Japanese
バンドハラスメント
2020年01月号掲載
Member:井深 康太(Vo) 渡邉 峻冶(Gt) はっこー(Ba) 斉本 佳朗(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
青春の最中にいるからこそ生み出せる、瑞々しさがここには漲っているのではなかろうか。1stフル・アルバム『HEISEI』を2018年秋に発表したのち、バンドとしてはある種の過渡期に突入していたというバンドハラスメントが、今ここにきて発表するのは久々のシングル『一目惚れ』だ。この表題曲はTVアニメ"ちはやふる3"のEDとしてオンエア中となるが、何よりひとつの過渡期を乗り越えたうえで生み出されるこの音は、繊細さも持ち合わせながら、力強さをより高次元な形で手に入れた彼らならではの青春模様を、存分に醸し出していると言っていい。2020年は勝負の年になると明言する彼らの新たなる音に耳を傾けよう。
-2018年の秋に1stフル・アルバム『HEISEI』が出たあと、バンドハラスメントは2019年秋に配信限定シングル「STOP」を発表してはいたものの、このたびのシングル『一目惚れ』までCD音源はしばらくリリースがありませんでした。まずは、ここまでの期間どう過ごされていたのかをうかがいたいです。
斉本:自分自身のこともそうですし、お互いのことについて見つめ直す時間を取らなきゃなっていうのがあったんですよね。周りにいる同世代の人たちだったら普通は就職活動をしていたり、社会人として動き始めたりっていうタイミングでもあるわけなんですけど、僕らは、バンドでそれがみんなよりも少し早く前に訪れてしまったわけで......まだ、20歳前後だったのもあっていろいろと未熟だったなと今になって振り返ると思うんですよ。正直なことを言うと、一時は"ここからどうしていけばいいのかわからない"みたいな感じになっていたときもあったから、やっぱりそこでどうしてもいろんなことを考えるための時間が必要になったんです。
-なるほど、そういうことでしたか。
斉本:そういう局面にぶち当たるまではリリースのペースもコンスタントだったし、常に"次は○○をやらなきゃけいない"って時間に追われていたところもあったんですけどね。思い切ってそこは1回すべてを取っ払ってフラットな状態になったうえで、昔の自分たちですべてをやっていた頃の気持ちに戻って、イチからすべてを考え直していったんですよ。
-初のフル・アルバム『HEISEI』を完成させたあとにそのような転機が訪れたというのは、逆に考えればいいことだったのかもしれません。ちなみに、その"見つめ直す時間"を経たことでみなさんが得た答えとはそれぞれどのようなものだったのでしょうか。
はっこー:2019年はCDを出すことはしていなかったんですけど、そのぶんワンマン・ライヴに対して改めて本腰を入れ出したところがあって、企画性を持たせた2デイズ公演を3回やったんですね。年明けにはその締めくくりとなる公演(1月11日、12日に名古屋E.L.L.で開催する"バンドハラスメント presents ONE MAN SHOW FINAL SEASON「浮き」/「沈み」")もあるんですけど、これをやったことは自分たちにとってすごく大きかったと思います。演出の面でもマジシャンをゲストに迎えて作り込んだり、ワンマンに対しての考え方そのものを根底から変えていったりもしたので、音源を作るのとはまた別の面で、ライヴ・バンドに対してのやりがいというものを新しく見つけられました。
井深:ライヴを重ねていくなかで、ステージの上からみんなに対してどれだけのことを伝えられるのかとか、何を伝えていくのが大切なんだろうか? とか、僕も自分自身のあり方についてはかなり見つめ直すことができたんじゃないかと思います。そして、自分自身のことを見つめ直すと今度はいろんな人と話したり、交流を持つことの大事さもよりわかってきたりしましたね。少し視野が広がったせいもあるのか、最近はあれこれ考えなくても、自然体で音楽やライヴに向き合えるようになってきている気がします。
渡邉:ワンマンのライヴ・シリーズをやってきたことは僕にとってもすごく大きかったです。ギタリストとしての自覚が強まったというか、一時はギター以外のことでも、音楽に対してのアプローチ方法をいろいろ試そうとしていたこともあったんですけど、ワンマンを重ねていくことによって、"もう1回ギターだけに集中してみよう"っていう気持ちが生まれたんですよ。ギターを使ってエンターテイナーとしての可能性を追求していくという姿勢が、今の自分には必要なんだって気づいたんです。だから、ここしばらくはギターで他の人とはちょっと違う表現方法を見つけて、それを磨いていきたいってよく思うようになりました。
斉本:今だから言えることですけど、あのアルバム『HEISEI』を出す直前くらいは、相当メンバーの気持ちがバラバラになっちゃってた時期でもありましたからね。なんなら"解散するか?"っていう話も出てたくらいなんですよ。
-『HEISEI』を出す直前にそんなことがあったのですか!? まったく存じ上げませんでした。というか、アルバム・インタビューの際に、そのようなエピソードはまったく出てきていませんでしたよね?
