Japanese
GOOD ON THE REEL
Member:千野 隆尋(Vo) 伊丸岡 亮太(Gt) 岡﨑 広平(Gt) 宇佐美 友啓(Ba) 高橋 誠(Dr)
Interviewer:TAISHI IWAMI
-これまでのGOOD ON THE REELの曲と比べて、とりわけ新しい感覚となると「禁断の果実」が印象的で。鍵盤の旋律や音色が怪しくて色っぽくて、夜中のぐちゃぐちゃになった気持ちを表すようなカオスを感じました。
岡崎:これは映画"酔うと化け物になる父がつらい"の挿入歌として書いたんですけど、まさに夜中のカオスな心情がイメージにありました。
-ドロドロしていてしんどいんですけど、すごく快楽的な、あの感じ。
岡崎:そのドロドロにまみれないみたいな。実際夜中にウィスキー飲みながら作りましたから(笑)。
-シチュエーションから曲に近かったんですね(笑)。
岡崎:同時にその頃マイナー調で作曲することにハマっていて、妖しい曲ばかりできていた時期で(笑)、その中の1曲です。アレンジとしては、あのピアノを生かした曲を作りたくて、ダンサブルなビートを使ってちょっとファンクっぽい感じに。たしかに今までのGOOD ON THE REELっぽい曲ではないですよね。
伊丸岡:僕もこの曲が広平から出てくるとは思わなかったです。あのピアノのリフ、めちゃくちゃ好きですし、作品の中ですごくいいスパイスになってますよね。
-タイトル曲の「手と手」はGOOD ON THE REELの王道プラスアルファな曲。今回のテーマである"繋がり"をダイレクトに歌った曲でもありますが、ここまで普遍的なテーマにアプローチしたのはなぜですか?
千野:これは東京都の"My Dear TOKYO"CMソングとして書き下ろしました。担当の方から、僕らの既発曲の中だと「素晴らしき今日の始まり」(2013年リリースのミニ・アルバム『マリヴロンの四季』収録曲)がイメージにピッタリなので、それを踏まえて新しい曲を作ってほしいってリクエストをいただいたんです。だから、景色の開けた曲にしようと思いました。
-そのうえで東京という街をどう捉えたんですか?
千野:東京をポジティヴに捉えたときに、どんなところだろうって想像するところからスタートしました。東京って、いろんな地方から出てきた人たちの集まりで、海外からの人もごちゃまぜになっていて、なかなかのカオスじゃないですか。それは東京にいなかったら知り合えない人たちばかりだということ。地元にいたらだいたいの枠の中での出会いしかないけど、東京は無限大ですよね。そういう環境に対してまっすぐな姿勢で前向きに歌ったんです。僕の中では青春パンクですね。
伊丸岡:サウンドもストレートなメロディが耳に残る感じを意識しました。この曲を作ったときは、まさか世の中がコロナウイルスで混乱するなんて思いもしませんでしたけど、今こんな状況だからこそ、聴いてほしい曲になりましたね。
千野:今こそ、ちゃんと繋がりを忘れないで、支え合うことの大切さを改めて強く実感しなければいけない局面だと思いますし。
伊丸岡:誰かに思いやりを持てるきっかけになればいいなと思います。
-"青春パンク"とおっしゃいましたが、そういう生々しいエモーショナルな側面もありつつ、すごく美しい曲でもあります。シューゲイズを思わせるホワイト・ノイズが敷かれていて、そこには東京という街を信じたいと思える煌めきを感じました。
伊丸岡:最初は、ギターとベースとドラムのバンド・サウンドだけでやろうとも思ってたんですけど、裏でシューゲイズ的なシンセをずっと鳴らしました。メロディや歌詞が人なら都会をシューゲイズで表すようなイメージでやった結果、うまくマッチしたと思います。
-全体的にもギターとベースとドラムだけでなく、シンセやピアノやストリングスが効いていることはこれまでと比べると大きな変化です。
千野:GOOD ON THE REELができることの可能性をより広げたかったんです。去年、過去の曲を"~あらためたver.~"として全部録り直したアルバムを出したんですけど、そのちょっと前からいろんな音を使うことに興味が湧いてきて、ライヴでも同期を使うようになりました。ユニバーサルミュージックアーティスツとパートナーシップ契約を結んで、やれることが増えたことも大きかったですね。今回の「手と手」や「禁断の果実」は、まさにその象徴だと思います。
-それまでは同期に抵抗があったんですか?
千野:正直昔は5人の手で出せる音だけで可能性を追求するほうがいいと思ってましたけど、今は本当にいろんな音楽があって、僕らもそれらに触れることでなんでも許せるようになりましたね。音楽ってもともと自由なものですし。
岡崎:ギターでストリングスっぽい音を出すとか、フィードバックを出すとか、"ギターでこんな音まで出せるんだぞ"って、それがカッコいいと思って無理矢理やってましたね。でも、変な言い方ですけど、やっぱりストリングスはストリングスで出したほうが心にスッと入るきれいな音が出せる。メインはギターとベースとドラムとヴォーカルの5人なんですけど、今はほかの音にも抵抗がないというか、むしろどんどんやっていきたいと思っています。
伊丸岡:Plastic Treeのトリビュート(『Plastic Tree Tribute~Transparent Branches~』)に参加したときもドラムはほぼ全部打ち込みで、実際に人力で叩いたのはタムくらいで。あれもうまくいきましたね。
-これからの作品が楽しみになるEPでもあります。
伊丸岡:同期を入れるとか、音が増えるのもいいんですけど、音数もおかずももっと減らしてミニマルな曲を作りたいとも思ってるんです。
千野:海外のR&Bとか、極端に音が少なくてミニマルなビートのうえで、しっかりと歌い上げてる曲が多いじゃないですか。ああいう感じは採り入れたいですね。
-そこで千野さんの歌がどう響くかは、すごく興味があります。
伊丸岡:僕も楽しみですから。きっといい作品ができると思うので、楽しみにしていてください。
-最後に、今はコロナウイルス禍により、誰もが味わったことのない不安を抱えながら日々を過ごすなかで、良くも悪くも人の本性が浮き彫りにもなっています。先ほども少しその話題に触れられましたが、改めて、そんな渦中に、"繋がり"をテーマにした作品をリリースすることになってしまった状況のなかで、思うことを聞かせていただけますか?
千野:人と人が関わらないことには生きていけませんし、繋がりが生まれるのは必然。例えば、お店のレジの人とか、そのときだけの繋がりであっても、気持ち良くいたいじゃないですか。相手がもし自分だったらとか、そういうことを少しでも想像する思いやりの心を忘れずにいたいと思います。
伊丸岡:わからない人にちゃんと教えてあげる。知らない人に語り掛けてあげる。無下に批判するのではなく、そういう思いやりを持った繋がりが大切だと思います。
岡崎:日本って、"人様に迷惑をかけるな"って教えられるじゃないですか。それがインドだと"そもそも人様に迷惑かけて生まれてきたんだから、人には優しくしなさい"って教えられるらしいんです。まさにそういうことだなって。迷惑かけないんじゃなくて、優しくあること。みんな傷ついてますけど、少なからず気持ちをシェアして乗り越えていこうって気概を感じて、僕も繋がりの大切さを実感しているところです。
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