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INTERVIEW

Japanese

バンドハラスメント

2018年02月号掲載

バンドハラスメント

Member:井深(Vo) ワタさん(Gt) はっこー(Ba) 斉本 佳朗(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

エッジーでいてエモい音と、生々しいリアリティを孕んだ言葉たち。バンドハラスメントが2月7日に発表する1st EP『鯉、鳴く』は、ある意味で彼らが新境地へと踏み出した作品だと言えるだろう。そのタイトルからしてインパクト大な表題曲だけでなく、作曲者である斉本佳朗の実体験から生まれたという珠玉の純愛系ギター・ロック・チューン「Sally」が、ともにダブル・リード曲として設定されている今作は、それだけの完成度を誇っているのである。今まさに伸び盛りのバンドだけに、日々刻々と変わりゆくであろう彼らの"刹那"がパッケージされた今作が持つ意味は大きい。東京での初ワンマンも決定した今、バンドハラスメントの前途は洋々だ。

-今回の1st EP『鯉、鳴く』におけるバンドハラスメントは、自分たちの中にあるどんな部分を特に前面へ押し出していきたいと考えられていたのでしょうか。

斉本:僕らの場合、これまでは恋愛のことを歌った曲が基本的に多かったんですよ。ただ、ちょっとそれにも少し飽きてきたというか(笑)、自分たち自身もそうだし、聴いてくれる側もそういうところはあるんじゃないかな? ということで、今回はひとまずそこを前面に出すのはもういいかなということになったんですね。その代わり、自分が普段から思っていることだったり、恋愛以外で表現してみたいことを形にしたいな、という気持ちでこの1st EPは表題曲の「鯉、鳴く」から曲を作り始めました。

-この作品を仕上げていくなかで、去年のフェス参加経験などが何かしら反映された点はありました?

斉本:個人的なモチベーションの面で言えば、ライヴよりも音源制作に対しての方に気持ちは向きがちですけど、僕以外のメンバーはそれぞれフェスでの経験が今回のレコーディングに生かせたっていうケースもたぶんあるんじゃないのかな。

はっこー:あるある。フェスとかの大きい舞台に立たせていただいて、いろいろな人たちに自分たちの演奏を聴いてもらえるというのがまずは嬉しかったですし、環境の面でも勉強になることは多かったんですよ。普段ライヴハウスでやっているのとはまた全然違って、音的にはああいうフェスの規模で出した方が思っていた以上に細かいニュアンスまで伝わるんだな、ということを去年は身をもって体験することが出来ました。そういう意味で、最近はレコーディングで音を作っていくときにも前よりさらに細かいところまで意識をするようにはなりましたね。これは明らかにフェスを経験しての変化です。

ワタさん:フェスに限らず、ライヴをやって得られることは僕も多いです。対バンの人たちの音を聴いたり、ステージを観たりしていると、音の出し方とかアレンジの仕方に、やっぱりそれぞれクセというか個性というのが結構あるんですよ。だからって、それをそのまま参考にするとかではなくて、逆に自分にとっては、バンドを始めたころの何も知らなかったときから続けてきた今のこの形がきっと一番合っているんだろうなという気持ちで、今回の音源制作には臨むことができました。まぁ、人との違いを認識することで自分らしさを再発見したみたい感じなんでしょうね(笑)。

井深:はっこーがさっき言っていたとおりで、フェスとかのデカい環境になればなるほど、声の聴こえ方や響き方が鮮明になるんだということを、去年いろいろな場面で勉強することができたんですよ。息遣いひとつとっても、息の抜き方にしても、細かいところがとても大切なんだなということを知れたので、それは自分にとって大きいことでした。どうしても、ライヴハウスだと音圧とかでかき消されてしまうところがあるので、細かいところは自分で気づきにくかったりもするんですよね。でも、ここからバンドとしてもっと成長していかなきゃならないということを考えると、ライヴもそうですし、音源の面でも細かい表現をちゃんと歌の中でしていく必要があるなということを感じましたし、今回の『鯉、鳴く』ではそれぞれの曲が持っている世界観とか、空気感をどこまで歌で伝えられるかということにこだわりながら、制作を進めていくことになりました。

-ちなみに、今回の1st EPに向けての選曲やその内容についてはみなさんでどのように決めていったのでしょうか。なんでも、表題曲の「鯉、鳴く」とMVを制作したという「Sally」が共にダブル・リード曲となっているそうですね。

斉本:僕らはもともと、たくさんの候補曲の中から収録曲を絞っていくというタイプではなくて、デモの段階から絞っていく感じなんですよ。だから、カップリングの「モノ」も含めて、今回はこの3曲を収録曲にすることは最初から決まっていました。ただ、どの曲もあまりライヴ感を意識してレコーディングしたわけではなかったので、そのぶんライヴ的な臨場感を伝えられるような曲も入れておこうかということになって、4曲目に「サヨナラをした僕等は2度と逢えないから」のライヴ・バージョンを入れることになったんですね。そして、リードが2曲になったというのは意外と土壇場になって決まったことで、自分たちとしてもちょっと想定外だったかもしれません(笑)。

-何があったのですか?

斉本:当初は「鯉、鳴く」でMVを作るつもりでいたんですよ。だからこそ、EPの頭に持ってくることにもなりましたし。でも、そのあとギリギリのタイミングで"実は「Sally」の方が、このバンドにとっての未来が見えるかもしれないね"という話になって、急遽MVを撮影するのは「Sally」の方になったんです。要は、実際にレコーディングをしてみて感覚が変わったというか。

-なるほど、そういうことだったのですね。

斉本:うちのバンドは、スタジオにみんなで集まってアレンジしながら曲を作っていくというスタイルではないんですよ。まずは、パソコン上ですべて作ってから、それをレコーディングしていくことになるので、それぞれが録り終わってからでないと正確な全体像がわからなかったりするんです。だから、今回はその結果を受けてリード曲がふたつになったということですね。あとは歌詞的にバランスを考えたところもあります。

-バランスとはいったいどういう意味でのものですか。

斉本:最初に言ったとおり、そもそもは恋愛とは関係ない「鯉、鳴く」をリード曲として作っていたんですけど、例えば1年後の自分たちがどんなバンドになっていたいのか、将来的に自分たちがどんなバンドになっていきたいのか、ということで言えば根本的には恋愛をモチーフとした「Sally」の方がバンドハラスメントとしての将来像にはより近かった、ということです。