Japanese
四星球
2022年04月号掲載
Member:北島 康雄(シンガー) U太(Ba) まさやん(Gt) モリス(Dr)
Interviewer:フジジュン
-あはは(笑)。今回、20年を振り返ってという話を聞こうと思って、ヒストリーを見返してみたんですけど。モリスさんが加入して、"MONSTER baSH"に初出演した2008年ごろと、"officeみっちゃん"設立の2013年ごろは活動的にも作品的にも、かなりターニング・ポイントになってる時期だなと思って。今作に入ってる曲も、このころできた曲が多いんです。
北島:お~、なるほど。そうなんですね。
-で、ひとつ思ったのは、"日本一泣けるコミックバンド"というところで、腹を括ったのがモリスさんの加入や自主レーベル設立のタイミングだったんじゃないか? と。
北島:なるほど。あんまり自分たちのことをそういう見方をしたことなかったですけど、それはあるかもしれないですね。あとは周りの要因もあって、同世代のバンドが辞めていったタイミングとか年齢的なこととか、そういうのは影響してると思うんですけど。たしかにターニング・ポイントをいくつか挙げろと言われたら、"MONSTER baSH"に初めて出たときと、自分らでやるってなった年は挙げるかもしれないですね。そこはちゃんと覚えてますしね。
U太:バンドって何年もやってたら、モチベーションは必ず下がっていくと思うんです。だからなんの障害もなくツアーも回れて、そこそこ満足してやれてたら、ここまで続いてないと思うんです。そこで"バンドとして売れたい!"って気持ちがもちろんあるので、なんとかせないかんというのは個人的にあって。自分たちでやるとなったら責任の所在は明確になるし。お世話になる人も増えてきて、その人たちの生活も考えなくてはいけなくて。2013年ごろは大げさに言ったら、"みんなで勝ちに行こうぜ!"感が過剰にあったし、僕らに関わってくれる人はその年からほとんど変わってないんです。
まさやん:僕が覚えてるのは、会社作る前はCDを出すとき、出してくれる人が"いいよ"と言ってくれたら出せるみたいな感じだったので"CDを出したいです"と言ってからのスパンも長くて。バンドのテンション的には"もっと音源を出したいし、出さないとライヴが新しくならない"ってモヤモヤが溜まってた時期でもあったんです。それで、"自分たちで立ち上げちゃえば自分たちで出せるやん"というのもあって。そのときには「フューちゃん」のシングル・バージョン(2013年リリース)も録音していて、"会社を設立して自分らでリリースしよう"みたいな感じやったんです。たしかに腹括ったみたいな気持ちはありましたね。
-自主独立、インディペンデントの精神ですよね。
U太:そうですね。バンドやってると何かしらのストレスはあるもんですけど、活動するためのストレスはないほうがいいというのが当たり前にあって。それが外から与えられるストレスだったら自分たちでやったほうがいいっていうシンプルな理由なんですけど。腹は括ってましたよ。前の事務所をやめるって言いに行くときはしばかれる覚悟で行きましたから(笑)。それで自分たちでCDを出すことになるんですけど、そこで初めてCDを出させてもらうことのありがたさを感じたというか。"CD出すって、こんなにしんどいの!?"と思いました。いろんな書類を出すのも大変やし、お金も想像以上にかかるし。今、レコード会社はしんどい時期やから、"自分でやろう"みたいな人も増えてくると思うんですけど、どちらも経験した僕らからしたら、頼れるところは頼って自分たちでできることは自分たちでやるのが一番。だからそこをさらに突き詰めて、いろんなことが上手いこと回ったらいいなというのは考えるようになりましたね。
-それ以降の四星球って、自分たちのやりたいことややるべきことが明確に見えるなかで、ライヴや楽曲作りができている感があるのですが。制作面での変化はありました?
