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INTERVIEW

Japanese

GOOD ON THE REEL

2022年10月号掲載

GOOD ON THE REEL

Member:千野 隆尋(Vo) 岡﨑 広平(Gt) 宇佐美 友啓(Ba) 高橋 誠(Dr)

Interviewer:蜂須賀 ちなみ

-ちなみに、レコーディング中いろいろなトライをしたという話でしたが、そういう意味で特に変化が大きかった曲は?

千野:「ファンファーレ」ですね。レコーディング当日にいろいろ決まった曲なので。

-初の宇佐美さん作曲の曲でもあるので、そのあたりも含め、どういうふうに作っていったのか、うかがえますか?

宇佐美:アルバムを作るたびにデモの提出期限というものがあって、僕も提出しようと毎回トライしていたんですけど、毎回上手くいかず、"向いてないのかも"と思っていたんです。だけど今回は"ん? これ、曲っぽいぞ?"、"こんな感じでいいのかな"というふうにわりとすんなりできて。で、提出してみたら、メンバーやスタッフからの評判が意外と良くて。短い曲で、こういうビート感、疾走感のものって今まで意外とやってこなかったので、そういうところを狙ってみました。

千野:ありそうでなかった曲だよね。それにメロもとてもいいし、広平からすると、コードとメロのバランスが完璧らしく。

岡﨑:うん、めちゃくちゃ完璧だなと思った。宇佐美は僕らから出ないものを持ってきてくれたんですけど、でも"宇佐美が作ってきた曲だし、面白いから入れようか"ということじゃないんですよ。

-それこそスパイスとしてではなく。

岡﨑:そうそう。単純にめちゃくちゃいい曲だなと思ったので、今回収録することになりましたね。

千野:この曲、最初のデモからそのまま残っているのって、リズムとベースくらいなんですよ。レコーディングしつつ、"ドラムの音をちょっと電子音っぽくしてみようか"とかいろいろやっていたんですけど、そのなかで"これ、もうギター弾かなくていいんじゃない?"という話になって。それでレコーディングの日にシンセを入れることが決まって、広平がプログラミングで音を入れてくれたんですけど、ひと晩であの音を作り上げて、次の日に持ってきてくれて。

-すごいスピード感で決まっていったんですね。一方、ビートは全然エレクトロじゃないという。

高橋:そうですね。ドラムに関しては、高校生の頃を思い出しながら叩くみたいなテンションで。

岡﨑:リズム的にはパンクだよね。

-GOOD ON THE REELの音楽性って結成時のギター・ロックから始まり、どんどん広がっていきましたけど、そのなかで「ファンファーレ」のような、ひとつの曲の中で異なるジャンルが共存しているような曲が生まれているのが面白いですよね。今みなさんの間で"こういう音楽いいよね"と話題になる対象って、例えばどういう音楽になるんですか?

岡﨑:今そう言われて気づいたんですけど、最近は本当に、それぞれがそれぞれに好きな音楽を聴いているんですよね。(インディーズ)デビュー当初は、作詞作曲をしているメンバーが共通して好きなバンドがいたんですよ。それで、"あのアーティストの新譜聴いた?"、"聴いてないなら貸そうか?"というふうに、なんとなく熱量とかをシェアしていたんです。でも今は......僕、千野ちゃんが聴いている音楽を全然知らないですし、"これいいよ"っておすすめされてもアーティスト名とか全然わからないので、結構マニアックなところに行っているんだなと思うくらいで。

千野:ふふふ(笑)。

岡﨑:同じように、宇佐美が何を聴いているのかもわからないですし、だからこそ「ファンファーレ」みたいな曲が生まれたのかなと思います。「ファンファーレ」って、俺的には、ビートを抜かせばSIGUR RÓSみたいなイメージだったんですよ。でもたぶん、そのイメージをシェアできているのは千野ちゃんくらいだと思うんです。このふたり(宇佐美、高橋)はSIGUR RÓSタイプじゃないので。

千野:SIGUR RÓSタイプじゃないって(笑)。でもたしかに、この曲、最初はイントロが普通にギターのバージョンもあったんですよ。で、エレクトロっぽい感じのフレーズもあって、"どっちがいいかな?"という話になったんですけど、俺が"こっち(エレクトロ)のほうが面白いじゃん"って感覚的に選んだのは、そのとき、俺も広平と同じように"SIGUR RÓS脳"だったからだと思うし、ビートがパンクなのはふたり(宇佐美、高橋)がそうじゃなかったからだろうし。

-全部を共有し合って、じゃあこういうサウンドにしましょうって持っていくんじゃなくて、そこはあえてそれぞれが好きなものを掘っていって、バンドになったときにバンとアウトプットしたら、こうなったよっていう。

千野:そうそう。普段の音楽の聴き方の違いが面白く作用しているんだろうなと思います。

岡﨑:だから「ファンファーレ」は新しい感じがすごくしますね。

-WEAVERの杉本雄治(Pf/Vo)さんがピアノとギターの演奏、そして編曲で参加した「同じ空の下で」についても聞かせてください。デモの時点でピアノがキーになる曲だったんですよね。

千野:そうですね。ピアノがリフレインするようなメロディが入っていて、その上にバンドが乗っている感じだったので、ピアノは入れたいなと。だからちゃんと弾ける人にお願いしたいという気持ちもありつつ、でもバンド感は欲しいし、歌も大事にしたいし、「0」ほど派手にはしたくないし......と考えていたところ、パッと浮かんだのが杉本君だったんです。

-杉本さんは"はじめは「ピアノを弾いて欲しい」と千野さんからお話を頂いたのですが、いつの間にかアレンジをすることに。笑"とコメントしていますが、その経緯については?

