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INTERVIEW

Japanese

GOOD ON THE REEL

 

GOOD ON THE REEL

Member:千野 隆尋(Vo) 伊丸岡 亮太(Gt) 岡﨑 広平(Gt) 宇佐美 友啓(Ba) 高橋 誠(Dr)

Interviewer:TAISHI IWAMI

言葉の力がダイレクトに伝わるリアルな熱量の高さと美しさを併せ持つヴォーカル、2本のギターが描き出す豊かなサウンドスケープ、多様な音楽性を屋台骨で支えながらさらに彩りを加えるベースとドラムのリズム隊。GOOD ON THE REELの最新EP『手と手』は、そんな長い時間をかけて熟成されてきたバンドの魅力はそのままに、明らかに新たなフェーズに突入した最進化系だと断言しよう。00年代~10年代を音楽とともに駆け抜けた筋金入りのバンドが、ここにきて手に入れた最もフレッシュな輝き。そのポップ且つオルタナティヴな気概に溢れたサウンドは、どのようにして生まれたのか。作品のテーマである"繋がり"にある真意とともに語ってもらった。

-GOOD ON THE REELはインディーズでの活動後、ユニバーサルミュージックと契約、再びインディーズに戻り自主レーベル"lawl records"を立ち上げ、2019年にはレーベル単位でユニバーサルミュージックアーティスツ合同会社とパートナーシップ契約を結びました。まずは一連の流れがバンドのスタイルにどう作用したのか、振り返っていただけますか?

千野:最初にバンドとしてメジャーと契約したときは、自分たちだけでやるよりお金をかけていただけたので(笑)、CDの仕様が豪華になったり、大きな会場でライヴができたり、単純に楽しかったですし、視界が外に向いて大きく開けた感覚はありましたね。

岡崎:でも、当時はよくシステムがわかってなくて。メジャーに入ったらやりにくいとか言われることもよくあるじゃないですか。

-セールスありきで音楽性を他人と話し合うことによって生じるズレみたいなことですか?

岡崎:正直に言ってそういうジレンマも多少はあったんですけど、それは僕らがよくわかってないことにも起因していたと思うんです。そのあとまたインディーズに戻って"lawl records"を立ち上げて、今度は"lawl records"としてユニバーサルミュージックアーティスツと契約したわけですけど、メジャーと組んだほうがやれることは増えることと、僕ら自身も様々な経験を経たことがいい感じで合致して、今はすごく自然体でより面白いことに取り組めているように思います。

伊丸岡:自主レーベルというひとつのブランドみたいなものができたことが強みになって、そのうえで、メジャーで活動できているので、すごくいい状態なんです。

千野:お互いが意見を言いやすくて風通しがすごくいいうえに、タイアップとか、メジャーのサポートがあってこそいただける仕事も貰えて、それは制作にすごくいい影響をもたらしていると思います。

伊丸岡:タイアップは音楽的なことに直接作用するインプットとしてもすごく大きいと思います。

-今作のEP『手と手』は、まず、タイトル曲の「手と手」が東京都の"My Dear TOKYO"CMソング、「禁断の果実」が映画"酔うと化け物になる父がつらい"の挿入歌で、「背中合わせ」が主題歌と、5曲中3曲がタイアップですが、曲を作るときの感覚はほかの曲とはまた異なるのでしょうか。

千野:0から自分たちで作るのではなく、テーマがありきなので、感覚は全然違いますね。作品に対して作品を作るわけですから、引っ張られすぎちゃうとか、そういう苦労もありつつ、オリジナリティを探っていくことが楽しいんです。

-自分たちだけだと気づかなかったポテンシャルが引き出せれることもあると思いますし、タイアップの依頼主もまた、できてきた曲を聴いて対象作品の新たな魅力に気づくこともある。そういう相乗効果が生まれる可能性は醍醐味なのではないかと思います。

伊丸岡:それは本当にそうですね。

-私はアーティストではありませんが、作品ありきの文章を書く仕事をしていると、作ったご本人から意図していなかった魅力を引き出されたことにお礼の言葉をいただいたり、それが私自身の仕事の肥やしになったりすることがよくあります。

伊丸岡:それはタイアップと感覚的に近い部分があるかもしれないですね。僕らもライターさんからいただいた評価がインスピレーションになることもありますよ。

千野:だから、こういうインタビューやレビューを読むのはすごく楽しいんですよね。"こんな聴こえ方もあるのか、じゃあMCに採り入れよう"ってライヴが近ければすぐに反映することもあります。

-それはファンの方々からの声も同様ですよね? 何か今思いつく一例はありますか?