北島:僕は正直、そのあたりの記憶も曖昧なんですよね(笑)。"リリースできてないな"ってのも感じてたと思うんですけど、あんまり覚えてなくて。そのころ、"SET YOU FREE"とかに出演して、ライヴ・バンドとよう対バンしてて、そこに追われてたというのは覚えてますね。ガガガSPとかセックスマシーン!!とか花団とか、SCOOBIE DOとフラワーカンパニーズとか、ええライヴをするバンドと対バンしてるから、負けられないって気持ちですごく気が張ってたし。"もっとライヴでできる曲を作りたい!"というのが指標になってた気がします。その曲作りのやり方が現在に至っているような気がして、"ライヴでこういうことがやりたい、ライヴでハネる曲が作りたい"というのが明確になってきたのがその時期だと思うんです。「Mr.Cosmo」で味しめてみたいな感じで(笑)。だから、そのときは"ライヴの弾作るぞ!"みたいな感じで、ライヴのことばかり考えてました。
-四星球って今回発表された、20周年企画ツアーの対バンを見ても、ジャンルを越えてどんなバンドとも対バンできて。そこがすごい武器だと思うし、逆にいろんなジャンルのライヴ・バンドからいいところを吸収できてると思うし。ライヴ現場で周りのバンドに多大な影響を受けて、進化成長していった感はすごく強いですよね。
北島:それはすごくあります。ニューロティカと絡ませていただいたのもその時期で、一緒に"ロックバカツアー(俺達いつでもロックバカ)"を回ったりして。そこに入れてもらったのもすごいプレッシャーやったし、おこがましいですけど歴史の系譜の中に入れてもらったみたいな嬉しい気持ちになったし。そういった一個一個の経験が、すごく大きかったですね。
-アルバムにコントを挟むやり口もニューロティカと一緒ですしね(笑)。アルバムの話に戻ると、『トップ・オブ・ザ・ワースト』が現在の形になるまでの経緯はどんな感じだったんですか?
北島:最初にレコード会社の方に言ってもらったのは、"曲の中でネタ入るのを1回ナシでやってみませんか?"ということで。"何回も聴ける、曲だけで楽しめるベスト盤を作ってみませんか"と言うてくださったんです。僕もすごく興味あったし、言ってくれた人がそもそも曲じゃないものが好きな人なので、"これは何周も考えて言ってくれた意見やな"と思って、言われた通りにやってみようと作り始めて。"曲だけでも十分いいけど、やっぱりネタも入れたい"と思って、"じゃあ、アルバムにストーリーを持たせるためにネタを入れよう"って考えに至ったんですけど。最初は"四星球ベスト20"みたいなものを作るって話もあったけど、自分たちで曲に順位を決めるってできないと思ったし、そこにオチをつける自信もなくて却下したんです。で、"だったら全部の曲が最下位で、これらの曲のせいで僕らは20年やってるわ"みたいなことにしたいなと思って"トップ・オブ・ザ・ワースト"って言葉が出てきて、コンセプトが見えてきて。そこからはすごく早かったですね。
-新曲たちもコンセプトが見えてから曲を作り始めた?
北島:そうです。タイトルありきで、まずは「トップ・オブ・ザ・ワースト」を作ってという感じで作りました。
-「トップ・オブ・ザ・ワースト」は1曲目としてアルバムの方向性が見えるし、勢いがあって現在の四星球を表せているし、すごくいい曲になりましたね。
北島:あ~、ありがとうございます。
-では改めて全員に聞きたいですが、アルバムが完成しての感想はいかがでしょうか?