千野:せっかく杉本君にピアノを入れてもらえるんなら、僕の作ったデモのようにひとつのフレーズをリフレインするのではなく、ガンガン弾いてもらいたいなと思ったんですけど、そうすると、全体をいじらないといけないじゃないですか。そう考えたらアレンジもやってもらったほうがいいよなと思ったので、アレンジもお願いして。それで上がってきたものを聴いたら、僕らがバンドだということを意識して、バッキング・ギターのアルペジオから始まるアレンジにしてくれていたので、"バッキングだけでいいから、ギターも弾いてくれない?"と話して。だからこの曲のバッキング・ギターは杉本君が弾いているんですけど、杉本君、WEAVERのレコーディングでもバッキング・ギターを弾いていないんですよ。だからこれはめちゃくちゃレア音源です!

-それにしても、杉本さんの担う役割がどんどん増えていった感じが(笑)。

千野:でももっと欲を言うと、杉本君はアレンジャーとして「同じ空の下で」のすべてのレコーディングに立ち会ってくれていたので、歌録りのとき、"杉本君、ハモってくれないかな?"ってちょっと思っちゃいました(笑)。そこまで言うのもアレかなと思って、我慢したんですけど(笑)。

-いつかライヴで共演できたらいいですよね。

千野:そうですね。杉本君もそう言ってくれていたので、いつかやれたら嬉しいです。

-全体としては、まさにクラシックの素養があるバンドマンならではのアレンジで。GOOD ON THE REELとしても新しいことがやれた手応えがあるのでは?

千野:そうなんですよ! 俺、この曲ができたとき、"すっげー......"ってびっくりしちゃって。よく聴いてもらえばわかると思うんですけど、すべての楽器がお互いの邪魔をせず、被ることなく、きれいに混ざり合っているんですよ。ベースがこっちに行ったら、ピアノは違うほうに行くけど、ベースがフレーズを弾き終わったら、ピアノの音が"トゥン"と入ってくる、という感じで。

岡﨑:品があるよね。

千野:うんうん。俺らはクラシックの素養が何もないから、そこが見えたときにまず"さすが!"と思ったんですけど、一方、ギター・ソロとかはかなりガーッと激しい感じで。杉本君が広平に対して"もっとロックしましょう!"と言って、歪みを上げたりして。そういうふうにバンドのこともわかっているし、歌い手としての部分もわかってくれているので、杉本君で良かったなと思っています。仕上がりに大満足していますね。

-今は、9月4日から始まる全国ツアー[HAVE A "GOOD" NIGHT vol.112-119 ~P.S. ダイアローグ~]に向けて準備をしているところなんですよね。

岡﨑:最近は毎日のようにリハーサルをしているんですけど......やっと楽しくなってきたよね(笑)。

千野&宇佐美&高橋:あはははは!

岡﨑:なので、今はホント楽しいです。初日とかはもう、頭の中でずっと考えながらやっていたんですけど。

千野:みんな自分のことでいっぱいいっぱいだから、"ここ、こうしたほうがいいかな?"って誰かから聞かれても――

高橋:"ごめん、聞いてなかった!"みたいな(笑)。

岡﨑:でも、やっぱりライヴはライヴの表現の方法でいいんだなと、改めて思って。もちろんこのアルバムの曲も(ライヴで)やりますけど、ライヴでは見え方が全然変わってくるんだろうなという曲もありますし、すごく楽しみです。

千野:それに今回はワンマン・ツアーだから、たとえ今回のアルバムがどれだけぶっ飛んでいようが、受け止めてくれる子たちがいるという......(笑)。それはありがたいことですし、CDよりもメッセージや気持ちがもっと伝わると思うので、一緒に楽しめるようなライヴにできたらと思っています。

-現状"この曲はライヴでヤバくなりそうだな"と思っている曲はどれですか?

千野:その"ヤバい"はどっちの意味ですか? 盛り上がりそうってこと? それとも、こっちが精神的にヤバそうってことですか(笑)? ......すごく楽しくなりそうだなと思っているのは「WonderWant」。俺、最後、めっちゃ踊り狂いたいなと思ってて。

高橋:いいね。精神的にヤバい曲も気になるけど(笑)。

千野:それは、「Dreamer」とか......(笑)。まぁね、いろいろありますよ(笑)。