斉本:アルバムが出たあとも含めて、その頃はまだ自分たちで問題を消化しきれてなかったっていうことでしょうね。それに、今思えばそれって、おそらくどのバンドでも経験するような過程のひとつでしかなかったんですよ(笑)。そういう意味では、あの場面を乗り越えたうえで、今こうしてバンドハラスメントが次に向かっていけているのは、とても幸せなことだと思ってます。
-そうした経験から得たものは、今回の久々となるシングル『一目惚れ』を制作していったなかでも、きっと反映されていったのでしょうね。しかも、今回はTVアニメ"ちはやふる3"というビッグ・タイトルとのタイアップも連動しております。バンドハラスメントにとってこれは大きな転換ポイントを迎えたことになりませんか。
斉本:そうなんですよ。これ(「一目惚れ」)、曲としてはまさにいろんなことがあった直後に、"これからに向けての曲を作っていこう"と考えていたら、ふとメロディがワンフレーズ浮かんできて、そこから生まれていったものなんです。直感的に、"この曲がこれからのバンドハラスメントを引っ張っていってくれるんじゃないかな"と思ったんですよね。
-つまるところ、バンドハラスメントはこの曲に救われたことになりそうですね。
斉本:そうかもしれない(笑)。結果的にそうなった感じはあります。こうしてタイアップのお話をいただけたというのも本当にありがたいことですよ。
-"ちはやふる3"のEDとしてバンドハラスメントの楽曲が起用されたというこの事実について、メンバー各人はどのような見解をお持ちなのかもぜひ教えていただけますか。
はっこー:これだけ有名なアニメとのタイアップなんて、自分にとってはひとつの目標という以上に夢みたいなものでもあったんですよね。決まった瞬間は実感があんまりなかったんですけど、第2話の最後から初めてテレビで流れるようになって、それをリアルタイムで観てようやく"やった! 嬉しい!"ってなりました(笑)。
渡邉:わかる! 俺もテレビで観てやっと実感が湧きました(笑)。
井深:僕の場合は小さい頃からミュージシャンになりたいと思っていたわけではなかったし、もともとはサッカー選手になりたいっていう夢のほうが先にあったんですよ。ただ、昔からアニメは好きで、子供の頃はよく兄貴とテレビを観ていて、そうするといろんなアーティストの曲が、オープニングやエンディングとして流れてくるわけじゃないですか。そういうときに"自分たちで作った曲がこうやってテレビで流れるって、どういう気分なんだろうなぁ"と考えたことがあったんで、少なくともその頃は、まさか自分が本当にそういう立場になる日がやってくるなんて思ってなかったです。
-実際には"どういう気分"になりました?
井深:めっちゃ嬉しいもんですね。最高です(笑)。自分にとってそうだったように、アニメで流れる曲って作品の思い出と共にずっと残っていくわけじゃないですか。そうなっていくであろう音楽を自分たちでも世に出すことができたというのは、本当に幸せです。しかも、"ちはやふる"は僕も学生の頃からよく知ってましたし。我ながら驚きです。
-作詞/作曲者としての感慨はいかがですか?
斉本:僕、子供の頃からめちゃめちゃマンガが好きなんですよ。親父の実家にたくさんマンガがあって小さいときからそれをよく読んでましたからね。だから、アニメのタイアップっていうのも中学生で音楽を始めたときからマジで夢だったんです。そう考えたらこうして"ちはやふる"のEDをやらせてもらえるなんていうのは、まさに夢を実現したことになります。曲を作る前には原作も読ませていただきました。
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