Japanese
凛として時雨
2013.06.28 @日本武道館
Reported by 石角 友香
3人がステージから去り、照明も落とされたそこはまるで廃墟のようだった。
4月末のZepp DiverCity Tokyoからスタートしたツアーは全国を巡り、初の台湾公演も経て、この日、自身初となる武道館ワンマン・ライヴに辿り着いた。キャパシティ的にはすでに2010年、さいたまスーパーアリーナを成功させた時雨である。この場所を目指してきたという印象はないが、むしろ会場は久々の椅子席に興奮と緊張が静かに漲っている。
ほぼ定刻に客電が落ちた瞬間、熱狂的な歓声が会場に轟き、この日のオープニングはTKのヴォーカル始まりの時雨のギリギリのテンションとポップネスを融合した「abnormalize」。垂直に立ち上がるムービング・ライトが演奏の緩急とシンクロする。立て続けに「JPOP Xfile」「MONSTER」と情動を刺激するナンバーを演奏した流れの中でも序盤、最高にスリリングだったのがフラッシュバックのような曲展開とリズム・チェンジで生き物的に変身していく「Metamorphose」の迫力。瓦解寸前のテンションのピークを一瞬のクリーン・トーンでフィニッシュするTKの鋭いプレイに息を呑む。続く選曲が瞬時に今が過去になっていくような、自分がここにいるのに意識がコンマ何秒かで追い抜いていくような「I was music」だったのも、凛として時雨の音楽的な思想の根幹をライヴの流れで証明するようで胸に迫る。荒涼とした空間を創りだす345のベースの存在感、ドラミングそのものが音楽的なピエール中野のスキルが冴える「O.F.T」までを駆け抜けた。
不穏に迫り来る345の独特のファンクネスを感じさせる「Filmsick Mystery」から、TKの高音ヴォーカルのリフレインが激情とはまた違う感情を表現する「Sitai miss me」、それまでの激烈なライティングからブルーとグリーンのバック・ライトや偏光が静謐な曲の印象を際立たせた「キミトオク」で、改めてステージ上にいる3人、そう。当たり前だが3人だけが奏で、調和し、軋轢を起こしてこの興奮を生み出していることが現実なのか軽く混乱する。この曲の終わりに初めて囁くぐらいの音量でTKが“ありがとう”と告げ、いったん彼と345がステージから去ると、おなじみピエール中野のコーナーがやおら“しゃべってよろしいですか?”“ライヴハウス武道館へようこそ!気持ちいいわ〜”から始まり、この日は地元・越谷から電車で九段下まで移動、武道館の正面入りを騒がれることもなく難なく果たし、記念写真をTwitterにアップ。先日の台湾公演の盛り上がりから“それに引きかえ、今日はどうだよ?元気?元気なんだよな?”と、ファンの反応を確認するためにドラム・セットを降りていつものPerfumeネタから台湾でウケたというB’zネタ、おなじみXジャンプまで、Tシャツ、短パン、素足で武道館の大舞台をさらに盛り上げる勇姿は、彼のドラム同様、筋金入りだった。テクニカルなドラム・ソロとのギャップも武道館級。
爆笑で温まった会場は後半に突入。前半より分離のよくなった出音にステージ上とファンの感覚の交歓もさらに高まり、格子状のライティングが楽曲の世界観とシンクロする「Beautiful Circus」から息付く暇のない展開が加速し、ギリギリまでテンポ・アップする「想像のSecurity」、ピエールがスティックを高く掲げた瞬間も鳥肌ものの「テレキャスターの真実」、武道館のキャパシティでもここにいる全員が演奏の細部を把握してるかのように全身全霊で反応する「Telecastic fake show」がもたらした破壊力。ギターのディレイが美しすぎる「am3:45」では345の堂々たるヴォーカルにも瞠目し、ブレイクした瞬間にステージ上のミラー・ボールが焼け付くほど強烈な白色のライトを浴び、光の破片を撒き散らす。まるで演奏が凄まじい光量の輝きを発電するように。
武道館自体がホワイトアウトするような衝撃にまだ震えているような感覚の中、ここまで18曲。ようやくTKが“凛として時雨です”と少ない言葉の中に思いを乗せ、345を紹介。最近、押しがちょっと強くなった感じがさらに微笑みを誘う物販紹介をした後、“ここから見ると、ホント感無量っていうか。ありがとうございました。凛として時雨でした”と心からの感謝を述べると、ラストはTKのざっくりと生々しいコード・ストロークがすでに深い悲しみのような祈りのような感情を呼び起こす、「Missing ling」が始まる。個(孤)が個のまま個として、いくら大きな会場でもダイレクトに響きあう空間。身体も全神経も音色に変換する、いや、音色そのものになろうとするように演奏するTK。“探し物を失くした ねえ 今だけ?僕を破裂させて飛び散らしていいよ”というフレーズは時雨の聴き手との独特のコミュニケーションを表現しているようにも思える。ラストに“ねえ 残ってる”と肯定でも疑問符でもない形で置き去りにされた一言だけが興奮の中に宙吊りにされた。いわゆるメッセージ性とは異なる音楽の言葉として聴き手に委ねられるTKの意思は、凛として時雨というバンドのあり方を象徴している。凛として時雨という類を見ないスタイルが厳然と存在しつつ、存在することを目的にしているわけではないという音楽至上主義。メンバーが去ったステージはすべてが燃やされた焼け跡のようであり、既に過去を見ているような錯覚に陥る。逆説的だがそう感じるからこそ、また次のシーンを見たいと思ってしまうのだろう。既にもう希求している。
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