Japanese
四星球
2022年04月号掲載
Member:北島 康雄(シンガー) U太(Ba) まさやん(Gt) モリス(Dr)
Interviewer:フジジュン
四星球が結成20周年記念盤となる初のベスト選曲アルバム『トップ・オブ・ザ・ワースト』を完成! 四星球のアルバムということで、既存曲を並べただけのベスト盤になるわけがなく。ブラッシュアップされた過去曲たちに加え、今作のために書き下ろした新曲4曲、さらに曲間を繋ぎ作品に物語性を生むコントを含む、全20曲入り80分の圧巻のボリュームでお届けする今作。ベスト盤でなく"ベスト選曲アルバム"である理由、作品へのこだわり、そして四星球の20年の歴史に迫る濃厚濃密なインタビューとなった。
-初のベスト選曲アルバム『トップ・オブ・ザ・ワースト』が完成しました。今回は"ベスト選曲アルバム"ということで、過去楽曲を聴き返したりバンドの活動を振り返る良い機会にもなったと思うのですが。
北島:たしかにこういう機会でもないと振り返らないですよね。例えばフェスに出るとき、"去年は何やった? この県では何やった?"みたいに、点で振り返ることはあると思うんですけど、バンド単位で振り返るということは、ぼほなかったかもしれないです。ただ、よく思うんですけど、結成当初のことは濃く覚えてるんですけど、間の記憶が薄くて......(笑)。全国ツアーとか回り始めたころから、記憶がぼんやりしてるというか。
-考える間もなく走り続けてきたってことでしょうね。同じかはわからないけど、俺は40代になって、30代の記憶がすっぽり抜けてて。思ったのは、初体験が減っていくからじゃないか? って。なんでも初めてやることって、よく覚えてるでしょう?
北島:あ~、それですね! 年々、感動のラインが上がっていってるんでしょうね。だから僕らはそうならないように、毎回違うライヴをしようという意識はあるし、"今年はこれをやったぞ"って刻めるようにしたい思ってるんですけど。言われてみるとそうですね。
-そこでバンドだとアルバムというものがあって。そのときの記憶を作品に閉じ込めることができるじゃないですか。
北島:そうですね。僕らも20年やってるけど、メンバーも変わっていたり途中から関わってきた人もいたりしますし。
モリス:20周年言うてますけど、僕は14周年ですからね(笑)。14年も十分長いですけど。
北島:でも今回、アルバムの収録曲を選曲するとき、"この時期にやってたから"って視点はなかったかな? 選曲の基準は"ライヴでやってるかどうか?"で、"ここに入れることで今後もライヴでやっていける"っていう大前提があったので、ここから先を見据えての選び方だったのかな、と。過去を振り返ろうという作品やったら、もっと時代を刻んだ選び方になったと思います。
-過去を振り返るという意味では、ビクターオンライン限定盤収録のデモ音源集はありますけどね。先日、ガガガSPと行った座談会で、話題になったデモCD『草枕』(2004年リリース)をこんなにすぐに聴けることになるとは思いませんでした(笑)。
北島:あはは(笑)、そうですね。デモ音源集は作ってはみたけど、恥ずかしさしかないですよ!
-ズバリ言って申し訳ないですけど。北島さん歌が下手ですね(笑)。
北島:あはは、下手以前に何もできてないですからね! "お前が歌うんかい!?"ってことをやってますから(笑)。
U太:でもエラいもんで、あのころの音源って爆発力はものすごいんですよ。めちゃくちゃ下手やけど、なんか聴けてしまうっていう。
-よくある書き方だと、"粗削りではあるが、爆発力と可能性はある"っていう(笑)。
まさやん:そういうふうによく書かれました、当時(笑)。
U太:改めて聴くと上手い下手じゃなくて、とにかくやりたくてやっているっていうのがすごくいいなと。当時の自分たちを今ライヴハウスで観たとしたら、めっちゃ好きか、めっちゃ嫌いになるかどっちかやと思います(笑)。
-どちらにせよ、その姿に心は動かされるというね。では今回はそんな当時の気持ちを思い出す機会にもなりながら、しっかり前を向いた作品が作れた?
U太:そうですね。新曲も多いので、それにも引っ張られて前を向いてるイメージなのかな? と思います。
-新曲やコントも含めて、1枚の作品としてすごく面白いものになってるし、ライヴの予習復習にも聴けるし。20周年を記念するひとつの集大成的な作品になりましたよね。
北島:最初、レコード会社的にはよくあるベスト盤を想定していたと思うんですけど。作っていくなかで僕たちの中でコンセプトがしっかり出てきて、"ベスト選曲アルバム"にシフト・チェンジしていって。
まさやん:全トラック、なんだかんだで変更点があって。そのまんま使ってる音源がひとつもないんです。
-大げさに"再録"とは言わないけれど、何かしらのブラッシュアップが施されてる?