U太:振り返って思うのは、ベスト盤を作る動きをしたわりに、最後のほうは全然時間がなかったなということで(笑)。1週間で3曲くらい作らなアカンくて"これ間に合うか!?"ってなりました。前の日に作った、できてるかわからない曲をレコーディングして。初めてデモを作ったとき"合宿や!"言うて部室に泊まって、大して練習もせんとみんなでこたつに寝転がってたことを思い出してたんですけど(笑)。こうやって追い詰めたときに出てくるものこそが自分らの本質というか。変に色づけする時間もないなかで勝負しなきゃいけないからこそシンプルでクセのあるものが生まれてええのかな? と。実際、そういう曲ができあがったときは"これが20年やってきた成果やな!"と感じました。アルバム全体としては収録時間が80分もあるから確認も大変やと思ったんですけど、意外とスルッと聴ける作品になって。作品としていいものができたなと思いました。
まさやん:僕が印象に残ってるのは「君はオバさんにならない」を録ってるとき、レコード会社の担当の人が"まさやん! このギター・ソロ、むちゃくちゃいいね、すごいね!!"と言ってくれて。そんな褒められると思わなかったからすごく嬉しかったんですけど、別の曲を録ってるときは"まさやん! このギター・ソロは普通だね"と言われて、"普通ってなんやねん、だったら言わんでええやろ!"と思ったことと(笑)。今回「リンネリンネ」とか4人の楽器以外の音を入れてみたら"意外とアリやな"と思って。今までライヴでやるときに弊害になると思ってたんですけど、アルバムとして聴くときに代わり映えもするのかな? と、新しい選択肢がひとつできた感じはしました。あと、ライヴで一緒になったテレビ番組のアナウンサーの方に急遽「音量アゲサゲーム」にアナウンスをお願いしたんですけどそれがすごくいい感じで。偶然だったんですけど、そういうライヴ感を入れられたのは良かったですね。
-「音量アゲサゲーム」は面白いこと考えましたね(笑)。もはやライヴでの再現無視のアルバムならではの曲ですけど。
北島:あの曲は、音源でライヴがしたかったというか。音量上げ下げしてもらったら、CDがライヴになるから。僕の中では今回一番やりたかったことだったんです。
-新曲それぞれに役割があって、ベスト選曲アルバムの中で各曲がいきいきしてるのがすごくいいですよね。「君はオバさんにならない」は"Love music"で森高千里さんの前で歌いたいですね(笑)。
モリス:どんな反応をするか見たいですね(笑)。今回は一般的なベスト盤と違って、新曲がプラスされてることがデカいと思うんですが。言ってくださったみたいに新曲が入っている意味をすごく感じられて。ネタ曲とパンク・ソングとバラードが、僕たちの軸にあって、ベスト選曲に選ばれてるくらいだから曲としてめちゃくちゃ強い既存曲が収録されてるんですけど、その各ジャンルの最新版というか、今一番いい形に更新できているのを新曲で示せていると感じてて。まだ、ここから先があるというのを見せられてるのかなと思うし、コンセプト・アルバムにもなっていると考えています。
-まだ四星球を聴いたことのない若い人には入門編として、ずっと応援してくれてる人には集大成且つ、最新盤として楽しんでもらえる、素晴らしいベスト選曲アルバムになったと思います! そして、ライヴというところでは20周年企画として、4月4日に徳島でのセックスマシーン!!との対バン("四星球企画「毛が生えた日」")で始まり、東名阪で5デイズを行う、むちゃくちゃな対バン・ツアーが始まります(笑)。
北島:もう、めちゃくちゃ楽しみです! 今までこんなに楽しみだったツアーはないというくらい過去イチ楽しみなツアーです。今までのツアーももちろんいいバンドに出てもらってたんですけど、今回も本当にいいバンドばかりが揃ってるし、ずっと行ってたライヴハウスに行けるのも楽しみだし。今は楽しみすぎて、めっちゃ早くからツアーでやる曲を考えて練習しています。"東京5days"というのをずっとやりたくて、やっとやれる嬉しさもあるし。20周年企画やから懐かしいネタとかもやりたいなと思うし。もちろん、懐かしいだけで終わらないものにはなると思うし。今自分に課してるのは、"1曲目と最後の曲は全部変えよう"ということで。リリース・ツアーやと、新しいアルバムから1曲目をやってというのも多かったんですが。今回は20周年やからどの曲から始まってもいいので、そこも楽しもうと思ってます。
-いいじゃないですか、「自慰-SHOCK~下手したら地獄」(『ナケナシ』収録曲)から始まるライヴもやりましょうよ!
北島:あはは(笑)。「自慰-SHOCK~下手したら地獄」は、たしかにこんな機会じゃないとできないですけどね(笑)。でも、1曲目と最後の曲が違うだけで、"毎回違うことやってます!"と言えるし、ホンマの意味で毎回違うライヴができればと思ってるんで、みなさんも楽しみにしてください!
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