千野:2011年に東日本大震災があったときに、仙台の方から"「いらない」(2011年リリースのミニ・アルバム『シュレーディンガーの二人』収録曲)を聴いて救われた"って手紙をいただいたんです。復興を願う曲でも誰かを励ます曲でもなく、学生時代の友達とのことを書いた曲だったんで、意外だったのと同時にすごく嬉しかったですね。

-私は震災の被害には遭っていないので、その気持ちは計り知れませんが、"みんな"と包括して励まされるとむしろつらいことはあります。

千野:たぶん"頑張れ"とか、外からのそういう言葉がしんどかったんだと思います。それに対して「いらない」は、相手の感情を無視した曲なんですよね。"あなたに僕のことはわからない、僕もあなたのことはわからない"って、その割り切り方が響いたのかもしれないです。そうやって"僕とあなた"にピントを絞って書いた曲が、誰かに刺さることもあるんだなって、それは大きな気づきのひとつになりました。今作はタイアップも含めて人と人との"繋がり"をテーマにしているんですけど、ひと言でそうは言っても、いろいろあるじゃないですか。手を繋いで歩むこともあれば、繋いだ手を離すこともある。手が離れていってしまうこともあれば、今話したように知らずのうちに繋がっていることも。だから、1曲目に「手と手」を持ってきて作品のタイトルにして、そこから5曲でひとつひとつの繋がりを大切にするようなイメージで描いていきました。

-だからこそだと思います。サウンドも一曲一曲がすごく豊かで違った個性を持っています。

伊丸岡:GOOD ON THE REELはこれまでも、ひとつの作品の中でいろんなことをやってきましたけど、今回は特にバリエーションに富んだ内容になったと思います。

千野:僕らは歌詞が先にある場合とメロディやサウンドが先にある場合があるんです。例えば、「君の友達」は広平が曲を作ってきて、メロディもオケもある程度完成されていた状態で、そこから見える景色や湧いてくるイメージを膨らませて歌詞にしました。

-「君の友達」はまず、シンセのようなリフが印象的です。

岡崎:オクターバーをかけて上と下の音を出してシンセっぽいギターを鳴らしてるんです。すごく春っぽい曲になりましたね。

-スタンダードなカントリー調なんですけど、おっしゃったような春っぽい爽快感だけではなく、千野さんが歌うことですごくエモーショナルでセクシーな要素も加わり、オリジナルな曲になっています。

岡崎:デモでは僕が"ラララ~"って歌っていて、その段階ではもろにカントリーなまろやかな曲だったんですけど、千野が歌うことで切なくなるんですよね。想像とは全然違ったんですけど、すごくいい効果が生まれた曲です。

-歌詞が先にあった曲のエピソードも聞かせてもらえますか?

伊丸岡:「赤いリップ」は千野の言葉から感じた風景をメロディやサウンドにしていきました。

-この曲が興味深いのは、私は赤い口紅を使ったことはないし、ここで歌われているような感じで恋人を待ったこともないんですけど、感情移入できたんです。歌って不思議ですよね。

伊丸岡:僕もそうなりましたよ。自分がここにいる女性だったらって考えましたから。

千野:僕も口紅はつけたことないし、こんなふうに恋人を待ったこともないし、物語ですね。今の若い女性って赤い口紅の人多くないですか? 色白で赤いリップが目立つ、みたいな。そんな女性を主人公に現代の危うい繋がりとか、中途半端な繋がりとか、世情を映し出した曲ですね。

伊丸岡:歌詞は物語で曲はゆったりしてるんですけど、サウンドはあえてちょっと重たくして、低音をより低いところで鳴らして、ドラムを暴れさせて、バラードというよりはロックなイメージに仕上げていきました。

-オルタナティヴ・ロックのざらつきや力強さを感じました。

伊丸岡:たしかに。それによって何か新しいものが生まれるといいなと思いながら作りました。