U太:そう。再録もようけさせてもらってるんですけど、CDを作ったときが曲の完成形かと言われたら、そうではなくて。ライヴでやっているうちにどんどん変わっていったりするので、それをまたパッケージしてお披露目できるのが楽しみでもあって。昔、できもせんのに背伸びして弾いてたようなフレーズも、やってるうちにできるようになっていたり。その楽しさや嬉しさが録っててありましたね。
-今回、ボーナス映像の"クラーク博士と僕 ~ライブクロニクル~"もあって。同じ曲がライヴを重ねるごとに進化していったり、ライヴによって違った意味を成してたりというのも観られますよね。びっくりしたのが代表曲と言える「クラーク博士と僕」は、2003年リリースのデモCD『ナケナシ』に収録されてて。もう約20年も演奏し続けているんですね。
U太:そうですね、こんな長く付き合う曲になるとは思ってませんでした(笑)。
北島:すごく覚えてる話があって。まだ19~20歳のころ"もっとキワモノなことがやりたい!"と思ってて。ライヴ後に徳島のライヴハウスの店長さんと話してるとき、"もっとエゲツないことしたいから、今の持ち時間だと「クラーク博士と僕」とか外さなあかんのですよね"って言ったら"いや、あれは外したらあかんやろ? あの曲はずっとやることになると思うぞ"って。"あの曲がお前らのど真ん中にあるから、そこを基準値にしてキワモノなことをやっていけばいいんじゃないか?"みたいなことを言われて。当時はすごく純粋だったから、その言葉を信用して今もやり続けてるんです。
-めちゃくちゃいい話ですね! 19~20歳のころに"あの曲は外したらあかん!"って言われたから、その言葉を20年近く守り続けて、今もやっているという(笑)。
北島:そういうことですね(笑)。でもやっぱり、そういう結成当初のことはハッキリ覚えてます。
-でもたしかに四星球の魅力って、面白要素も多分にありながら、エモやセンチも照れずにできるところで。年を重ねてより深く人生を歌えるようになって、その振り幅が広くなるほどにバンドとしても魅力や面白さも増していて。その基準値として、「クラーク博士と僕」があるというのはよくわかります。こんなこと、今さら聞かれることもないと思いますけど、「クラーク博士と僕」ができた経緯は覚えてますか(笑)?
北島:覚えてます、もちろん。あの曲は大学の練習室で作ったんですけど、そのときはまだ、まさやんもいなくて。
まさやん:そうです。僕が入ったときはもう、あの曲がありましたからね。
北島:最初、サビのコードをバーッと回していって、僕がメロディを歌ったら上手く収まったんです。で、"サビから始めて、コードを回してって"みたいに言って歌詞を入れていったら、ちょうど終わるころにサビが来て、きれいに収まったっていう。曲ができたときのことはよく覚えてますね。
-バンドの代表曲になる曲って、意外と勢いでできた曲とかすぐにできた曲が多いって言いますけど「クラーク博士と僕」もそんな感じだったんですね。
U太:そんな感じですね。コードも4つしか使ってないから、逆に今作れって言われても作れないですよ! 例えば3コードで作ろうと思っても、そこにコンセプトみたいなことを考えてしまうやろうし。"シンプルだから、ややこしいことせな"みたいな心理になってしまうから、あそこまで振り切った曲って作れないし、逆に作ってみたいくらいです。
まさやん:僕が加入して、「クラーク博士と僕」をコピーしたとき、コードの切り替わりやメロディの回しが変やなと思ったのを覚えてますね。4回回してサビに行きそうなところを、5回回してサビに行くんで、"この人らの作る曲、変やな"と思って。
-それって制作時の話を聞く限り、狙って作ったわけじゃなくて感覚ですよね?
北島:感覚ですね。でも、そのころのギターは音楽科の子で音楽に長けてる子やったんで、そこはわかってやってたのかもしれないですけどね。
U太:4回しっていうのも主流ではあるんですけど、そうじゃなきゃいけないってことはなくて。それを最初から崩せてたから心に残る部分があったのかもしれないですね。
-面白いですね。それがその後、いろんな景色を見せてくれる曲になるわけですからね。
モリス:僕は20周年という機会もあって、加入前のそういう知らない話をいろいろ聞けるんで、単純に興味深いし楽しいです(笑)。ただ、結成したばかりのころのことはよく覚えてるみたいで、いろいろ話してくれるんですけど。僕が入ったころのことは記憶がぼんやりしてるみたいで、全然してくれないんですよ!
北島:あはは(笑)。モリスは自分が入ったときのことはよう覚えとるんやろ?
モリス:もちろん。最初1年スタッフをやってて、メンバーになって。そこの2年くらいはよく覚えとる。でも、「クラーク博士と僕」ができたときの話とかはまったく知らないので、"そんな話が聞けてラッキー!"っていう。ファンと同じ気持ちです(笑)。
北島:"この曲ができたときはね......"なんて話を普段からしてたら、かなり気持ち悪いバンドやからな。そんなバンドは20年続かへん(笑)。
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