Japanese
sora tob sakana
2019年11月号掲載
Writer 宮﨑 大樹
神﨑風花、寺口夏花、山崎 愛からなる3人組グループ、sora tob sakana。照井順政(ハイスイノナサ/siraph)が手掛ける、ポスト・ロックやエレクトロニカのサウンドを軸に様々なジャンルを取り入れた良質な音楽、持ち前の透き通るような声質に加えて、昨今で表現力にさらなる磨きを掛けた歌声は、シーンにおいて無二の光を放ち続けている。そんなsora tob sakanaが放つ光がシーンの枠を越え、より広い層へ届きファンを獲得していることは、活動5周年イヤーとなる今年2019年に開催した初の単独ライヴ・ツアー"sora tob sakana LIVE TOUR 2019「天球の地図」"において、各地でソールド・アウトを記録していることから読み取ることができる。そんななか、ふと公式YouTubeを見てみると海外からのコメント数の多さに驚かされた。彼女たちの音楽は、今や国境を越えて世界へと届き始めているのだ。
こうした彼女たちの今の勢いを生んだ契機のひとつに、TVアニメ"ハイスコアガール"オープニング・テーマに起用された「New Stranger」が挙げられる。"ハイスコアガール"と「New Stranger」については後ほど改めて紹介させていただくが、sora tob sakanaは、同アニメ作品の続編として放送がスタートしているTVアニメ"ハイスコアガールⅡ"のオープニング・テーマも担当している。そしていよいよ、アニメ第2期のオープニング・テーマ「flash」を表題に据えたシングルが、リリースを迎えることとなった。
そんな本作の魅力に迫る前に、まずは"ハイスコアガール"と「New Stranger」について触れていきたい。TVアニメ"ハイスコアガール"は、押切蓮介原作の同名漫画をアニメ化した、古き良き格ゲーブームに沸く90年代のゲームセンターを舞台にしたラヴ・コメディ作品。アニメ1期のオープニング・テーマに起用された「New Stranger」では、作品の特色に寄り添ったレトロなゲーム音楽風のサウンドと、sora tob sakanaの魅力のひとつであるノスタルジーが融合し、さらに主人公の矢口春雄、大野 晶、日高小春を中心に進行していくラヴコメならではの明るさや、揺れる感情といったエモーショナルな要素をバンド・サウンドで表現していた。「New Stranger」は、"ハイスコアガール"という作品の魅力を引き出しつつ、sora tob sakanaの音楽として見事に昇華したまさに名曲であったと言える。
二度とやってこない瞬間を不器用ながら全力で生きていく登場人物たちの心情や信念を描写
そんな「New Stranger」に引き続き、アニメ2期のオープニング・テーマに起用された新曲「flash」は、「New Stranger」と同様にチップチューン風の音が用いられており、アニメ1期のオープニングからあえて大きな方向転換がないように仕上がっている。sora tob sakanaらしいエモーショナルなバンド・サウンドに、鍵盤、様々な電子音と、音数自体は多めではあるものの、散らかった印象にはならず、ひとつの曲としてまとまりを持たせているところもポイントだ。もちろん「New Stranger」の焼き増しにはなっておらず、「flash」からは、よりエモーショナルな方向に向かっていった印象を受けた。この点においては、作詞作曲、編曲を手掛ける照井の手腕によるものが大きいのは言うまでもないが、音に乗せた歌声を聴いて、なんとも切ない気持ちにさせられるのは、感情の乗せ方がひとつ上のステージに到達した3人のヴォーカル・ワークの賜物に違いない。
この曲から抱くイメージは"青春の刹那的なきらめき"。青春は――もっと言えば人生は、やり直しのきかない一瞬一瞬の繰り返し。二度とやってこない瞬間を不器用ながら全力で生きていく"ハイスコアガール"の登場人物たちの心情や信念を描いた「flash」は、作品の特性を見事に捉えるとともに、聴き手に対しても何か大切なことを思い出させてくれるような1曲なのではないか。
