024/¥3,000(税別)
※ECサイト"あにばーさる"( NBCユニバーサル公式オンライン・ショップ)限定発売
https://store.nbcuni.co.jp/s/nbcu/item/detail/5723-2  
1. 信号
2. クラウチングスタート
3. 夜空を全部
4. 魔法の言葉
5. 広告の街
6. まぶしい
7. Brand New Blue
8. New Stranger
9. 夜間飛行
10. ribbon
11. untie
※本アルバムの収録曲はすべてInstrumental音源になります

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