表題曲「flash」が、アニメのタイアップでありながらもsora tob sakanaらしさ溢れる曲となった一方、カップリングの2曲はそれとは違った表情で魅せていく。まずは、打ち込みを主としたアーバンなサウンドの「パレードがはじまる」。聴いているうちに自然と身体を揺らしてしまうノリの良さと、曲が展開にしていくにつれて移り変わっていく情景を楽しむことができる1曲だ。クールな曲調に合わせるかのように、感情を抑えて機械的に歌う彼女たちの歌声は、透き通るような声質とあいまって、心地よくもどこか神秘的な気分にさせてくれる。もうひとつのカップリングの「踊り子たち」では、歌詞にも登場する"ぎこちないリズム"である7拍子を採用。音数を控えめにしたことで際立ったその柔らかな歌声は、「パレードがはじまる」の無機質な歌唱と聴き比べてみることで、表現の幅の広がりを感じることができるだろう。ちなみにこの「踊り子たち」は、軽やかに聴くことのできる曲ではあるが、実はシリアスな内容をテーマとして据えていることが、アーティスト盤のライナーノーツによって照井から語られている。重い印象を受けるテーマでありながらも、sora tob sakanaというフィルターを通すことによって、柔らかな曲に仕上げる照井の手腕はさすがだ。
sora tob sakanaらしいエモーショナルなバンド・サウンドの「flash」、あえて無機質に歌い上げた都会的な打ち込みナンバーの「パレードがはじまる」、それとは対照的に、変拍子を使用した"ぎこちないリズム"に乗せて軽やかに、柔らかい歌声で聴かせる「踊り子たち」。趣の異なる3曲でsora tob sakanaの魅力を表現した3rdシングルは、アーティスト盤と通常盤の2形態でリリースされる。アーティスト盤には「flash」のミュージック・ビデオを収録したDVDに加え、16Pブックレットが付属。通常盤には、8bitミュージック・ユニット"YMCK"による「flash」のリミックス音源が収録されるので、どちらも十二分に本作を堪能することができるだろう。
冒頭でも触れた通り、sora tob sakanaにとって今年2019年は活動5周年イヤーとなる。初の単独ライヴ・ツアーを終えた彼女たちは、10月より3ヶ月連続で対バン企画"sora tob sakana presents. ~月面の扉~"を開催している。君島大空を迎えた浅草花劇場での"月面の扉 vol.8"はソールド・アウトを記録し、すでに大盛況のうちに終了。対バンならではのコラボやカバーが実現した公演だっただけに、11月23日に池袋harevutaiにて岸田教団&THE明星ロケッツを迎え開催する"月面の扉 vol.9"、12月7日に渋谷TSUTAYA O-WESTにて現役大学生シンガー・ソングライター/トラックメーカーのMomを迎えて開催する"月面の扉 vol.10"にも、否応なしに期待が高まる。こちらの2公演は3rdシングル『flash』のリリース後に開催されるので、CDを聴き込んでライヴに足を運んでみてはいかがだろうか。
▼リリース情報
sora tob sakana
ニュー・シングル
『flash』
2019.11.13 ON SALE
【アーティスト盤】(CD+DVD)
1000749884/¥2,091(税別)
※ジャケット仕様:16Pブックレット
amazon
TOWER RECORDS
HMV
[CD]
1. flash ※TVアニメ「ハイスコアガールⅡ」オープニング・テーマ
2. パレードがはじまる
3. 踊り子たち
[DVD]
「flash」 Music Video
【通常盤】(CD)
1000749885/¥1,182(税別)
※アニメ「ハイスコアガールⅡ」描き下ろしイラスト差し替えジャケット/8Pブックレット
amazon
TOWER RECORDS
HMV
1. flash ※TVアニメ「ハイスコアガールⅡ」オープニングテーマ
2. flash-TV Size-
3. flash-YMCK Remix-
「flash」先行配信はこちら
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